執行猶予
西暦2001年13月10日午前0時49分
ILC特別刑事法廷007号室
牧野誠裁判長
被告人夢幻野郎に対する強姦未遂事件について、判決を言い渡す。
被告人、前へ。
主文
1 被告人を懲役2年6月に処する。
2 未決勾留日数中、60日を右刑に算入する。
3 この裁判確定の日から、5年間右刑の執行を猶予する。
・・・・・・・・・・・・閉廷
夢幻野郎/
「キャ?! うれしい・・!!」
「先生!!」
「僕が、もう二度としません、と言ったことを裁判長は信用してくれたんですね!!」
「キャ?うれしい・・・!!」
岩田二郎弁護士/
「こらこら。ちょっと待て・・!!」
「よく聞きなさい!」
「主文か゜2年6月であれば、通常、執行猶予期間は3年でおかしくないんだよ。
それを裁判所は執行猶予期間としては、最長の「5年」を選択した。
ということは、裁判所は「君のもう二度としません」という言葉を「信用しているとは言えない」んだよ。
「ただ、今回は、犯行の動機、犯行態様、被害の程度、被害者の感情、前科前歴等諸般の事情を考えて、「君の言うことを信用し難いけれど、信用したい。君の言葉と意欲を信じたい」等 ということで、執行猶予をつけてくれたんだよ!」
「わかるかな・・?」
夢幻野郎/
「フ〜ン?? そう、なの・・・??」
(チラ! オ?! あの子可愛いな・・・!! ナンパできそう・・!!)
「あっ!!」
「先生!! ぼ、僕、急用思い出しました・・・また、電話しますから・・・さよなら・・・!!」
岩田二郎弁護士/
「こら、こら! 待ちなさい・・・!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あ〜ぁ、やれやれ・・・・・・」
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・(数年経過)
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(後日談)
強姦致傷被告事件で、懲役5年の実刑判決を受けた夢幻野郎は、前回の懲役2年6月の執行猶予も、取り消され、合計7年6月の刑を「よくやるね刑務所」において服役中であり、「四角い空」を見上げながら、岩田二郎弁護士の顔を思い出そうとしている毎日である。
蛇足/
刑の執行猶予
懲役刑又は禁固刑の有罪判決を受けても、執行猶予が付されると、とりあえずは服役しなくてよいこととなる。その執行猶予期間中に、犯罪等を犯さなかったら・・わかりにくい制度である。
一 執行猶予の意味
犯罪を犯さず、執行猶予期間が満了した場合
懲役刑ないし禁固刑の有罪判決の言い渡しが「なかったこと」となる。
「服役しなくてよい」という以上の意味がある。有罪判決の言い渡しがなかったこととなる(言い渡しの効力がなくなる)。
二 執行猶予をつけるための前提条件
1 3年以下の懲役ないし禁固刑に限る。
2 再度の執行猶予の場合は1年以下に限る。保護観察処分にふされている場合はダメ!
三 執行猶予期間の目安(但し、独断と偏見による)
1 通常、3年間の執行猶予が圧倒的
2 執行猶予期間3年・・・通常
3 執行猶予期間4年・・・ちょつと待てよ。いいかげんせーよ。
4 執行猶予期間5年・・・あんまり、信用してませんぞ。
5 保護観察付執行猶予・・次は絶対、許さんぞ!!
6 執行猶予期間3年未満・懲役・禁固刑の主文との釣り合い
例えば、禁固6ケ月、執行猶予2年とか・・・・
四 再度の執行猶予と執行猶予の取り消し
1 執行猶予期間中に判決する場合
2 1年以下の懲役ないし禁固刑の判決の場合のみ、再度の執行猶予可能
3 保護観察処分にふされている場合はダメ!
4 執行猶予期間中に、懲役・禁固刑の実刑判決又は罰金刑を受けた場合には、前回の執行猶予が取り消されることがある。
前回分と今回分、合算して行っておいで・・高い塀の向こうへ!!
五 参考
1 同種類の前科、前歴ある場合は・・・評価は厳しい
2 覚醒剤事件2回目は・・・まず実刑
覚醒剤やめますか・・? 人間やめますか・・?
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