新聞報道
「女性はね死亡」刑事裁判で有罪男性
民事は逆の結論に
大阪地裁「十分な証拠ない」
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車にはねられ死亡したとされる女性(当時64)の遺族が
、自営業者の男性を相手に損害賠償を求めた訴訟の判決が1
8日、大阪地裁であった。平野哲朗裁判官は「自営業者の車
が女性をはねたとは認められない」と述べ、請求を棄却した
。この事故で、自営業者の男性が業務上過失致死罪で起訴さ
れ、有罪判決が確定しており、刑事と民事の裁判で全く異な
る結論になった。
判決で、平野裁判官は「女性には車と接触した外傷がなく
、車にも傷が一切ない。男性が交差点に差しかかる以前に何
らかの理由で女性が転倒していた可能性が否定できない」と
述べた。遺族側は「男性は事故直後、女性の親族に謝罪して
おり、事故を認めていた」と主張したが、同裁判官は「男性
は飲酒運転をしていた負い目があったため、気が動転しては
ねたと思い込み、謝罪したと理解できる」とした。
男性を有罪とした刑事裁判では、女性と衝突した車体の部
分にほこりが取り除かれたような跡が残っていたという警察
官の証言が重視されたが、平野裁判官は「十分な証拠はない
」と指摘した。
今回の判決について、男性側の代理人弁護士は「刑事裁判
では、合理的な疑いが残らない程度の心証がなければ有罪に
できないが、その鉄則を無視されていた」と話している。
男性は、1997年9月1日夜、大阪府枚方市内の交差点
で、横断中の女性にワゴン車を接触させ、脳挫傷で死亡させ
たとして起訴された。公判で「人に接触した感覚はなく、覚
えているのは女性が倒れているのを見たことだけだ」などと
無罪を主張していた。
しかし、大阪地裁は昨年12月、「ほこりが取り除かれた
跡を確認した警察官の供述は十分信用できる」とし、禁固1
年6月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。男性が控訴
しなかったため、この判決が確定した。
(平成12年7月19日付朝日新聞朝刊)
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男性側代理人弁護士は、大阪弁護士会所属弁護士服部廣志である。
本件刑事判決は、「刑事裁判における立証責任」や「合理的な疑いを残さ
ない程度の心証」といったことを理解しない極めて不当な判決であった。
本件訴訟が確定的に終了した段階で、その不当性を明確にしたいと考えて
いる。
( 弁護士五右衛門)