豪華客船でレジオネラ菌感染 「検出伝えず治療遅れ」
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 乗客告訴へ/賠償提訴も 大阪
 2003/10/02 大阪読売朝刊社会面
 
 豪華客船の浴場でレジオネラ菌に感染し、重い後遺症の残った大阪府茨木市の 辻泰三(たいぞう)さん(71)と妻が近く、船主の「日本クルーズ客船」(大 阪市北区)を相手に一億円余りの損害賠償を求める訴訟を起こすとともに、業務上過失傷害の疑いで関係者を府警に刑事告訴する。「浴場の衛生管理を怠ったうえ、自主検査で大量の菌が検出された後も利用客に伝えず、適切な治療を遅らせた」と主張。菌検出の情報を利用客へ積極提供する責務も問うことになり、一般の入浴施設などにも影響を与えそうだ。
 訴状によると、辻さん夫妻は昨年十二月二十八日から今年一月六日まで、同社の大型客船「ぱしふぃっくびいなす」による台湾周遊クルーズに参加した。
 展望浴場を朝夕利用した泰三さんは、旅行後の一月十二日に重症肺炎で入院。
一時は危篤になり、人工呼吸器も装着した。病院の検査で十八日にレジオネラ菌が検出され、この菌に効く抗菌薬に変更。四月十九日にやっと退院したものの、その後も肺機能の低下で酸素ボンベを常に持ち歩く必要があり、身体障害三級、要介護2と認定された。妻の妙子さん(65)も介護の負担で肩を痛めた。
 同社は台湾周遊の前に浴槽水を自主検査。一月六日には国基準の千五百倍のレ ジオネラ菌汚染が判明したが、利用客には連絡せず、次のクルーズを続けた。
 一月十四日には辻さんの娘が「治療方針にかかわる。レジオネラ感染の可能性 はないか」と問い合わせたのに、同社は菌検出の事実を伝えなかったという。
 レジオネラ肺炎には一般的な抗菌薬が効かず、早期診断が極めて重要。辻さんは「せめて情報があれば、効果のある薬で早く治療でき、障害者にならずに済んだのでは」と怒っている。
 この船では、同じ台湾周遊に参加した東京都の女性と次の国内航海に参加した愛知県の男性も発症した。
 日本クルーズ客船の小浜(こはま)英雄・海務部長の話「私どもの注意が足りず、ご迷惑をおかけした責任は痛感している。誠意を尽くして対応すべく交渉中だったので、驚いている」
 
浴場のレジオネラ菌感染 施設管理者に情報公開促す(解説)
 2003/10/02 大阪読売朝刊社会面
 
 レジオネラ菌は人工的な水環境で急速に増える。昨年夏、宮崎県日向市の温泉施設で七人が死亡するなど各地の入浴施設で集団感染が相次ぎ、管理者の民事、刑事責任が問われたケースも少なくないが、今回は医療の観点から情報公開を促す点に大きな意味がある。
 レジオネラ肺炎は特定の抗菌薬しか効かず、治療が遅れると死亡率が高い。感染を疑わせる情報があれば早く診断がつき、治療の成否も左右される。
 厚生労働省が昨秋から実施した緊急点検では、検査した入浴施設の17%にあたる約三千か所で菌が検出された。公衆浴場や旅館には年一回以上の菌検査と行政への報告を義務付け、今年七月には福祉施設や船舶も含めた入浴施設の衛生管理指針を定めたが、菌が検出されても公表・公開する制度はない。散発的な発生で感染源不明とされている症例も多い。利用者に知らせずにこっそり改善するだけでよいのか、事業者も行政も対応が問われている。
 
 豪華客船のレジオネラ菌感染 乗客の夫婦が船会社に賠償求め提訴/大阪地
裁 2003/10/03 大阪読売朝刊2社面
 
 豪華客船による台湾周遊クルーズに参加した際、船内の浴場でレジオネラ菌に感染して重症肺炎になり、後遺症が残った大阪府茨木市の辻泰三さん(71)と妻が2日、船主の日本クルーズ客船(大阪市)を相手に1億円余りの損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。同時に、同社関係者に対する業務上過失傷害容疑の告訴状を府警に送った。
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(約2週間で、決着した。原告訴訟代理人・大阪弁護士会・弁護士服部廣志)