家事審判手続法 雑感
Housekeeping hearing-procedures code
大阪弁護士会所属
弁護士 五 右 衛 門
・当事者に陳述書を提出させて、審問期日を開かない方法の可否
(陳述の聴取)
68条 家庭裁判所は、別表第二に掲げる事項についての家事審判の手続においては、申立てが不適法であるとき又は申立てに理由がないことが明らかなときを除き、当事者の陳述を聴かなければならない。
2 前項の規定による陳述の聴取は、当事者の申出があるときは、審問の期日においてしなければならない。
(審問の期日)
69条 別表第二に掲げる事項についての家事審判の手続においては、家庭裁判所が審問の期日を開いて当事者の陳述を聴くことにより事実の調査をするときは、他の当事者は、当該期日に立ち会うことができる。ただし、当該他の当事者が当該期日に立ち会うことにより事実の調査に支障を生ずるおそれがあると認められるときは、この限りでない。
68条1項所定の「当事者の陳述を聴かなければならない」との趣旨は、当事者間で利害対立があることが多いことから、その攻撃防御の機会を十分保障するため、事実の調査においては当事者の陳述を聴くことを原則とし、当事者の審問申出権を認めている。従って、裁判官が当事者の陳述を直接録取するときには審問以外の方法をとることはできないと解される(日弁論・家事審判手続法のポイント51頁)。
審判において、「当事者に陳述書を提出させて、審問期日を開かない方法」が許されるのか否かは微妙な問題である。
形式的には、書面照会や調査官調査による場合など、「審判官が当事者の陳述を直接聴かない方法による場合」には上記規定の適用外とも解釈可能であるが、「当事者に陳述書を提出させて、審問期日を開かない方法」は、原則として、法68条の規定の趣旨を潜脱するものとして許されないと解釈すべきである。
但し、審判の争点に直接関係しないような身上等に関連する事項等を確認するに過ぎないような場合には、書面照会や調査官調査ないしは当事者の陳述書の提出のみによることも許されると解釈すべきであろう。