第六編 少額訴訟に関する特則
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(少額訴訟の要件等)
368条
 簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。
2  少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければならない。
3  前項の申述をするには、当該訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理及び裁判を求めた回数を届け出なければならない。
 
(反訴の禁止)
369条
 少額訴訟においては、反訴を提起することができない。
 
(一期日審理の原則)
370条
 少額訴訟においては、特別の事情がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければならない。
2  当事者は、前項の期日前又はその期日において、すべての攻撃又は防御の方法を提出しなければならない。ただし、口頭弁論が続行されたときは、この限りでない。
 
(証拠調べの制限)
371条
 証拠調べは、即時に取り調べることができる証拠に限りすることができる。
 
(証人等の尋問)
372条
 証人の尋問は、宣誓をさせないですることができる。
2  証人又は当事者本人の尋問は、裁判官が相当と認める順序でする。
3  裁判所は、相当と認めるときは、最高裁判所規則で定めるところにより、裁判所及び当事者双方と証人とが音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって、証人を尋問することができる。
 
(通常の手続への移行)
373条
 被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができる。ただし、被告が最初にすべき口頭弁論の期日において弁論をし、又はその期日が終了した後は、この限りでない。
2  訴訟は、前項の申述があった時に、通常の手続に移行する。
3  次に掲げる場合には、裁判所は、訴訟を通常の手続により審理及び裁判をする旨の決定をしなければならない。
一  第三百六十八条第一項の規定に違反して少額訴訟による審理及び裁判を求めたとき。
二  第三百六十八条第三項の規定によってすべき届出を相当の期間を定めて命じた場合において、その届出がないとき。
三  公示送達によらなければ被告に対する最初にすべき口頭弁論の期日の呼出しをすることができないとき。
四  少額訴訟により審理及び裁判をするのを相当でないと認めるとき。
4  前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
5  訴訟が通常の手続に移行したときは、少額訴訟のため既に指定した期日は、通常の手続のために指定したものとみなす。
 
(判決の言渡し)
374条
 判決の言渡しは、相当でないと認める場合を除き、口頭弁論の終結後直ちにする。
2  前項の場合には、判決の言渡しは、判決書の原本に基づかないですることができる。この場合においては、第二百五十四条第二項及び第二百五十五条の規定を準用する。
 
判決による支払の猶予
375条
 裁判所は、請求を認容する判決をする場合において、被告の資力その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときは、判決の言渡しの日から三年を超えない範囲内において、認容する請求に係る金銭の支払について、その時期の定め若しくは分割払の定めをし、又はこれと併せて、その時期の定めに従い支払をしたとき、若しくはその分割払の定めによる期限の利益を次項の規定による定めにより失うことなく支払をしたときは訴え提起後の遅延損害金の支払義務を免除する旨の定めをすることができる。
2  前項の分割払の定めをするときは、被告が支払を怠った場合における期限の利益の喪失についての定めをしなければならない。
3  前二項の規定による定めに関する裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
 
(仮執行の宣言)
376条
 請求を認容する判決については、裁判所は、職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。
2  第七十六条、第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。
 
(控訴の禁止)
377条
 少額訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができない。
 
(異議)
378条
 少額訴訟の終局判決に対しては、判決書又は第二百五十四条第二項(第三百七十四条第二項において準用する場合を含む。)の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に、その判決をした裁判所に異議を申し立てることができる。ただし、その期間前に申し立てた異議の効力を妨げない。
2  第三百五十八条から第三百六十条までの規定は、前項の異議について準用する。
 
(異議後の審理及び裁判)
379条
 適法な異議があったときは、訴訟は、口頭弁論の終結前の程度に復する。この場合においては、通常の手続によりその審理及び裁判をする。
2  第三百六十二条、第三百六十三条、第三百六十九条、第三百七十二条第二項及び第三百七十五条の規定は、前項の審理及び裁判について準用する。
 
(異議後の判決に対する不服申立て)
380条
 第三百七十八条第二項において準用する第三百五十九条又は前条第一項の規定によってした終局判決に対しては、控訴をすることができない。
2  第三百二十七条の規定は、前項の終局判決について準用する。
 
(過料)
381条
 少額訴訟による審理及び裁判を求めた者が第三百六十八条第三項の回数について虚偽の届出をしたときは、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
2  前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
3  第百八十九条の規定は、第一項の規定による過料の裁判について準用する。