少年審判−−不純異性交遊
2ILC家庭裁判所悩み続ける支部・少年審判廷/
少年羽多利美紀子(15歳)に対する不純異性交遊虞犯保護事件についての審判を行う。
日比野実直審判官/
・・・・・・美紀子君、家裁調査官の先生から教えてもらったと思うが・・・行きずりの男達とSEXをしてはいけない・・ということがわわかりましたか・・
美紀子少年
・・・・・??・・・??
日比野実直審判官/
どうしたの? 黙っていてはわからないから・・何でも、話してごらん。
美紀子少年
あの−−! 本当に、何でも聞いていいですか−−?
日比野実直審判官/
もちろんだよ。何でも聞いていいよ。エヘン!!
美紀子少年
私は誰とでもSEXなんか、していません。街で声をかけてきた男の人の中で、気にいった人とだけ、SEXしているんです。
1週間に、6−7人の別の男の人とすることはあるけれど、みんな、好きになった男の人とだけです。
好きになった男の人とSEXしては、いけないんですか・・・???
日比野実直審判官/
えッ・・!!
(汗・・汗・・タラ−・・・)
(エッ?? 何々?? 好きな男とSEXしたらいかんかって、? いいわな?あっちゃ−! えらいこと聞きよるな?!?! ・・汗、汗、汗・・・・ )
(審判立会の部手嵐書記官−との−コソコソ話)
日比野審判官/
えらいこと聞きよるなあ。ねえ、なんて答えたらいいの、おせ−−てよ? 好きな男とSEXしても、いいよね!!
部手嵐書記官/
アホ!! メ・・!!
あなたは裁判官でしょ。責任をもって答えなさいよ!
日比野審判官/
あっちゃ−−!! 冷た!!
日比野実直審判官/
エヘン!!
そうか、美紀子君は、その理由がわからないんだね。
教えてあげるよ。ゆっくりと話すからよく、聞くんだよ!
日比野実直審判官/
美紀子君、SEXって、楽しい? 気持ちいいかな??
美紀子少年/
はい! とっても、気持ちがいいです。
日比野実直審判官/
そうか。
美紀子君、
お腹がへったら、御飯が食べたくなるよね。何日も空腹であれば、人のものでも取ってでも、食べたくなるよね。その気持ち、わかるね。
また、眠たくなったら、どうする・・?? 寝るね・・!! いくら、起きなさいって、言われても、睡眠をとっていないと寝ちゃうよね!!
わかるでしょ!!
「御飯を食べる」とか、「睡眠をとる」というようなことは、人間が生きていくうえで、大切なことなんだよね。わかるでしょ。
このような人間が生きていくうえで、どうしても必要なことは、自分の生活の中で、「規則正しくとる」というか「解消しておく必要」があるんだよ。そうしておかなければ、そのような欲求により、「生活が乱れるおそれ」があるんだよ。
朝、昼、晩と三食を規則正しく食べる。また、夜になれば、朝まで睡眠をとるという規則正しい生活をすることにより、美紀子君の生活は、規則正しく送れるようになる。
スーパ−で万引きをするというようなこともなく、学校で勉強をすることもできるし、規則正しい生活ができるんだよ。
わかるかな。
「人間にとって、どうしても必要なこと」また「人間の生活を乱すおそれのある欲求等」については、美紀子君の生活の中に取り込まなくてはいけないんだよ。
難しい表現で言うと、そのような欲求については、「日常性」の中に取り込、適宜、解消できる状況をつくっておく必要があるんだよ。
SEXも同じだと思うよ。
SEXというような人間が持っている欲求についても、これを日常生活の中に取り込み、適宜、解消する状況があるのが望ましいんだよ。日常性の中にね。
だから、逆に言うと、「SEXというような欲求を日常生活の中に、取り込めない場合」、「SEXという欲求を日常性の中に取り込み、解消できない」間は、そのような欲求をなるべく押さえて、本を読む、勉強する、スポーツをするというような方にエネルギ−を使う方がいいんだよ。
「特定の好きな人」ができて、「一緒に生活をする」ようになれば、そのような欲求も日常生活の中に取り込み、解消できることとなるから、それまでは、その欲求はできるだけ、押さえて、忘れている方がいいんだよ。
わかるでしょ−−!!
・・・・・・・・・・・・・・汗、汗、冷や汗・・・・・汗・・・・・・・・・汗・
・・・汗!!
美紀子少年/
フ−−ン??
何か、わかったようで、わかりませんが、一度、よく考えてみます。
日比野実直審判官/
そうしなさい。
それでは、美紀子少年に対する処分を言い渡す。
「 美紀子少年を、試験観察とする。 」
−−閉廷−−
後日談/ 少年審判において、美紀子少年に「SEXって、気持ちがいいし、していないと、したくなるでしょ」と説諭したてまえ、日比野実直裁判官は、日夜、「SEXって、気持ちがいいし、していないと、したくなるでしょ」と自分に言い聞かせながら・・毎日・・励みながら・・美紀子君にした説諭を・・反復反芻する毎日を送っているそうな。
注1−虞犯保護事件とは犯罪を犯した少年ではなく、犯罪を犯す虞のある少年に対する保護手続きのことをいう。家庭裁判所は、犯罪少年のみならず、犯罪を犯す虞のある少年に対する保護手続きをも行っている。
注2−性に対する意識等が激変している今日、「処女性を守れ」とか「将来、結婚が難しくなるよ」とか「病気になるおそれがある」とか、また「自分を大切に」というような言葉で、奔放な生活をしている少女達を説得するのはなかなか困難である。
また、子供達は、子供であるがゆえに、直感的に、大人の「嘘」を見抜く能力 を持っている。
このような少女達に、どのような態度で接するのか、難しい問題である。 方法はわからない。ただ、間違いなく言えるのは、「虚言や、その場限りの言葉を使わず、真摯に、愛情を持って接する必要がある」ということかもしれない。
注3−「試験観察」処分とは、少年院送致、教護院送致、保護観察処分、不処分といった終局処分ではなく、終局処分をするために、もえ少し少年の生活態度、生活状況等を観察したうえ終局処分をしようという、いわば中間的、暫定的処分であり、このような「試験観察」と「補導委託」という処分を合わせ行い、数カ月程度の間、問題をかかえる少年の現在の生活環境等から離し、「補導受託」先で生活させるとともに、そこで「規則正しい生活」や「仕事を真面目にする」ということを身体で覚えさせたうえ、終局処分において、不処分ないし保護観察処分等を行っている。
平成10年中に、全国の家庭裁判所が受理した少年保護事件数31万8508件中、ぐ犯事件は、1512件。
約0.5%となっている。
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