消費者法ニュース掲載
 
事例要旨−大阪高裁平成14年7月9日判決
 
 暴力団構成員が金融業者と金員借り受けに関する一切の打ち合わせをしたうえ、暴力団構成員らから、「2,3回弁済すれば、後は弁済しなくてもいい。話がついている」旨の説明を受けて、全く面識のない者同士が主債務者及び連帯保証人とされた事件で、金融業者から連帯保証人に対する保証債務履行請求について、その請求を認めた一審判決を破棄し、「連帯保証人には連帯保証債務を負担する意思がなかったことを金融業者は知ることができた」として、民法93条但書を適用して、連帯保証人の連帯保証の意思表示は無効であるとした事例
 
事例の特徴
 
1 本件は、暴力団構成員らが金融業者と金員借り受けに関する事前の打ち合わせ等一切を行い、主債務者及び連帯保証人とされた者らは、事前の打ち合わせに関与していない事例であり、従って、主債務者及び連帯保証人とされた者らは貸付の実行時まで、借り受け金額すら知らされていなかった。
2 主債務者及び連帯保証人とされた者らは、全く面識もなかった。
3 大阪のホテルグランビィア一階喫茶店において、暴力団関係者らと主債務者、連帯保証人、金融業者の担当者が一同に会して、貸付の実行がなされ、貸付金380万円のうち主債務者とされた人間が、最終的に持ち帰った金額は90万円であり、そのなかの50万円を金融業者に対する弁済にあてていた。
4 主債務者とされた者は、消費者金融のブラックリストに掲載されている者であり、金融業者は本件貸付実行前に、右の事情を知っていた。
 
本件判決の意義
 
1 本件金融業者は九州に本拠を置き、関西においても積極的に融資営業活動をしているC会社であり、「ブラックリストに掲載されている者であっても保証人がいれば融資を実行している」疑いがある。
2 暴力団の関与とともに、金融業者と暴力団との通謀の疑い等本件貸金の異常性を一審においても主張したが、一審神戸地方裁判所は、連帯保証人側が申請した暴力団構成員の証人申請すら却下するという訴訟指揮をして金融業者側勝訴の判決をしたが、大阪高裁は連帯保証人側の申請証人を採用取り調べする等して事案の真相の解明に努め、本件判決をした。
 
今後の課題
 
 ブラックリストに掲載され、貸金の回収の見込みのない者に対する貸金の実行については、貸金業法所定の「過剰貸付の禁止条項は、単に行政法規であるからその違反は貸金契約の効力に関係しない」というような硬直的な解釈ではなく、貸金契約の効力にも影響を与えるとの柔軟な解釈等が検討されるべきであろう。
                ( 大阪弁護士会所属・服部廣志)