罪と罰(量刑個別検討など)
大阪弁護士会所属
弁護士 服 部 廣 志
愚かな行動に走る若者にも、見て欲しい。考えて欲しい。
「罪と罰」の内容を!!被害者らの悲しみを!!
従って、草案です。草案を開示することにより、ご参考になればと思います。
ここに記載したものの完成版を、類型別にまとめ、VBAマクロを使って見やすいように整理したうえ、順次、転載、搭載する予定です(現在は、PDFファイル形式で、付録としてダウンロード可能としています。3ケ月ないし6ケ月後に、再度ダウンロードしてみて下さい。時の経過は、裁判例を蓄積させ、量刑資料として意味あるものに変身していきます)。
整理類型
電子計算機使用詐欺・わいせつ図画公然陳列・ストーカー規制法・強姦、強盗・児童買春、ポルノ処罰・児童福祉法、売春防止法・背任・危険運転致死傷・電子計算機損壊等業務妨害・私電磁的記録不正作出罪等・業務妨害・業務上過失致死傷・暴力団犯罪・殺人(強盗致死、現住建造物放火含む)・無資格医業(医師法違反)・罪数
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電子計算機使用詐欺など
*****投稿2004/1120
有印私文書偽造、同行使、詐欺、電子計算機使用詐欺=大阪地裁昭和63年10月7日判決
行為
A女
銀行オンラインシステムの預金端末機を操作し、同銀行の預金管理電子計算機に、合計70万円の入金があった旨の虚偽の情報を与え、同電子計算機に接続されている記憶装置の磁気ディスクに記録された預金残高をX円とし、不実の電磁的記録を作り、70万円相当の不法の利益を得
A女とD男と共謀のうえ
前同方法により90万円相当の不法の利益を得
A女及びB男は、D男と共謀のうえ
C銀行の振り込み依頼書に、振り込み先をF銀行、受取人欄にG、金額欄に4500万円、振込人欄にH証券(株)と記載して、振込依頼書一通を偽造し
Aにおいて、C銀行関せ担当者に偽造にかかる振込依頼書を交付し、同為替担当者をして為替端末機を操作させて全国銀行端末データー通信システムをを通じ、F銀行G名義普通預金口座に4500万円を振り込み入金させて不法の利益を得た、
結果
A女
合計160万円の不法の利益取得
4500万円の不法の利益取得
B男
4500万円の不法の利益取得
量刑
A女
懲役2年
B男
懲役1年6月 執行猶予4年
160万円詐取
4500万円詐取
A女
分不相応な遊興生活にふける
偶発的なものではない
夫に対する不満から精神的安定欠落
金員不正取得を自慢し、黄金の右腕がある、と言ってはばからない−銀行員のモラル欠如
健全な社会人としての自覚欠落
かつら、眼鏡等変装用具準備
振込依頼書押捺用ゴム印準備(指紋残留阻止目的)
署名練習
銀行業務多忙な月末を狙う
犯行への逡巡があまり認められない
銀行は被詐取金員の大半回収ずみ
被害弁償済み、示談成立
前科なし
深く反省
事件報道大きく、社会的制裁受けた
B男
4500万円詐取に加担
娘の結婚資金欲しさが動機
犯行加担役割は、小さい
被害弁償、示談成立
交通以外前科なし
深く反省
検討
電子計算機使用詐欺の法定刑は、10年以下の懲役
詐欺の法定刑は、同上
有印私文書偽造は、5年以下−3月以上の懲役
同行使は、同上
詐欺の判決量刑の多数は、1年ない3年の間
量刑及び実刑と猶予の配分は、穏当か
五右衛門比率
この種の場合、イチロクサンを基本量刑と考えて
加減するとして−加減の範囲内か
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わいせつ図画公然陳列など
*****2004/11/13
わいせつ図画公然陳列=東京地裁平成8年4月22日判決
行為
勤務するネット接続専門会社のサーバーコンピューターのディスクアレイ内にわいせつ画像データー67画像分を記憶、蔵置
再生閲覧可能状況設定し、公然陳列
結果
アクセスしてきた多数の者(人数不詳)に画像送信して、再生閲覧させた
量刑
懲役1年6月 執行猶予3年
公然性著しい
模倣性も大
悪質
動機に情状酌量の余地なし
刑事責任軽くはない
プロバイダーが無制約な情報発信を放置
ネット上で、わいせつ画像データの発信が野放しで、これに誘発された面あり
営利目的なし
深く反省
所有パソコン処分
ネット接続等の会員を脱会
勤務会社退職
二度としない旨誓約
前科前歴なし
実父の監督誓約あり
検討
法定刑は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金
五右衛門比率
イチロクサン
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ストーカー規制法など
*****投稿2004/11/05
ストーカー行為等の規制等に関する法律違反,器物損壊=名古屋地裁平成13年9月6日判決
行為
B方玄関前付近において,Bを待ち伏せ,次いで・・同所において,Bを待ち伏せした上,同人方居宅内に上がり込むなどし
3月17日から同月21日までの間,前後26回にわたり,Bに対し,B方に設置された電話または同人が携帯する携帯電話に,連続して電話をかけ
B管理にかかる普通乗用自動車の車体全体にマジックインキで落書きして汚損させた(損害額21万円)
結果
つきまとい等を反復して行い,ストーカー行為
器物を損壊
量刑
懲役1年、執行猶予3年(保護観察付き)
元交際相手に対するストーカー行為及び器物損壊
被害者から一方的に交際を断られたことを逆恨み
犯行は自己中心的な性格から一方的に思い詰めて実行
犯行の動機及び犯行に至る経緯等に酌むべき事情は乏しい
犯行態様は,執拗かつ常習的で悪質
被害者の受けた精神的苦痛は大きく,現在でも被告人側からの被害弁償の申出を拒否
器物損壊の被害額も高額
被害者に謝罪すると共に,被害弁償のため相当額の金員を供託
反省あり
保釈後精神科のクリニックに通って投薬とカウンセリングを通じて治療に努めている
前科等がない
被告人の親族等が今後被告人の更生に協力することを約束
検討
ストーカー行為の法定刑は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
器物損壊の法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料
併合加重、加重制限で、処断刑は、3年6月以下の懲役
精神的に問題あり、ということで、保護観察付きか
次は、猶予期間中にすれば実刑、が確定
五右衛門比率
0.5(ストーカー)+0.5〜1(器物損害)=1へ1.5
で、比率=1〜0.67
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強姦・強盗など
*****投稿2004/11/04
強姦,強盗,強姦未遂=大阪地裁平成16年10月1日判決
行為
帰宅途中のA子を強姦
上記路上において,同女から財布1個(現金約1万9200円及び鍵等約21点在中。物品時価合計約1万0500円相当)を強奪
帰宅途中のE子を強姦
同女から,同女の差し出した現金1万円を強奪
帰宅して自宅のドアを開けようとしたG子を強姦
同女から手提げかばん1個(現金約9300円及び財布等15点在中。物品時価合計約6万3000円相当)を強奪
帰宅して自宅のドアを開けようとした同女を強姦しようとしたが,発覚を恐れて逃走し,その目的を遂げなかった
帰宅途中のJ子を強姦しようとしたが,何度も懇願されたため,強姦自体は中止
量刑
懲役14年(求刑 懲役12年)
本件各犯行に至る経緯・動機は,身勝手極まりないもの,全く酌むべきものがない
犯行態様も,凶器の所持や暴力団との関係を装って被害者を脅迫するなど悪質
結果は非常に重大
各被害女性は,その無念はいかばかりか,誠に気の毒
第1〜第3の各被害女性は,「踏んだり蹴ったり」の状態で,その肉体的・精神的苦痛の大きさは余人には計り知れない
恐怖の念が去らず,暗くなると外を出歩けなくなる,出歩くのが怖くなっている
男性が近づいただけでピクッとなってしまう
若い彼女らのこれからの長い人生において,本件犯行が大きな影を落とすことがないのか,誠に憂慮される
第5の被害者の屈辱の思いはいかばかりか
被害弁償や慰謝の措置も行っていない
各被害者らが,厳重な処罰を望んでいる
少年時代に同種の非行歴はあるものの,同種前科はなく,異種前科も平成4年に窃盗罪で懲役1年6か月・執行猶予4年(保護観察付)に処せられた1犯
各犯行につき深く反省
被告人の刑事責任は非常に重大
各犯罪類型ごとに,量刑の幅の最低ラインを考える
第1〜第3の各犯行=性犯罪と財産犯の最も悪質な犯罪形態である強姦と強盗であって,被害者に落ち度が全くなく,かつ,被害弁償や慰謝の措置がほとんど皆無であることを重視=いずれも懲役5年を下回ることはない(酌量減軽を行うことは全く不適当である。)
第4,第5の各犯行=強姦未遂であるとはいえ,強制わいせつ行為は行われており,ことに第5のそれはかなり悪質なものであることに加え,やはり,いずれも被害者に落ち度が全くなく,かつ,被害弁償や慰謝の措置がほとんど皆無であることを重視=第4については懲役1年を,第5については懲役1年6か月を下回ることはない
これらを合算すると被告人の刑事責任は懲役17年6か月を下回ることはない
本件のように,併合罪の関係にある数罪が,いずれも人身に対する罪であって,各被害者の心身にわたる被害が相当深刻であるような場合には,あまりに過大な併合の利益を見積もることは,被害者保護の見地からして相当ではなく・・基本的には,合算刑をベースとして(但し,刑法47条や14条の制約の範囲内で),それに比較的近い範囲内で量刑を行うことが相当
本件各罪に共通する強姦(未遂)罪は,女性の性的自由を侵害するというにとどまらず,女性の人格そのものを蹂躙する性質を持つ犯罪であるだけに,なお一層このことが妥当する
検察官の懲役12年の求刑は,被告人の罪責やこれに基づく合算刑の最低ラインに比して,軽きに過ぎる・・その意見には到底賛同することができない
検討
求刑を上回る注目すべき判決
併合罪の場合の量刑について、具体的な量刑指標を判示
五右衛門比率=0.8
合算5(強姦、強盗)*3=15+1(強姦未遂)+1.5(強姦未遂)=17.5
17.5/14=0.8
*****2004/11/27
準強姦=東京地裁平成16年11月2日判決
行為
B及びCと共謀の上,強いて被害者甲にアルコール度数の高い酒を多量に飲ませ,泥酔させて,その心神を喪失させた上,順次同女を姦淫
B,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L及びMと共謀の上,居酒屋R店内において,強いて被害者乙にアルコール度数の高い酒を多量に飲ませ,泥酔させて,抗拒不能にさせた上,同女をフロアーに連行して,同所において,順次同女を姦淫
C,D,E及びNと共謀の上,酒屋R店内において,強いて被害者丙にアルコール度数の高い酒を多量に飲ませ,泥酔させて,抗拒不能にさせた上,フロアーに連行して,同所において,順次同女を姦淫
量刑
懲役14年
巧妙な手口をもって組織的に女性を泥酔させた上,代わる代わる輪姦する犯行を順次敢行したという,本件各犯行の常軌を逸した悪質性,累行性,結果の重大性
本件各犯行における被告人の主導的役割やその具体的な関与の態様,この種事犯の常習性等の諸事情
被害者及びその家族も含めて,その被害感情がいずれも極めて峻烈
反省の態度
マスコミ等で広く報道されるなど,相応の社会的制裁を受け
被告人の父親及び友人が今後の被告人の更生に協力する旨述べている
被告人の父親が,被告人の意を受けて,被害者の慰謝に尽くす意向を示していること, 被告人には前科前歴のないこと
検討
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児童買春・ポルノ処罰
*****投稿・2004/11/02
児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反,窃盗=神戸地裁平成16年3月9日判決
行為
18歳に満たない者(当時16歳)であることを知りながら,同女に対し,現金5万円を対償として供与することを約束して,同女と性交など
B(当時21歳)所有に係る現金約500円等在中の財布1個及び母子健康手帳等4点在中のショルダーバッグ1個(物品時価合計約5000円相当)を窃取
C(当時18歳)所有に係る現金約1000円等在中の財布1個及び携帯電話機等2点在中の手提げ鞄1個(物品時価合計約7500円相当)を窃取
18歳に満たない者(当時17歳)であることを知りながら,同女に対し,現金6万円を対償として供与することを約束して,同女と性交など
結果
2回、合計14000円相当窃取
16歳と17歳の児童を買春
量刑
懲役2年 執行猶予5年
18歳未満の児童に対し,対償を供与する約束をして,性交等
出会い系サイトを通じて知り合った女性から現金等在中の財布等を盗んだという窃盗2件
自己の性的欲望を満たすために,出会い系サイトを通じて知り合った18歳未満の児童に対し買春行為
対償の支払を約束しながら金銭を支払わなかった犯行は計画的であって,その具体的犯行態様も卑劣で悪質
被害児童の被害感情はそれぞれ厳しいこと
本件各犯行を直視しこれを省みる態度が十分でない
援助交際と称する買春行為に及んだ際,買春相手の女性から金品を窃取したもので,被告人は買春相手あるいはその関係者から脅された場合にそなえるため女性の身元がわかるような物を盗もうとしたという
自らの悪行を棚に上げ,逆に相手方に異常な猜疑心を抱くなどというその偏頗な性向には憂慮すべきものがある
犯行動機に斟酌すべき事情は認められず,その犯行もまた計画的で卑劣である
判示第3及び第4の被害者との間で宥恕文言を含む示談が成立
再犯に及ばない旨誓約している
被告人の母親が今後の監督を誓約している
前科前歴がない
未決勾留が相当期間に及んだこと
検討
児童買春罪の法定刑は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金
窃盗は10年以下の懲役
処断刑は併合罪加重、加重制限で、15年以下の懲役となるが、主たる犯罪は児童買春罪
窃盗の量刑の主たるものは懲役1ないし2年か
それに児童買春を加重事由として考えると・・・
「被害児童の被害感情はそれぞれ厳しい」と指摘されているが、この被害感情の実態については、要検討かな(判決には、援助交際の対価を貰えなかったことに対する騙されたという意味での怒りがあるよう・・??)
執行猶予期間を5年としている−二度とするな! 次は許さん、か
五右衛門比率=0.8
1(児童買春)*2=2 + 0.25(窃盗)×2 =2.5
2/2.5=0.8
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児童福祉法、売春防止法
*****投稿
娘に売春強要の母に実刑/「人間性踏みにじる」和歌山家裁
2008/12/25 11:49
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中学3年生だった娘に売春させたとして、児童福祉法違反と売春防止法違反の罪に問われた和歌山市の母親(37)に、和歌山家裁(杉村鎮右裁判官)は25日、懲役3年6月、罰金10万円(求刑懲役5年、罰金10万円)の判決を言い渡した。
判決理由で杉村裁判官は「パチンコ代などを得るための単なる金づるとして扱い、娘の人間性を踏みにじった」と指摘。「約1年にわたり売春をさせられた精神的苦痛は極めて大きく、刑事責任は誠に重大」と述べた。
判決によると、母親は夫(47)と共謀し「(娘の)電話代が高い。体売ってでも金をつくってこい」などと繰り返し売春を強要。和歌山市内のホテルで2月下旬、当時15歳の娘にわいせつな行為をさせ現金1万2000円を受け取らせた。
公判では杉村裁判官が被告に「すごくひどいことをしたんだろ」と厳しく非難する一幕もあった。
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背任
*****投稿2004/11/02
背任=東京地裁昭和60年3月6日判決
行為
勤務会社が開発し、OCとセットで販売していた新聞販売店購読者管理システムのオブジェクトプログラムを、被告人らがリースさせたOCに入力し、勤務会社に本件プログラム入力代金相当額(約170万円)の財産上の損害を与えた。
結果
オブジェクトプログラムの無承諾入力
約170万円の損害
量刑
被告人A、Bいずれも
懲役1年 執行猶予3年
計画的、かつ悪質な犯行
勤務会社の存立に重大な影響を及ぼしかねない犯行
被告人のひとりは勤務会社営業課長
卑劣な犯行
被告人A
反省、改悛の情あり
被害弁償済み
宥恕あり 復職ずみ
前科前歴なし
被告人B
示談不成立
改悛の情あり
被告人主張の損害金額を送付済み
前科なし
検討
背任の法定刑は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
被害会社に被告人の一人が復職ずみ、というのは量刑上、大きいかな
解釈・適用
会社従業員の行為なので背任罪で処断か。仮に無権限の第三者が行ったとしたら、複製権侵害=著作権侵害も問題となるか
五右衛門比率=0.8
1*1.2=1.2
1/1.2=0.8
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危険運転致死傷
*****投稿2004/11/02
危険運転致死傷,道路交通法違反,道路運送車両法違反,自動車損害賠償保障法違反被告事件=宇都宮地裁平成16年8月3日判決
行為
無免許・無保険車両運転、運行供用
対面信号が赤色を表示しているのを同交差点入口の停止線手前約195.1メートルの地点で認め,直ちに制動措置を講ずれば同停止線の手前で停止することができたにもかかわらず,これを殊更に無視し,重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約135キロメートルで自車を運転し,同交差点内に進入
青色信号に従い同交差点内に進入してきたA(当時22歳)運転に係る普通乗用自動車左側部に自車前部を衝突させ
Aを前記傷害に基づく外傷性ショックにより死亡させ
Aの同乗者Bを前記傷害により死亡させるに
自車同乗者のC(当時18歳)に全治約3か月間を要する脳挫傷,頭蓋骨骨折等の傷害
自車同乗者のD(当時23歳)に全治約3か月間を要する左足関節内果骨折,右母指中足骨骨折等の傷害
自車同乗者のE(当時25歳)に加療約3か月間を要する右橈骨遠位端骨折の傷害
自車同乗者のF(当時30歳)に加療約3か月間を要する右鎖骨骨折等の傷害
をそれぞれ負わせた
事故報告・救護義務違反
結果
2名死亡
4名重傷
量刑
懲役18年
危険運転致死の法定刑は、1年−15年の懲役。併合罪加重と刑期の制限で、処断刑は20年以下の懲役。
希有といえる悪質かつ重大事案である
スリルを味わうためや同乗者に怖い思いをさせたいとの許し難い悪ふざけ目当てに,殊更赤信号を無視する挙に出た
本件事故の衝撃は激烈
他人の生命や身体に対する配慮を蔑ろにした不埒千万な動機に酌量の余地は皆無
落命したA及びBは,高校の同窓として久しぶりに楽しい一時を過ごしての帰途,本件事故に遭遇したものであって,それぞれ,会社員や大学生として希望に満ちた生活を送り,多くの可能性を秘めた22歳という若さで,尊い生命を永遠に奪われたものにほかならず,両名の無念さは,察するに余りある
A及びBの両親の悲憤及び処罰感情は峻烈を極めている
被告人は,A及びBの各遺族にはもとより,各負傷者に対しても,見るべき慰謝等の措置を講じていない
長期間の服役との重罰を免れたい自己保身のため,同乗者の1人に口止め工作をして,救護等の措置を講ずることなく,逃走
中等少年院における矯正教育を受けたことがある
被告人は,未だ20代前半と年若く,前科は有せず,父親も情状証人として出廷していることなどの酌むべき一切の事情を十分考慮しても,被告人の刑事責任は余りにも重大
検討
上記量刑理由に言い尽くされているか
量刑の主たる要素は、行為と結果、しかし、結果が一番か
五右衛門比率=0.75
10*2+2*1.4+0.5*2=23.8
18/23.8=0.75
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電子計算機損壊等業務妨害
*****投稿2004/11/02
電子計算機損壊等業務妨害=京都地裁峰山支部平成2年3月26日判決(確定)
行為
旋盤機の内蔵記憶回路に入力されていた作業用プログラムを消去又は改ざんし、旋盤機の電磁的記録を損壊し、自動稼働を不能にし、製品製造業務を妨害
結果
高圧バルプ用継ぎ手の製造不能
量刑
罰金30万円
法定刑は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金(刑法234条の2)
勤務会社に対するうっぷん晴らす目的のようであるが、公刊物未搭載のようで、詳細は不明
検討
裁判所は、罰金刑を選択したが、その理由、詳細も不明
ただ、罰金30万円という量刑から推測すれば、消去又は改ざんされたプログラムの復旧が、さほど困難ではなかった事例かもしれない。詳細不明である。
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私電磁的記録不正作出罪等
*****投稿2004/11/02
私電磁的記録不正作出、同供用、窃盗罪=東京地裁平成元年2月17日判決(確定)
行為
勤務先同僚のキャッシュカード窃取
勤務先OC利用して、磁気ストライプ部分を他のカードに複写して、電磁的記録を不正作出
ATM機から現金8万円窃取
結果
キャッシュカード及び現金8万円窃取
電磁的記録を不正作出
量刑
懲役1年4月、執行猶予3年
動機に酌量の余地なし
職業的な自己の知識、技能を悪用した計画的かつ巧妙な犯行
キャッシュカード等に対する社会一般の信頼を害するもの
深く反省
実父が被害弁償済み
被害者の宥恕と寛大処分求める上申書あり
勤務先会社を解雇される
満21歳で、若年
前科なし
実父の監督誓約あり
検討
私電磁的記録不正作出罪等の法定刑は−5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
窃盗罪の法定刑は−10年以下の懲役
本件の主たる犯罪は−私電磁的記録不正作出罪等か−窃盗の手段か
窃盗後の−私電磁的記録不正作出罪等と−現金窃取は−牽連犯で科刑上一罪
最初の窃盗と併合罪加重で−処断刑は−15年以下の懲役
被害弁償済みで、宥恕、寛大処分上申書など財産犯としての有利事情あり
若年、解雇不利益処分考慮か
窃盗の量刑の多くが、1年以上2年以下からすれば、まあ、穏当か??
*****投稿2004/11/02
私電磁的記録不正作出、同供用、窃盗罪=東京地裁平成元年2月22日判決(確定)
行為
某技術者教育センターOC及び実習用ATM機等を利用して、プラスチック板8枚の各磁気ストライプ部分に、某銀行の預金管理用の電磁的記録をそれぞれ不正作出
9回にわたり、7ケ所、8銀行等のATM機を作動させ、預金管理事務処理の用に供し
上記各ATM機から合計362万5000円窃取
結果
現金362万5000円窃取
電磁的記録を不正作出
量刑
懲役2年6月、執行猶予4年
経済観念乏しく、収入に見合わぬ支出をして、サラ金、ローン返済に追われていた
CPについての専門的知識と技術を使用
キャッシュカードの構造を解析して、正規の暗唱番号と関係なく他人の預金口座から預金を引き出す方法を解明
合計362万5000円の多額の金員を窃取
勤務するCP関連会社の技術者研修期間中を利用し、実習用の機材を利用
女装して発覚防止を企図し、用意周到
被害銀行はキャッシュカードシステムの変更を余儀なくされ、人的、物的負担は多大
電磁的記録の正確性に対する不安を社会に与えた
一般予防の見地から、厳しい処断必要
反省
被害金額全額弁償済み
前科前歴なし
検討
処断刑は−包括一罪・科刑上一罪で−10年以下の懲役
被害金額が多額
行為態様等が悪質
被害の大きさ、行為態様の悪質性等が−東京地裁平成元年2月17日判決(懲役1年4月、執行猶予3年)−と異なるか
それが、量刑上の差違に現れているか
このふたつの裁判例から、電磁的記録不正作出、供用、窃盗という犯罪についての、ある程度の量刑予測が可能か
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業務妨害
*****転載済み・投稿2004/11/02
威力業務妨害=平成16年10月22日福岡地裁判決
行為
テレビ西日本に携帯電話を使って「そちらの建物は今日爆発します」と脅迫するメールを送り、約半日間、同社の業務を妨害
結果
約半日間、同社の業務を妨害
量刑
懲役1年6月、執行猶予3年
(求刑・懲役1年6月)
ストレス解消が目的
大勢の人に多大な迷惑をかけた
警察官現職時の犯行で警察の信頼を失墜させた
反省あり
執行猶予付の場合、求刑どおりの場合が多いので、判決量刑としての価値はないか
検討
威力業務妨害の法定刑は、3年以下の懲役又は20万円以下の罰金−−法定刑真ん中の量刑
警察官の犯行という意味で悪質
しかしこのような場合、失職しており、量刑に反映か
*****投稿2004/11/02
威力業務妨害=平成16年10月26日大阪地裁判決
行為
自宅のパソコンを使って、「明日、大阪のほうの小学生等を殺害しまくります」と「2ちゃんねる」に書き込み、翌7日、同府内の3小学校の授業や職員会議を中止させた
結果
大阪府内の3小学校の授業や職員会議を中止させた
量刑
懲役2年、執行猶予5年
おびえて体を震わせながら下校した小学生もいた
付属池田小事件があっただけに、府下公立小学校の63%で集団下校する重大な結果を招いた。
陰湿で卑劣な犯行
前科なし
検討
池田小学校事件を連想させる悪質な犯行
前科ないことから執行猶予
しかし、猶予期間が最長の5年というのは、裁判所の怒りの現れ
執行猶予期間というのは、本来的な刑罰ではないものの、刑罰を補完するものとしても、実務上、運用されているか
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業務上過失致死傷
*****転載済み・投稿2004/11/02
業務上過失致死傷=平成16年10月19日第三小法廷判決・上告棄却(原審・東京高裁)
行為
Aに文句を言い謝罪させるため,夜明け前の暗い高速道路の第3通行帯上に自車及びA車を停止 させたという被告人の過失行為−−追突事故誘発
結果
3名が死亡し,1名が全治約3か月の重傷
量刑
懲役4年6月
検討
行為内容に酌量すべき事情は見あたらないように思える。
**本件のような,自分勝手な,危険な行為は許すことはできない-相応の刑罰必要との判断か
傷害罪も併合
「3名が死亡し,1名が全治約3か月の重傷」という−結果は重大との判断か
3年以上5年以下の量刑が多い傷害致死の罪--にも匹敵する--量刑か
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暴力団犯罪
*****投稿2004/11/02
銃砲刀剣類所持等取締法違反,殺人未遂,暴力行為等処罰に関する法律違反,覚せい剤取締法違反被告事件=平成16年8月24日広島高裁判決・控訴棄却(原審・広島地裁)
行為
不特定若しくは多数の者の用に供される場所である広島市a区内の路上において,けん銃を発射し,
引き続き,近くの路上において,被告人運転車両の前を外国人3名に横切られて,目が合ったことなどから激高し,1名に対し,未必の殺意をもって,けん銃を発射して命中させ,全治約1か月間を要する傷害を負わせたほか,他の2名に対し,至近距離からけん銃の銃口を向け,凶器を示して脅迫し,
それらの際,けん銃を適合する実包とともに携帯し,
同日ころ,覚せい剤を使用した
結果
(:拳銃発射)
(銃口向け脅迫)
(拳銃、実包所持)
(覚せい剤の使用)
全治約1か月間を要する傷害
量刑
懲役10年
一連の犯行は,人命を軽視したいずれも危険極まりない悪質な犯行
その動機や態様に酌むべき事情は全くない
けん銃で撃たれた被害者が,一命を取り留めたのは偶然の結果
同人が受けた身体的,精神的苦痛は甚大
脅迫された被害者2名の恐怖感も到底軽視することができない
繁華街の路上で合計2発の銃弾を発射しており,周囲に及ぼした危険性も甚だしい
被告人は,長く暴力団組員として活動していたのであり,粗暴犯や覚せい剤取締法違反の罪によるものを含めて前科が9犯あり,規範意識が相当に低下している
本件の犯情は悪質であり,被告人の刑事責任は重大である
殺人の犯行は未遂に終わっていること
けん銃を提出して自首したこと
被害者3名に対し,慰謝料を支払って示談が成立しており,脅迫の被害者2名から宥恕を得ていること
本件犯行自体については,認める供述をして,謝罪の姿勢を示し,今後は暴力団とは関わらないと誓っていること
内妻や知人らが被告人の更生に向けた協力をすると申し出ており,多数の嘆願書をとりまとめていること
検討
典型的な、暴力団構成員による、暴力団的?犯行か
拳銃2発発射は重罪
前科9犯は、論外か
同種前科あるよう
一般の?殺人既遂なみ?の量刑だが、やむを得ないか
**一般論として、暴力団構成員は示談する場合が多い−示談に必死になる
**一般論として、暴力団構成員は脱会を約束するが−−9犯では、過去に嘘のべているよね??−−信用されないよね??
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殺人(強盗致死、現住建造物放火含む)
*****転載済み・投稿2004/11/02
殺人=平成16年10月13日第二小法廷判決・上告棄却(原審・東京高裁)
行為
自分が暴行した女性(44歳)が警察に通報したことを逆恨みし、服役後に刺殺
結果
1人死亡
量刑
死刑
特異な動機による誠に理不尽で身勝手な犯行
計画性が 高く、強固な殺意に基づいており、冷酷、残虐。社会に与えた影響も大きい
殺人罪で1977年(昭和52年)に懲役10年に処せられた前科がある
検討
死刑判決は、裁判所が述べるように、ある意味、当然か
**これで死刑でなかったら,被害者は浮かばれないか
**法治への挑戦的犯行か−−これは叩きつぶす必要があるか
殺人を2回すれば、ほぼ死刑か
*****2004/11/07
窃盗,殺人,死体遺棄,強盗殺人=平成16年10月13日福岡高裁宮崎支部判決・控訴棄却(原審・宮崎地裁)
行為
結果
量刑
死刑
*****投稿2004/11/03
強盗致死、強盗=平成16年7月7日=東京地裁判決
行為
ホテルA207号室において,Bに対し,その身体を紐で縛り上げた上,クロロホルムを多量に吸引させる暴行を加え,同女を意識不明状態に陥らせ,同女所有の現金約4万7000円を強取
ホテルC201号室において,Dに対し,その身体を紐で縛り上げた上,数回にわたり,クロロホルムを多量に吸引させる暴行を加え,同女を意識不明状態に陥らせ,同女所有の現金約5万5000円を強取
そのころ,同所において,同女を上記クロロホルム吸引による急性薬物中毒により死亡するに至らせた
結果
2回、合計10万1000円強取
一人、致死=死亡
量刑
無期懲役
外国人のホテトル嬢であれば,不法滞在の可能性が高く,警察に被害を申告されるおそれも少ないと考え
クロロホルム入り小瓶2本,睡眠薬入りのカプセル数個,紐数本,変装用のサングラスや帽子,厚手と薄手の手袋2双,アイマスク,口枷,ビデオカメラ等を準備
犯行に用いる種々の用具等を事前に準備し,犯行の発覚を防止するための工作を綿密に施した上で,本件各犯行
極めて計画的かつ用意周到な犯行
被告人は,平成7年8月にクロロホルムを使用した強姦致傷等の罪により逮捕された際,取調官から,クロロホルムを過度に吸入すると呼吸困難により死亡するおそれがあることを告げられ、その危険性を十分に認識していた
犯行態様は,甚だ粗暴かつ危険
失神している被害者に対し,自ら苛虐的行為を行う様子をビデオカメラで撮影、女性の人格を一顧だにしない極めて悪質な犯行
一人の貴重な生命を失わせるなどしている
判示第2の被害者は・・誠に痛ましく哀れというほかない。被害者の無念さは,察するに余りある
遺族らが被告人に対して極刑を望んでいる
判示第1の被害者・・その身体的な苦痛や恐怖感は,この上なく大きい
「日本の法律でできる限り重く処罰してほしいと思う」などと峻烈な被害感情
被害弁償や慰謝の措置を何ら講じていない
平成6年から平成7年にかけて,女性をクロロホルム及び革ベルトを使用して強姦するなどした強姦致傷等の事件を起こし,平成8年3月に懲役4年6月に処せられて服役
平成14年7月には,売春婦に対してクロロホルムを使用するなどの行為に及び,強制わいせつ罪により逮捕されたが,同女との間で示談が成立し,告訴が取り消されたため,処罰は免れた。
平成15年4月ころから,専ら韓国人のホテトル嬢派遣業者に電話を掛け,派遣されたホテトル嬢にクロロホルム等を使用する行為を多数回繰り返しているうちに,本件各犯行に及んだ
本件の犯情は極めて悪く,被告人の刑事責任は誠に重大
検討
累犯前科あり
強盗致死の法定刑は、死刑又は無期懲役(刑法240条)
無期懲役刑選択したので、実質上、再犯加重、併合罪加重は意味なし。
病的か
再犯防止の見地からも、無期か
*****2004/11/13
殺人、現住建造物放火=平成16年8月25日=長野地裁判決
行為
Bほか1名が現在するC会社1階事務室に,ガソリン約4リットル入りのバケツを持って立ち入り,ガソリンをBの全身に浴びせ、ライターで点火して火を放ち,Bの身体を燃え上がらせ,更に同事務室内の天然木目合板張り内壁及び木製間柱等を焼損させ、Bを熱傷死させて殺害
結果
1人死亡
会社事務所内壁等焼損
量刑
無期懲役
現住建造物等放火,殺人の事案
動機は身勝手、一般人を納得させるものは何もない
身勝手で独善的なものであり,全く酌量の余地はない。
被害者を生きたまま焼いて殺そうという,計画的で,悪質かつ残虐極まりない犯行
被害者は長時間にわたる激しい苦痛に耐え,治療もむなしく,本件犯行の翌々日に熱傷死
建物内部の物品を含めその財産的損害は多額(市消防局の判定では約650万円)
住民らに不安感を与えた
近隣に被害が拡大した可能性もあって,公共の安全に与えた影響も軽視できない
被害者は地域においてもボランティア活動に尽くし、家庭においては,一家の大黒柱
被害者の受けた精神的,肉体的苦痛は甚大であって,筆舌に尽くし難い
被告人は,何らの慰藉の措置を講じない
公判において,荒唐無稽な弁解をして,被害者の名誉を傷付け,被害者の遺族の精神的苦痛を拡大させている
被害者の遺族や関係者の処罰感情には極めて厳しいものがある
反省の情は皆無
被害者の家族や目撃者らは被告人が社会復帰した場合、何らかの報復を受けることを危惧
規範意識の鈍麻には看過できない
再犯可能性も否定できず,社会防衛の見地からも厳重な処罰が要請される
被告人に交通事故による右側頭葉脳挫傷に起因する外傷性の側頭葉てんかんと器質性人格変化があり、これが被告人の人格形成や本件犯行に影響を及ぼしていることを十分考慮しても,その生涯をかけて,罪の償いをさせることが相当
検討
凶悪、凶暴かつ再犯可能性があれば、致し方ないか
*****2004/11/03
殺人、銃刀法違反=平成16年9月16日=福井地裁判決
行為
殺意をもって,被害者に対し,その腹部及び左腰部等を,所携の波刃万能ナイフで数回突き刺し,死亡させて殺害
波刃万能ナイフ1丁,果物ナイフ1丁,カッターナイフ1丁及びカッターナイフ1丁を携帯
結果
1人死亡
ナイフ等携帯
深刻な精神障害発病
量刑
懲役14年
殺人=有期懲役刑選択=15年以下の懲役
銃刀法=懲役刑選択=1年以下の懲役
併合罪加重、加重制限で、処断刑は、16年以下の懲役
内妻の娘で16歳であった少女に対して性的感情を抱き,その交際相手であった被害者及び同女にストーカー行為を反復
同女と被害者との性交場面を目撃したことから,本件犯行
本件犯行は,犯行の動機にもそれに至る経緯にも,酌量の余地はない
その犯行態様たるや,極めて執拗,凶悪かつ残忍
被害者はいまだ26歳の若さで・・その無念さは察するに余りある
被害者の母親の処罰感情が極めて強い
犯行の現場に居合わせ犯行を目撃した16歳の少女がその衝撃により,PTSD及び解離性障害等の深刻な精神障害を発病
本件犯行について真摯に反省しているとも認め難い
慰謝の措置を講じていない上,被害弁償は困難
前刑の服役を終えた後約15年間は罪を犯していない
職場における被告人の仕事の評価は高い
検討
うん、、、
五右衛門比率=0.87
15+1=16
14/16=0.87
*****2004/11/03
殺人、監禁=平成21年3月18日=名古屋地裁判決−闇サイト殺人事件
闇サイト殺人 2人死刑1人無期 無慈悲かつ残虐 名古屋地裁判決
3月18日15時35分配信 産経新聞
名古屋市の会社員、磯谷利恵さん=当時(31)=が平成19年8月に拉致、殺害された闇サイト事件で、強盗殺人などの罪に問われいずれも死刑を求刑された3被告の判決公判が18日、名古屋地裁で開かれた。近藤宏子裁判長は元新聞セールススタッフ、神田司被告(38)と無職、堀慶末被告(33)に死刑を、自首した無職、川岸健治被告(42)に無期懲役をそれぞれ言い渡した。(11面に関連記事)
被害者が1人の事件で極刑が選択されるかが焦点。近藤裁判長は判決理由で、供述が異なる3被告の強盗殺人罪の共謀を認定したうえで、「3人がそれぞれ楽をして金もうけをしようと行ったもので、動機に酌量の余地がないことは明白」と指弾した。
犯行態様についても「被害者の命ごいに耳を貸すことなく犯行を遂げた。無慈悲かつ残虐であり、戦慄(せんりつ)を覚える」と非難。一方で川岸被告の自首については「事件の解決、次の犯行阻止の大きな要素と認められる」と評価した。
検察側は論告で、死刑適用の判断でこれまで特に重視されてきた被害者数について「要素の一つで絶対的基準ではない」と指摘。そのうえで「残虐極まりない鬼畜の所業」と非難した。
これに対し、3被告側は事件の計画性や自身の主導的立場を否定。「被害者1人で死刑が確定した過去の事件ほど悪質ではない」と極刑回避を求めた。
判決によると、3被告は携帯電話サイト「闇の職業安定所」で知り合い、19年8月24日深夜、名古屋市千種区の路上で磯谷さんを車内に拉致し、監禁。現金などを奪い、翌日未明に殺害した後、遺体を岐阜県内の山林に遺棄した。
*****投稿2009/4/14
無資格医業(医師法違反 )=平成21年4月13日=東京地裁判決
<無免許>整体師に有罪判決 「子宮筋腫」触診
4月13日20時4分配信 毎日新聞
医師免許がないのに子宮筋腫などの女性患者を触診したとして医師法違反(無資格医業)に問われた整体師、小松忠義被告(68)に対し東京地裁は13日、懲役1年6月、執行猶予5年、罰金50万円(求刑・懲役1年6月、罰金50万円)を言い渡した。藤井俊郎裁判長は「深刻な病気を抱えて訪れた患者の信頼や希望を裏切る卑劣な行為」と述べた。
判決によると小松被告は07年6〜12月、自ら設立した千葉県市川市などの整体治療院で女性患者9人を無資格で触診し「子宮筋腫を小さくした」「完治した」と告げるなどの医療行為をした。
藤井裁判長は「症状が改善した患者は一人もおらず、場合によっては深刻な結果をもたらしかねなかった」と指摘した。【安高晋】
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罪数(犯罪の数と科刑)
*****投稿2004/11/08
併合罪
1 (わかりやすく言えば)複数の、独立した、犯罪
2 複数の犯罪なので、併合して加重して処断刑をだし、処罰する。
3 加重の方法は、最も重い方の刑期の1.5倍の処断刑
10年以下の懲役刑がふたつなら、1.5倍の15年以下で処断する。
4 しかし、ふたつの法定刑の合算刑を越えてはならない。
例えば、懲役10年以下と懲役3年以下の罪を併合罪加重する場合
1に従えば、懲役15年以下
しかし
2の制限(合算13年以下)にかかるので、結局、13年以下で処断する。
5 懲役15年以下の刑がふたつなら、
1に従えば、15×1.5=22.5 懲役22年6月以下となるが
6 最長制限の20年にひっかかるので、結局、懲役20年以下で処断する。
7 加重方法
イ 原則 最も重い刑期の1.5倍以下
ロ しかし、合算刑期を越えてはならない。
ハ そして、最長は、20年
ニ ひとつの犯罪で、死刑又は無期懲役刑を選択したなら、加重はしない。
8 併合の利益
単純に合算したら酷(そうとも言えないか)
*****2004/11/09
吸収一罪(大は小を兼ねる)
1 人をナイフでぶすりと刺し殺す。
2 人を殺す=殺人罪、着衣にナイフで穴を開け、血で染め、使用不能にする=器物損壊罪
3 刑法の構成要件(犯罪の類型)からすれば、上記のようにふたつの犯罪類型に該当し、ふたつの犯罪が成立するよう。
4 しかし、通常、殺人の場合(方法はいろいろあるけれど)、被害者の着衣を損傷するということは予想されることだから、着衣損壊=器物損壊の点を考慮して、殺人の法定刑は定められていると考えてもおかしくない。
5 器物損壊罪は、殺人罪に吸収されて、独立して成立はしないと考えよう。
6 ポイント
イ 保護法益(法律が守ろうとする利益)の主体の同一性の有無
ロ 保護法益の内容
ハ 通常、想定される範囲内のものかなど