高校生にわかる民事訴訟の仕組み「中学生にわかる民事訴訟の仕組み」本の読了を前提
−−連載執筆中−− 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                  大阪弁護士会所属
                     弁護士 五 右 衛 門
目次
No1判決の効力の及ぶ人
No2訴訟の開始と取り下げ
No3訴訟手続き利用手数料など・・・ 
No4訴状の送達方法など 
 
 
NO4 訴状の送達方法など
 
一 訴状などを被告に送付(送達)
 
1 No2で説明しましたように、訴状を被告に送付しないと裁判は始まりません。
 訴状を裁判所に提出して、闘技場の扉を開けて、闘技場の中に入ったとしても、相手である被告が闘技場にでてこないと裁判は始まりません。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2 この「訴状の送達」は、裁判を始める、最初の要件、条件であり、重要なことなので、被告に対しては「特別送達」という方法により、送付します。
 
3 特別送達=@ 民事訴訟法に規定する方法により A 裁判所等から訴訟関係人などに B 送達すべき書類を送達し C 送達の事実を証明する、郵便の特殊な取り扱い。
 D 配達担当者が郵便送達報告書を作成し E 郵便事業会社が送達の事実を証明する F 郵便物の表面に「特別送達」と記載する。
 
4 付郵便による方法=
 
 
NO3 訴訟手続き利用手数料など(貼付収入印紙及び持参郵券など)
 
一 裁判所利用手数料
 
1 紛争の解決にあたる裁判所「真っ暗な舞台のある闘技場」は国の税金で運営されています。
  裁判所に訴を起こすためには、裁判所に提出する訴状に、民事訴訟費用等に関する法律が定めている金額だけの(国が発行している)収入印紙を貼り付けなければなりません。
  収入印紙を購入して訴状に貼り付けることにより、国に裁判所を利用するための手数料を支払う必要があるのです。
 
 この収入印紙貼り付けによる手数料は、いわば「闘技場(裁判所)」の扉を開ける木戸銭と考えていいでしょう。
 
 この木戸銭を支払わないと「闘技場(裁判所)」の中には入れてくれないのです。
 
2 収入印紙貼り付けによる手数料の支払い以外に裁判所に持参しなければならないものがあります。
  郵券=切手です。
  訴訟、被告の人数、また訴訟以外の手続きの内容などに従い裁判所が求める郵便切手を持参しなければなりません。裁判所が被告を呼び出したりするなどいろんな手続きに必要な郵便切手現物で持参するのです。
  大阪地裁では、被告1人の場合、4800円分、被告2人の場合、6900円分です。
 
3 この裁判所手数料=印紙を貼り付けないと、訴状を受け付けてくれなくなります(=訴状を却下されます)。
 訴状受け付けた後に貼用印紙額の不足がわかり、裁判所から追加の印紙を貼り付けるよう命令(訴状補正命令)されたにもかかわらず貼り付けなかった場合も同様に訴状を却下されてしまいます(訴状却下命令)。
 
 (裁判長の訴状審査権)
民事訴訟法137条  訴状が第百三十三条第二項の規定に違反する場合には、裁判長は、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを命じなければならない。民事訴訟費用等に関する法律 (昭和四十六年法律第四十号)の規定に従い訴えの提起の手数料を納付しない場合も、同様とする。
2  前項の場合において、原告が不備を補正しないときは、裁判長は、命令で、訴状を却下しなければならない。
3  前項の命令に対しては、即時抗告をすることができる。
 
二 命令、決定、判決の違い
 
 
 
                              未完
 
NO2 訴訟の開始と取り下げ
−−国民すべてに半自動扉の鍵はあたえられている。
−−扉のロックの開閉方法は決められている。
−−裁判官は寝ているのです。
 
一 訴訟の開始(=訴の提起)
 
1 民事訴訟はどのようにして始まるのか。
  裁判官がいる「暗闇の舞台」がある「闘技場(裁判所)の扉」は、半自動扉になっているのです。
  その扉の鍵はすべての国民に与えられています。
  原告入場用の扉を開ければいいのです。
 
 
 
 
 
2 訴訟を起こそうとする人が扉を開ければ(裁判所に訴状を提出する=訴の提起をする)いいのです。
 
(訴え提起の方式)
民事訴訟法133条  訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。
2  訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一  当事者及び法定代理人
二  請求の趣旨及び原因
 
3 闘技場の扉を、鍵を使って開ければいいのです。
  そうすると、暗闇の中で、ひとり、じっと眠って、待っていた裁判官は、扉を開ける音を聞いて、目覚めるのです。
  この扉を開ける音がしないと、裁判官は眠りから覚めない仕組みになっているのです。
 
 
 
 
 
 
  わかるでしょ。
  裁判官や裁判所は、「客引き」をしてはいけないこととなっているのです。
  どんなに闘技場(裁判所)の外で、喧嘩や紛争があったとしても、裁判所や裁判官が闘技場(裁判所)の外に向かって、入っていらっしゃい(訴訟の提起をしなさい)なんて、呼び込みをしてはいけないことになっているのです。
 
4 原告入場用の闘技場の扉を、誰かが鍵を使って開けると(訴の提起があると)、自動的に目覚める裁判官は、その原告が扉を再度開けて、闘技場の外にでてしまう(訴の取り下げをする)と、自動的に睡眠薬が効き始め、眠ってしまうのです。
 裁判官は、自分の意思で、起きたり、寝たりはできないのです。  
 闘技場の扉の開閉により、自動的に起きたり、寝たりするように薬が調合されているのです。
 
二 訴訟の取り下げ
 
 この原告入場用の扉は、半自動になっているのです。
 
 
 
 
 
 原告が入ってきても、被告が被告用の扉を開けて入場して(訴状の副本を受領し)、声を出さない(被告が声をださない間=準備書面を提出したり、弁論準備手続において申述をしない間)間は、原告用扉にロックはかかっていないので、原告は闘技場の外に自由にでること(訴の取り下げをすること)ができます。
 しかし、被告が、声をだしてしまうと、原告用扉にロックがかかる仕組みになっているので、自由に外にでる(訴を取り下げる)ことはできないのです。
 もちろん、声をだした被告が、原告が訴を取り下げることについて、同意をしてくれれば、ロックは解除されるので外にでることは可能となるのです。
 
(訴えの取下げ)
民事訴訟法261条  訴えは、判決が確定するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。
2  訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。ただし、本訴の取下げがあった場合における反訴の取下げについては、この限りでない。
 
 原告の提起した訴訟について、被告がその言い分などを声をだして主張した後は、原告の自由意思による勝手な訴の取り下げは認められないのです。
 被告がその訴訟に利害を持ってしまった後は、原告に自由に訴の取り下げを認めないのは当然でしょう。
 
 
NO1 判決の効力の及ぶ人(的範囲)
−−中学生本を読んでいれば、わかるでしょう。暗闇の舞台の運営は自己責任。
−−責任を負わせていいのは、誰でしょうか。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
一 判決は誰を拘束するのか、誰に及ぶのか?
 
1 一見、難しいそうな、こんな問題も、カンタンにわかるでしょう。
 
 中学本で勉強したように
 判決って言うのは
イ 暗闇の舞台に参加した
ロ 原告や被告などが
ハ その責任で、声(主張)をだし、懐中電灯を照らす(証拠を提出する)という行為に基づいて、なされるものであり
ニ その参加した当事者の声(主張)が一致していた場合には、その一致している階(一致している主張部分を裁く舞台)には、裁判官の乗ったエレベーターは止まらなかったのですよね
 
 このように裁判に参加した原告や被告などの当事者の、自己責任を前提として、裁判官が動く階(舞台)は決定され、暗闇の舞台(裁判)は運営されているのですから、、、この暗闇の舞台(裁判)に参加しなかった人に、判決の効力が及ばないのは、当然ですよね!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 例えば、原告と被告は暗闇の舞台の上にいるのは「犬である」と言い、その言い分が一致していた場合、それは原告や被告の勝手でしょうが、それを裁判に参加しなかった他の人に押しつけることなんて、できないのは当然でしょう!!
 
 原告と被告が、暗闇の舞台の上にいるのは猫なのに、舞台の上にいるのは「3匹の犬」か「5匹の犬か」ということが争いになり、裁判所が、「5匹の犬である」と判決をしたからと言って、「舞台の上にいる猫が犬になるわけがない」ですよね!!
 
 「民事訴訟における判決は、その裁判に参加した原告や被告にしか及ばない」という民事訴訟法の理屈は、当然過ぎるほど当然なのが理解できるでしょう!! 
 
2 民事訴訟法の規定の仕方
 
(確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)
民事訴訟法115条
 確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
一  当事者
二  当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
三  前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
四  前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
2  前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。
 
 法律の条文のうち、一は原告や被告などの当事者を指しているのでわかりますね。
 三の意味はわかりますか。
 (暗闇の舞台の幕が下ろされた−後の−権利の移転
 
 
 
 
 
 
 
 
 判決は口頭弁論終結時点(暗闇の舞台の幕が下ろされた時)を基準として行うこととなっていますので、幕が下りた後(口頭弁論終結後)に裁判で問題となっている権利などを譲り受けた人(承継人)にも判決の効力は及ぶという意味です。
 当たり前といえば当たり前ですよね。譲り渡す人(原告又は被告など)は判決によって示される内容の権利しか持っていなかったのだから、譲り受けた人(承継人)も、その判決で示される内容の権利しか取得できないですよね。判決の効力を受けて当然ですよね!!
 
 二と四は別の機会にお話しします。
 
3 具体的な実際例