猿回しの猿
昔、昔、猿回しの猿がいた。
猿回しは、猿を池の畔に連れて行き、猿の目の前で、子犬を池に放り込んだ。
猿回しは、じっと、見ている猿をムチで打ち、子犬を助けに行かせた。
何度、何度も・・・・・・。
猿回しの訓練は、何度も、何度も、・・・・何年も続けられた。
余りの長年月の訓練のせいか・・・猿は、「ムチの痛みを恐れるががため」、子犬を助けに行っている自分の「行動の理由」を忘れてしまっていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ある日
猿回しの猿が池の畔を歩いていると、猿の目の前を歩いていた女の子が連れていた子犬が、誤って足を滑らせ、池に落ちた。
猿は、
一目散に池に飛び込み、
子犬を助けた・・・・・
子犬を助けられた女の子が、猿に礼を言いながら、猿にこう尋ねた。
お猿さん、お猿さん・・・??、
何故、
あなたは子犬を助けてくれたのですか・・・・・?
ムチを忘れている猿は、こう答えた。
お嬢ちゃん、お嬢ちゃん・・
猿というものは、池に落ちた子犬を見ると・・助けたくなるのです。
私の心が「助けに行け!」と命じるのです。
私は、何かに強制されて助けに行ったのではありません。
お嬢ちゃんには、わからないかもしれませんが
これを「猿の良心」というのです。