地代家賃、売掛金・管理実務に必携
 
「地代家賃、売掛金・充当計算、回収の仕組み」
 
 
 
帯の言葉
 マンションの貸主及び管理者に最適・弁護士らの計算を越えられる(より緻密に,より正確に)!!
 塵も積もれば山となる!!
 
 
 
付録
   ・滞納地代家賃等充当計算書=充当計算くん(弁護士五右衛門作)
   ・売掛回収金法定充当計算書=売掛充当計算くん(弁護士五右衛門作)
   ・内容証明自動作成ブログラム=内容証明作成くん(金森喜正作)
                         For Excel2000 or more
 
               大阪弁護士会所属
              弁護士 末 澤 誠 之
              弁護士 五 右 衛 門
               
 
第一 地代家賃充当計算の仕組み
 
 はじめに
  多くの人々が土地や建物の賃貸借契約の貸主,或いは借主となって家庭生活,事業活 動などが行われていますが,その地代や家賃の滞納についてのトラブルや紛争は相当な 数にのぼっています。
 
  そして,弁護士として,このような紛争の当事者となった人から相談を受けてみると, 多くの一般の人は,概ね次の3つの点について,誤解をされている場合が多いか,又は 正確に理解しておられない場合が多いようです。
 
 誤解の3大点
 
 1点は,賃貸借契約に書かれている契約条項の効力について
 
 2点は,滞納賃料がある場合の弁済受領金の弁済充当計算の方法
 
 3点は,賃料滞納がある場合の催告の内容証明郵便の書き方,出し方
     などについてです。
 
 本書は,一般の方々,特にマンションの貸主・その管理者及び管理組合の責任者が,地代,家賃などの賃料滞納についての法律の内容,法律的な解決の方法,滞納賃料について一部弁済を受けた場合の弁済金の充当計算の方法,そして内容証明郵便の書き方,出し方などを説明しています。
 
 一般の方が地代家賃などの賃料滞納された場合に,ご自身で明渡しや,延滞賃料を請求することが可能とし,個人で対処できるようにするためのものです。
 
  付録として,「滞納地代家賃等債務弁済充当計算書(充当計算くん)」をつけました。
 債務の弁済充当計算をするためのもので,遅延損害金を加算した計算も簡単にでき,未 払の地代,家賃などの債務や未払金額が自動的に計算表示され,賃料管理のための計算 プログラムです。
 
  債務の弁済充当計算プログラムを作成,添付した関係から,地代,家賃等の賃料だけ ではなく,売掛金の回収金についての法定弁済充当計算の説明とともに,売 掛回収金の弁済充当計算プログラム,売掛法定充当計算くん(消費税の内税, 外税,税込み方式等の諸パターンの計算書)も付録として添付することとし ます。
  売掛金も地代家賃と同じ種類のものなのですが,地代家賃と異なり,遅延損害金を付 加する場合は少ないことに加え,計算書の表示や消費税との関連を意識して,使いやす いように,別途,売掛金計算用の計算書を制作して付録として添付しています。
 
 
第二 賃貸借契約に書かれている契約条項の効力について
   賃貸借契約に書かれている文言が,全て有効とは限りません。つまり, 契約文言が無効なことがあるのです。詳しくは,以下をよく読んで下さい。
 
一 法律の規定の仕方は,どうなっているのでしょうか。
 
)土地や建物の賃貸借契約を規定する法律は,大別して,民法借地借家法です。
そして,最近,注目を受けているのが消費者契約法です(特に,敷金の返還義務の範囲などで,この消費者契約法に基づく新しい裁判,判決などが続出されています。必要な限り説明します。)。
 
 
 A 民法
   賃貸借契約の終了に関する民法の条文は,下記の民法617条及び618条です。
  この規定の文言からからすれば,土地の賃貸借契約については1年前に,建物の賃貸  借契約については6ケ月前に,解約の予告をしておけば賃貸借契約を終了させること  ができるのであり,解約することができるように読めます。
 
  民法617条(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ) 
   当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは,各当事者は,いつでも解約の申入れ  をすることができる。この場合においては,次の各号に掲げる賃貸借は,解約の申入  れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
  一 土地の賃貸借 1年
  二 建物の賃貸借 3ケ月
  三 動産及び貸席の賃貸借 1日
 2 収穫の季節がある土地の賃貸借については,その季節の後次の耕作に着手する前に  解約の申入れをしなければならない。
 
  民法618条(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保) 
   当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても,その一方又は双方がその期間内に  解約をする権利を留保したときは,前条の規定を準用する。
 
   ところが,民法に優先する特別な法律があるのです。借地借家法という法律であり,  民法に優先した規定があります。
 
 B 借地借家法
  借地借家法
  1条(趣旨) 
   この法律は,建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間,効力等  並びに建物の賃貸借の契約の更新,効力等に関し特別の定めをするとともに,借地条  件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする。
 
  ・ 借地借家法は,土地・建物の賃貸借契約の効力などを定めると規定しています。
  ・ この法律は,特別な法律なので,民法の定めより優先して適用されるのです。
  ・ 従って,この法律が適用される場合,「民法の規定はないと同じである」と理解   して欲しいのです。
  ・ 借地借家の場合,民法ではなく,この借地借家法が適用されると理解しましょう。
 
  ・ 一言で言えば,賃借人の権利が強く保護され」,賃貸人の一方的な「契約解除   や賃借料の増額請求等は認められない」ということです。
    このように賃貸人による一方的な賃貸借契約の解除などが認められないこと,逆  に言えば,賃借人の賃借権が強く保護されていることを,俗に,「賃借人には居住権  がある」という表現で語られているのです。居住権という独立した権利というものが  法律上規定されています。
   この「借地借家法の存在」と「その意味」を理解していない人もいるのです。
 
  3条(借地権の存続期間) 
   借地権の存続期間は,30年とする。ただし,契約でこれより長い期間を定めたと  きは,その期間とする。
 
 ・ 建物所有の目的の土地の借地契約の契約期間は,最低30年とすると定めています。
 ・ つまり,契約書で,契約期間を例えば5年と約束したとしても,その契約期間の約  束は効力がないのです(5頁の9条参照
 ・ 従って,30年より短い契約期間を契約書で定めたとしても,契約期間は30年と  なってしまうのです。
 ・ 建物は最低30年程度は持つと考えるのでしょう。
 
  4条(借地権の更新後の期間)  
   当事者が借地契約を更新する場合においては,その期間は,更新の日から10年(借  地権の設定後の最初の更新にあっては,20年)とする。ただし,当事者がこれより  長い期間を定めたときは,その期間とする。
 
 ・・借地契約の期間は最低30年ですが,借地契約の契約期間が満了して,借地契約を  更新する場合,初めて更新する場合には最低20年,2回目からの更新の場合には最  低10年間とすると契約更新後の契約期間の最低を法律で定めているのです。
 
  5条(借地契約の更新請求等) 
   借地権の存続期間が満了する場合において,借地権者が契約の更新を請求したとき  は,建物がある場合に限り,前条の規定によるもののほか,従前の契約と同一の条件  で契約を更新したものとみなす。ただし,借地権設定者が遅滞なく異議を述べたとき  は,この限りでない。
 2 借地権の存続期間が満了した後,借地権者が土地の使用を継続するときも,建物が  ある場合に限り,前項と同様とする。
 3 転借地権が設定されている場合においては,転借地権者がする土地の使用の継続を  借地権者がする土地の使用の継続とみなして,借地権者と借地権設定者との間につい  て前項の規定を適用する。
 
 ・・建物所有目的の土地の契約期間が満了する場合,借地の上に建物が存在する限り,  借地人が契約の更新を求めた場合には,更新契約期間は前記4条に従うものの,その  他の条件は更新前の契約と同一条件で契約の更新をしたものとみなすという定めで   す。
   すなわち,最初の更新の場合にはあと20年,二回目以降の更新の場合にはあと1  0年,契約が続くということなのです。
 
  6条(借地契約の更新拒絶の要件)  
   前条の異議は,借地権設定者及び借地権者(転借地権者を含む。以下この条におい  て同じ。)が土地の使用を必要とする事情のほか,借地に関する従前の経過及び土地  の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換  えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考  慮して,正当の事由があると認められる場合でなければ,述べることができない。
 
 ・・借地人が,契約の更新を求めた場合には,正当な理由がない限り,賃貸人,地主側  は契約の更新を拒絶できないという定めです。
   土地を明け渡さなければならない賃借人の不利益と明け渡しを求める賃貸人の明け  渡しを求める理由などを総合して決定することとなっているのです。
 
  9条(強行規定)  この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは,無効と  する。
 
 ・・重要な定めで,賃借人に不利な契約内容を定めたとしても,効力はない,無効とす  ると定めた規定です。
   賃貸借契約において,上記のような借地借家法が保護している賃借人の権利を無視  するような契約は,例え,契約の当事者が納得して契約を締結したとしても,その効  力をみとめない,無効とするという定めなのです。不動産などの資産を持たない者に  限りませんが,借りているものを保護しているのです。
 
  26条(建物賃貸借契約の更新等)  
   建物の賃貸借について期間の定めがある場合において,当事者が期間の満了の1年  前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなけ  れば更新をしない旨の通知をしなかったときは,従前の契約と同一の条件で契約を更  新したものとみなす。ただし,その期間は,定めがないものとする。
 2 前項の通知をした場合であっても,建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人  が使用を継続する場合において,建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも,  同項と同様とする。
 3 建物の転貸借がされている場合においては,建物の転借人がする建物の使用の継続  を建物の賃借人がする建物の使用の継続とみなして,建物の賃借人と賃貸人との間に  ついて前項の規定を適用する。
 
 ・・建物賃貸借契約の場合の,更新契約の契約条件を定めたものです。更新前の契約内  容と同一の内容で,契約を更新したものとみなすという定めです。
 
 
  27条(解約による建物賃貸借の終了) 
   建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては,建物の賃貸借は,解  約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。
 2 前条第二項及び第三項の規定は,建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場  合に準用する。
 
 ・・建物の賃借人からの契約解約の申し入れは,「6月前にすればいい」という定めで  す。
   建物の賃貸人からの契約の解除は自由にできないように法律は定めています賃  借人からの契約の解除は6ケ月の猶予期間があれば,これを認めることとしているの  です。続いて規定されている28条を読んでみよう。
 
  28条(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件) 
   建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは,建  物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を  必要とする事情のほか,建物の賃貸借に関する従前の経過,建物の利用状況及び建物  の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに  建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考  慮して,正当の事由があると認められる場合でなければ,することができない。
 
 ・・借家人が,契約の更新を求めた場合には,正当な理由がない限り,賃貸人,家主側  は契約の更新を拒絶できないという定めです。
   この規定が,賃借人を強く保護する規定と言ってもいいでしょう。契約期間が満了  しても,賃借人が賃貸借契約の更新,賃貸借契約の継続を求めた場合には,賃貸人は  正当な理由がない限り,これを拒絶できないと定めているのです。
 
規定を詳細に検討すると,
   イ 建物賃借人が建物の使用を必要とする事情
   ロ 建物賃貸借契約の従前の事情
   ハ 建物の利用状況及び建物の現況
   ニ 賃貸人の提示する明け渡し料の有無と金額など
    この提示明け渡し料,立ち退き料の金額は,賃借人が建物から立ち退くことによ   る不利益を減殺,減少させる要素として考慮されることとなります。
 
 ・・ 転貸借にも適用されますので,建物に関するいわゆるサブリース契約   にも28条が適用されます。平成16年11月8日の最高裁第2小法廷では,サ   ブリース契約は,借地借家法32条1項が適用されるとされた判決であり,家主と賃借    人の間では,賃借人が予め転借人と自由に契約が締結が可能とする契約は,借地借家法    が適用になるか否かが争点となった事案であり,家主から賃借人に求める契約更新の正    当事由についての,重要な判決です。判決理由では,サブリース契約は,貸主が本件   各建物部分を賃貸し,賃借人が家主に対してその対価として賃料を支払うというもので   あり,建物の賃貸借契約であることが明らかであるから,本件契約には借地借家法32   条の規定が適用されるべきものであるとしています。
 
  29条(建物賃貸借の期間)  
   期間を1年未満とする建物の賃貸借は,期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
 2 民法第604条の規定は,建物の賃貸借については,適用しない。
 
 ・・1年未満の契約期間は,期間の定めのない契約とみなすという定めです。
   従って,家主が,ぼんやりして期間を定めないで家屋を貸した場合には,家主が借  主に解約を申し入れても,長期間明渡しができません。
 
  30条(強行規定)  
   この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは,無効とする。
 
 ・・重要な定めで,賃借人に不利な契約内容を定めたとしても,効力はない,無効とす  ると定めた規定です。
 
 
  C 上記のとおり,借地借家法は,
 
   イ 土地の賃貸借契約についてはその賃貸借契約期間の最低年数を法律で定め,
   ロ また建物の賃貸借契約については,結論として,正当な理由がない限り,貸主    側の一方的な理由による賃貸借契約の解除を認めないというように定め,
   ハ 土地建物の賃借人と賃貸人との間で,このような法律の定める内容と異なる内    容の契約を締結したとしても,それが賃借人に不利な内容の契約条項のものであ    れば,「無効とする」と定めているのです。
 
   土地・建物の賃貸借契約の主たる内容を規定しているのは,契約当事者の締結した  契約書ではなく,また民法でもなく,借地借家法であることを理解して欲しいのです。
 
 
(2) 更に,借地借家法は,見なおしがなされ,まず,平成3年に定期借地権が創設さ  れました。その後平成11年に定期建物借家権も創設されたのです。従来の借地法や  借家法だけでは,活動する不動産の利用需要に法律制度が硬直化していたので,見な  おしがなされて規定されて規定されたのです。
   更に多様化され,最近の改正により,定期借地権制度(22条以下)及び定期借家  権制度(33条以下)が更に創設されていますので,注意して下さい。
 
 
  A まず規定されたのが,定期借地権です。土地の利用を拡大する政策により定期借   地権制度を新たに設けたのです。現在よく利用されています。
 
  22条(定期借地権)  
   存続期間を50年以上として借地権を設定する場合においては,第9条及び第16  条の規定にかかわらず,契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを  含む。次条第1項において同じ)及び建物の築造による存続期間の延長がなく,並び  に第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。  この場合においては,その特約は,公正証書による等書面によってしなければならな  い。
 
  ・・平成3年に定期借地権が創設され,その後平19の一部改正により,借地権を5   0年以上と定めることができることとしたのであります。
  ・・公正証書による等書面でなければ効力がありません。書面であれば良いのです。   口頭では効力がありません。
 
  23条(事業用定期借地権等)
   専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ)の  所有を目的とし,かつ,存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場  合においては,第9条及び第16条の規定にかかわらず,契約の更新及び建物の築造  による存続期間の延長がなく,並びに第13条の規定による買取の請求をしないこと  とする旨を定めることができる。
 2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし,かつ,存続期間を10年以上30年  未満として借地権を設定する場合には,第3条から第8条まで、第13条及び第18  条の規定は、適用しない。
 3 前2項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければ  ならない。
 
 ・・土地をより広く利用したい事業主用の借地権ができたのです。
 ・・事業用定期借地権制度は,平成11年の一部改正によるものであり,事業用借地権  を広く認める制度ですが,必ず公正証書によってしなければならないので,注意が必  要です(単なる書面だけでは,無効です。)。
 ・・10年以上50年未満の期間で事業用借地権を設定することが可能になります。
 ・・30年以上50年未満の期間については,同じ期間で普通借地権を設定することが  でき,その場合には法律上当然に,@契約の更新があり,A建物を再築した場合には  存続期間が延長され,B期間満了時には建物買取請求権が行使できるといった保護が  与えられることになります。そこで,30年以上50年未満の期間で事業用借地権を  設定する場合には,当事者間の特約により,借主に対してこれらの保護が与えられな  い旨を定めることができることとし,この特約の有無により事業用借地権と普通借地  権を区別することとしました(改正後の借地借家法第23条第1項)。なお,この規  定は,一般定期借地権(同第22条)と同様です。
 ・・10年以上30年未満の期間については,そもそも設定できる借地権が事業用借地  権だけですので,特約の有無によって,定期借地権と普通借地権とを区別する必要が  ありません。そこで単純に,法律上,契約の更新等に関する規定を排除すれば十分で  すので,そのような規定となっています(同第23条第2項)。なお,この規定ぶり  は改正前の事業用借地権と同様です。
 ・ ・なお,公正証書による契約が必要なのは従前と変わりません(同第3項)。
 ・・借地期間を永くしたのは,平成19年の一部改正によるものであり,事業用の借地  権を30年以上50年未満の場合の多様性を規定したものであり、22条と違い必ず  公正証書による必要がある。
 
  24条(建物譲渡特約付借地権)  
   借地権を設定する場合(前条第2項に規定する借地権を設定する場合を除く。)に  おいては,第9条の規定にかかわらず,借地権を消滅させるため,その設定後30年  以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価  で譲渡する旨を定めることができる。
 2 前項の特約により借地権が消滅した場合において,その借地権者又は建物の賃借人  でその消滅後建物の使用を継続しているものが請求をしたときは,請求の時にその建  物につきその借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間で期間の定めのない賃  貸借(借地権者が請求をした場合において,借地権の残存期間があるときは,その残  存期間を存続期間とする賃貸借)がされたものとみなす。この場合において,建物の  借賃は,当事者の請求により,裁判所が定める。
 3 第1項の特約がある場合において,借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との  間でその建物につき第38条第1項の規定による賃貸借契約をしたときは,前項の規  定にかかわらず,その定めに従う。
  
 ・・平成19年の一部改正によるものであり,借地権を消滅させるため,その設定後3  0年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の  対価で譲渡する旨を定めることができることとしたのです(なお9条は強行規定です  が法律が例外をもうけたのです。)。
 ・・譲渡の方法が平成19年一部改正により可能となったのです。
 
 
 B 次いで,規定されたのが,定期建物賃貸借です。建物の利用を拡大する政策により  定期建物賃貸借を更に設けたものです。公正証書に限らずに契約書面で,契約締結で きます。
 
  38条(定期建物賃貸借)  
   期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によ  って契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないことと  する旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
 2 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじ  め、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間  の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交  付して説明しなければならない。
 3 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこと  とする旨の定めは、無効とする。
 4 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物  の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期  間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の  通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建  物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合において  は、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
 5 第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸  借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建  物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事  情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となっ  たときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この  場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによっ  て終了する。
 6 前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
 7 第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係  る特約がある場合には、適用しない。
 
 ・・平成11の全改によるものであり,借家権を広く利用させる新設された制度です。  このように,借地・借家権であっても,ご自分の権利がどの制度であるのか充分見極  めるのが必要です。
 
 
 
 C 借地借家に限りませんが,消費者個人が被害に遭わないために,消費者契約法が平  成12年に,更にその改正が平成18年になされたました。従って,借地借家法の適  用されるケースであっても,契約の当事者が消費者である場合には,消費者契約法の  各条文を検討しなければ本当の意味の救済にはなりません。
 
   以下では,消費者契約法を検討してみましょう。なお,借地借家契約に関する消費  者が関与する場合に契約が有効か取消ができるかの規定ですので,消費者が関与しな  い場合には,以下の規定は飛ばして必要な部分のみ読んで下さい。
 
 
 
  1条(目的)  
   の法律は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ、  事業者の一定の行為により消費者が誤認し、又は困惑した場合について契約の申込み  又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに、事業者の損害  賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全  部又は一部を無効とすることにより、消費者の利益の擁護を図り、もって国民生活の  安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
 
・第1条は,目的を定め,消費者と事業者間の情報の質及び量並びに交渉力から消費者の利益擁護をはかる規定であります。
・地主及び家主は,土地や家屋を貸す際には,借りる側が消費者である場合により強い注意力が必要であります。
・消費者が借主の場合には,誤認するような説明をした場合には,契約が取り消しされることがあります。例えば,仲介業者の社員が誤った説明をした場合にも誤認となり,取消問題となります。
・同じく消費者が借主の場合には,困惑させたことにより契約取消権問題となります。
 
  2条(定義)  
   この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事  者となる場合におけるものを除く。)をいう。
 2 この法律において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のた  めに契約の当事者となる場合における個人をいう。
 3 この法律において「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約を  いう。
 
 ・・第2条は,定義規定であり,事業者とは何か,消費者とは何かです。皆様が取引す  るのは大部分が消費者ではないでしょうか。相手方が会社であれば消費者契約法は適  用になりません。
  
  3条(事業者及び消費者の努力)  
   事業者は、消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消  費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるよう配慮するとともに、  消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、消  費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努め  なければならない。
 2 消費者は、消費者契約を締結するに際しては、事業者から提供された情報を活用し、  消費者の権利義務その他の消費者契約の内容について理解するよう努めるものとす   る。
 
 ・・特に地主及び家主は,充分な必要情報提供をする義務があり,提供がされていない  場合には取消問題に発展するおそれがあります。
 
  
  4条(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)  
   消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対  して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによっ  て当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すこ  とができる。
  一 重要事項について事実と異なることを告げること。当該告げられた内容が事実    であるとの誤認
  二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけ   るその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変   動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。当該提供された断定的判断の   内容が確実であるとの誤認
 2  消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に   対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益と   なる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該   告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意   に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当   該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すこと   ができる。
    ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわら   ず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。
 3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対  して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み  又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
  一 当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から   退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。
  二 当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者   が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させ   ないこと。
 4 第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項で  あって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼす  べきものをいう。
  一 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の   内容
  二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引   条件
 5 第一項から第三項までの規定による消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の  取消しは、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
 
 ・・特に重要なのが,第4条以下です。地主及び家主は,勧誘をするに際し重要事実を  告げないこと,即ち不実告知をしてはならない,また,誤認する事実を告げた場合に  は,取消となる。
 ・・消費者契約法は,契約当事者の故意・過失は不要であり,無過失で不実告知がなさ  れた場合につき問題となります。相手方業者が不実を告知して,契約を締結したケー  スでは,消費者から契約取消を請求された場合には,正当な業者も巻き添えを食うの  です。
 ・・将来の不確実事実についての断定的判断提供も同様です。
 ・ 消費者である借地人及び借家人に不利益な事実を故意に不告知して契約を締結した  場合告知しないと,取消とあることがある。
 ・・消費者である借主の自宅などから退去しないで,貸主に有利な「契約をした場合や,  貸主宅等から消費者が退去することを阻止した場合にあり得るのです。不退去又は監  禁により消費者が困惑し,それにより契約を締結した場合です。
 ・・なお,訪問販売により取引をした場合には,特定商取引に関する法律があります。
 
 
  5条(媒介の委託を受けた第三者及び代理人)  
   前条の規定は、事業者が第三者に対し、当該事業者と消費者との間における消費者  契約の締結について媒介をすることの委託(以下この項において単に「委託」という。)  をし、当該委託を受けた第三者(その第三者から委託を受けた者(二以上の段階にわ  たる委託を受けた者を含む。)を含む。次項において「受託者等」という。)が消費  者に対して同条第一項から第三項までに規定する行為をした場合について準用する。
   この場合において、同条第二項ただし書中「当該事業者」とあるのは、「当該事業  者又は次条第一項に規定する受託者等」と読み替えるものとする。
 2 消費者契約の締結に係る消費者の代理人、事業者の代理人及び受託者等の代理人は、  前条第一項から第三項まで(前項において準用する場合を含む。次条及び第七条にお  いて同じ。)の規定の適用については、それぞれ消費者、事業者及び受託者等とみな  す。
 
 ・・特に地主及び家主は媒介を委託する業者を選ばないと,自らの取消理由とされます。
 ・ 貸主は,ケースによれば,相手方の不動産会社の説明に注意し,いわば危機察知能  力を高めなければならないこともあります。。
 ・・消費者からすれば,賃貸借契約を締結した関係者が第4条に反した説明を受けた場  合に,救済できるように,広く説明を受けた関係者の範囲を広くして救済を図ったの  です。第5条は,媒介の委託を受けた第三者及び代理人の規定ですが,貸主側が一番  陥り安い落とし穴規定です。
  
  6条(解釈規定)  
   第四条第一項から第三項までの規定は、これらの項に規定する消費者契約の申込み  又はその承諾の意思表示に対する民法(明治二十九年法律第八十九号)第九十六条の  規定の適用を妨げるものと解してはならない。
 
  7条(取消権の行使期間)  
   第四条第一項から第三項までの規定による取消権は、追認をすることができる時か  ら六箇月間行わないときは、時効によって消滅する。当該消費者契約の締結の時から  五年を経過したときも、同様とする。
 2 商法 (明治三十二年法律第四十八号)第百九十一条 及び第二百八十条ノ十二 の  規定(これらの規定を他の法律において準用する場合を含む。)は、第四条第一項か  ら第三項までの規定による消費者契約としての株式又は新株の引受けの取消しについ  て準用する。この場合において、同法第百九十一条 中「錯誤若ハ株式申込証ノ用紙  ノ要件ノ欠缺ヲ理由トシテ其ノ引受ノ無効ヲ主張シ又ハ詐欺若ハ強迫ヲ理由トシテ」  とあり、及び同法第二百八十条ノ十二 中「錯誤若ハ株式申込証ノ用紙若ハ新株引受  権証書ノ要件ノ欠缺ヲ理由トシテ其ノ引受ノ無効ヲ主張シ又ハ詐欺若ハ強迫ヲ理由ト  シテ」とあるのは、「消費者契約法第四条第一項乃至第三項(同法第五条第一項ニ於  テ準用スル場合ヲ含ム)ノ規定ニ因リ」と読み替えるものとする。
 
 ・・6ヶ月間で取消権は,時効消滅します。
 
  8条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)  
   次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
  一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する   条項
  二 事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重   大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を   免除する条項
  三 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為に   より消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の全部を免除する条項
  四 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為   (当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限   る。)により消費者に生じた損害を賠償する民法 の規定による責任の一部を免除   する条項
  五 消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕   疵があるとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事   の目的物に瑕疵があるとき。次項において同じ。)に、当該瑕疵により消費者に生   じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項
 2 前項第五号に掲げる条項については、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規  定は、適用しない。
  一 当該消費者契約において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、   当該事業者が瑕疵のない物をもってこれに代える責任又は当該瑕疵を修補する責任   を負うこととされている場合
  二 当該消費者と当該事業者の委託を受けた他の事業者との間の契約又は当該事業者   と他の事業者との間の当該消費者のためにする契約で、当該消費者契約の締結に先   立って又はこれと同時に締結されたものにおいて、当該消費者契約の目的物に隠れ   た瑕疵があるときに、当該他の事業者が、当該瑕疵により当該消費者に生じた損害   を賠償する責任の全部若しくは一部を負い、瑕疵のない物をもってこれに代える責   任を負い、又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合
 
 ・・消費者に一方的責任免除条項は無効となります。
 
 
  9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項の無効)  
   次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とす  る。
  一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項で   あって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等   の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ず   べき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
  二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支   払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)   までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項で   あって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間   について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払   うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗   じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
 
 ・・従来の定型化した賃貸借契約書では,一方的損害賠償金額の予定しても,無効とな  ることがあります。契約内容を検討する必要があります。
 
  10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)  
   民法 、商法 その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消  費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法  第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無  効とする。
 
 ・・民法1条2項は,信義則という基本原則であり,賃貸借契約書では,消費者に一方  的一方的不利益条項を規定しても、無効となる。
   
  11条(他の法律の適用)  
   消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力  については、この法律の規定によるほか、民法 及び商法 の規定による。
 2 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力  について民法 及び商法 以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるとこ  ろによる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
第二 本計算書の機能と内容
 
一 弁済充当計算が面倒な理由
 
 法律が規定しているとおりに,支払いを受けたお金の弁済充当の計算方法は煩わしい です。本書では,煩わしい計算を簡単に出来るシステムを作りました。
 
(1) 弁済充当
 
  債務がふたつ以上ある場合,全額の弁済に足りない金額の弁済をした場合,弁済した 金員をどの債務の弁済に充てるのかということが問題となります。これを弁済充当とい うのです。 
  例えば,1月分賃料10万円と2月分賃料10万円の2口の未払い債務があり,5万 円弁済した場合に,その5万円はいずれの債務に充当されるのかという問題です。
 
  1月分滞納賃料  10万円
  2月分滞納賃料  10万円
   の場合
  5万円を弁済,支払った場合,この5万円は,1月分に充てるのか,2月分に充てる のか,という問題。
 
  滞納金額の全額である20万円を弁済,支払った場合には問題となりません。滞納金 額の全額である20万円に満たない金額を弁済,支払った場合に,問題となるのです。
 
  例示−計算書1を参照して下さい・
  ・ 計算書1の場合,遅延損害金の計算はしていません(利率入力欄が空白です)。
  ・ 支払われた5万円は,全額1月分賃料に充当されています。
  ・ 従って,1月分は残5万円が未払い,2月分は10万円全額が未払いと表示され   ています
  ・ 合計15万円の滞納です。 
 
(2) 法定充当
 
  滞納地代や家賃などについて未払分を計算する場合,受領金額を古い滞納分に順番に 充当して未払分を計算していきます。
  一番古い滞納賃料   1番先に充当
  次に古い滞納賃料   2番目に充当
  ・・・
  ・・・
  一番新しい滞納賃料  ?
 
  例示−計算書1を参照
  (計算書1は,遅延損害金を加算計算していません。利率入力欄が空白です。)
 
  その他の債務についても,基本的には,まず遅延損害金,利息金などに充当したうえ, 元金債務については履行期(弁済を約束した日の)の古いもの順に充当していきます。
 
  例示−計算書2を参照して下さい。
  ・ 遅延損害金を加算計算選択しています(利率入力欄に6%が入力されています)。
  ・ 支払われた5万円は,まず,遅延損害金に充当計算します。
    50,000−(460+328=778)=49,212
  ・ 遅延損害金に充当した残額49,212円を,1月分10,000円に充当しま   す。
    10,000−49,212=50,778
  ・ 1月分不足金額=未払い金額は5万0778円となり
  ・ 2月分は10万円全額が未払いと表示されています
  ・ 合計15万0778円の滞納です。 
 
  このように,支払われたお金
   1番目 遅延損害金   先に充当
   2番目 利息金     次に充当
   3番目 債務の元金(弁済期日の古いものから)   最後に充当 
  という順番に充当していくのです。
 
 
 
  (民法489条(法定充当)
    弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも前条の規定による弁済の充当の指  定をしないときは,次の各号の定めるところに従い,その弁済を充当する。
  一 債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは,弁済期にあ    るものに先に充当する。
  二 すべての債務が弁済期にあるとき,又は弁済期にないときは,債務者のために弁   済の利益が多いものに先に充当する。
  三  債務者のために弁済の利益が相等しいときは,弁済期が先に到来したもの又は    先に到来すべきものに先に充当する。
  四 前二号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は,各債務の額に応じて充当する。
 
 ※ 民法491条(元本,利息及び費用を支払うべき場合の充当)
   債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合に  おいて,弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは,  これを順次費用利息及び元本に充当しなければならない。
 2  第489条の規定は,前項の場合について準用する。
 
二 このような計算は大変面倒です。
  利息金を計算して,まず弁済金を利息金に充当し,残額があれば元本に充当する。
 
  このような計算は煩わしいので,弁護士の実務では,通常,地代・家賃などの滞納分 についての遅延損害金加算などはしないまま充当計算をし,確定した未払残額分につい てのみ遅延損害金を加算して請求するのが通常です。
 
 ・・遅延損害金の金額は通常大きな金額ではないので無視して差し支えないということ  も理由の一つでしょうが,しかし,その大きな理由は計算の煩わしさにあるといって  過言ではありません。
 
 (本書付録の計算書のように,簡単に計算できる計算プログラムがなかったというのが  本当の理由でしょうか。)
 
  例えば,2005年3月25日に支払うべき3月分賃料10万円及び4月25日に支 払うべき4月分賃料10万円の両方20万円が5月20日現在未払いであり5月20日 15万円の弁済がなされた場合,20万円−15万円=5万円 となり,5万円につい て,請求支払い請求時から年5%又は年6%の遅延損害金の支払いを求めるといった請 求方法をとるのです。
 
  例示−計算書3参照
  ・ まず,1月分賃料10万円に弁済金額15万円を充当します。
  ・ 充当した残額の5万円を2月分賃料10万円に充当します。
  ・ 2月分が5万円不足ということとなり,5万円が未払い金額となります。
  ・ この計算書の場合,上から3行については利率6%が入力されていません。
  ・ 1,2月分賃料について,遅延損害金を加算していないからです。
 
  ・ この場合,未払い金5万円と未払い金5万円について5月21日から(又は訴状   が相手に送達された日の翌日から)年6%の遅延損害金の支払いを求めることとな   ります。
  ・遅延損害金の計算利率は,賃貸借契約が商行為の場合には年6%とし,  一般では年5%です。
 
 
 ※ 民法419条(金銭債務の特則)
   金銭の給付を目的とする債務の不履行については,その損害賠償の額は,法定利率  によって定める。ただし,約定利率が法定利率を超えるときは,約定利率による。
 ※ 民法404条(法定利息)
   利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは,その利率は,年五分と  する。
 ※ 商法514条(商事法定利息)
   商行為によって生じた債務に関しては,法定利率は,年六分とする。
 
  ・・遅延損害金計算を付加して充当計算することとします(6%を使用することとし   ます)。
    例示−計算書4を参照
 
   例えば,3月25日に支払うべき3月分賃料10万円及び4月25日に支払うべき  4月分賃料10万円の両方が5月20日現在未払いであった場合,5月20日現在の  請求権は
  イ 3月分賃料の遅延損害金 
   3月26日から4月25日までの3月分賃料10万円に対する年6%の割合による   遅延損害金 10万×0.06×31÷365=509
  ロ 3月分及び4月分賃料の遅延損害金 
   4月26日から5月20日までの3月分及び4月分の未払い賃料合計20万円に対   する年6%の割合による遅延損害金 20万×0.06×25÷365=821
  ハ 1月分賃料元本 
   10万円
  ニ 2月分賃料元本 
   10万円
  となり,
 
  弁済があった場合,仮に,5月20日15万円の弁済がなされた場合
  まずイに充当計算し(15万−509=14万9491)
  次いでロに充当計算し(14万9491−821=14万8670)
  その後,ハに充当計算し(14万8670−10万=4万8670)
  そして,ニに充当計算する(4万8670−10万=−5万1330)。
  5万1330円の未払いということとなります。
 
  例示−計算書4では5万1330円の未払いと表示されています。  
 
 
  煩わしいです。
   15万円−753円=14万9247円
   14万9247円−328円=14万9247円
  となり,14万9247円及びこれに対する完済まで年5%の遅延損害金の支払いを  求めることとなります。
 
 
   さらに,上記遅延損害金を計算する場合,裁判所債権執行部採用の端数期  間暦年計算方法を使用する場合,年単位を除く端数期間については,平年  と閏年別に計算分母を365又は366日を区別して使用して合算計算す  ることとなり,計算自体も煩わしいです。
 
   この場合,例えば未払い期間中に全額弁済に満たない一部弁済がなされたような場  合には,その弁済金額如何により,遅延損害金計算の元本金額が変動するということ  も生じ,より一層煩わしいです。
   例えば4月20日に8万円を一部弁済したとします。
   10万円×0.05×25=342
   8万円−342円=7万9658円
   10万円−7万9658円=2万0342円
   2万0342円×0.05×6=16円
  となり
   4月26日現在は,残金12万0342円,未払い遅延損害金は16円となり,請  求する場合には,「12万0358円及び内金12万0342円に対する2005年  4月27日から完済まで年5%の金員を支払え」ということとなります。
 
   面倒でしょう。やってられませんよね。  
 
   わずかな金額のために,このような煩わしい計算方法を採用するのは面倒であると  いうことで,上記のような遅延損害金の加算計算を省力するのが実際の法律実務かも  しれません。
 
   しかし,遅延損害金計算を省略する方法は,賃貸人にとって不利益な計  算方法であります。
  また,賃料不払いをすると遅延損害金の加算計算をされるということが, 賃借人に対し,約定どおりの賃料支払いを促す契機となるのかもしれません。
 実際に遅延損害金まで徴収するか否かは別にして,遅延損害金加算計算を採 用するのがベターでしょう。
 
 
 
 
 付録の「法定充当計算書
 この計算書は,上記のような計算をワンタッチで計算するためのものです。賃料のみならず,実費精算の光熱費なども一括計算管理ができるのです。
 賃貸不動産の賃料などの管理に不可欠でしょう。
 
3 指定充当
 
 上記に記載しました法定充当は,債務を弁済する債務者が弁済充当する債務を指定しない場合(債務者が指定しない場合には債権者が指定)の定めです。
 法律の上では,債務者が充当する債務を指定することが認められているのです。
 しかし,実際上は,指定がなされる場合は少ないと言ってもいいのかもしれません。
 
 ※ 民法488条(弁済の充当の指定)
   債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合  において,弁済として提供した給付がすべての債務を消滅させるのに足りないときは,  弁済をする者は,給付の時に,その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
 2 弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは,弁済を受領する者は,その  受領の時に,その弁済を充当すべき債務を指定することができる。ただし,弁済をす  る者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは,この限りでない。
 3 前二項の場合における弁済の充当の指定は,相手方に対する意思表示によってする。
 
 ・・弁済充当の指定の方法
  1 弁済する債務者が指定する。
  2 受領する債権者が指定する。
  3 法定充当する。
 
  しかし,実際上は充当の指定がない場合が多いので,法定充当によることとなります。
  また,債権者が法定充当による計算をした場合,相手方が指定充当によるということ について,指定したことの主張と証拠の提出が必要となり,通常の場合,法定充当計算 に異議を述べない場合が多いので,実務上法定充当計算をすればいいという場合が多 いのです。
 
 
二 元本組み入れ
 
1 未払いの遅延損害金に利息金はつきません。重利,複利となるからです。
2 しかし, 
 
 
二 本計算書の機能
 
 1 一の1に記載したような計算をかんたんにします。
 2 支払い催告をした翌日,その他の任意の日から遅延損害金加算も簡単にできます。 3 遅延損害金の計算は裁判所債権執行部採用の端数期間暦年計算方法を採用していま  す。
   訴訟において使用する場合のことを考えているのです。
   端数期間暦年計算方法
   年単位の年利計算であって,単位年未満の端数期間については,平年に属する日は  年を365日とし,閏年に属する日については年を366日として計算する方法です。
   この遅延損害金欄には計算式として(元金×利率÷100+×(単位年数+平年端 数日数÷365+閏年端数日数÷3366)と小数点以下切り捨て処理の数式)を組み 込んでいます。
   いずれも年単位遅延損害金,平年端数日数遅延損害金及び閏年端数日数遅延損害金  を合計した後に小数点以下を切り捨て処理しています。
 4 遅延損害金計算なので約定弁済日の翌日から遅延損害金を計算します。 
 5 完済の有無を右の欄外に表示します。
   最初の未弁済のところには「未弁済」という表示がなされ,それ以降の未弁済のと  ころには「全額未弁済」という表示がでます。但し,全額未弁済であっても,未弁済  表示と連続していない行の場合には「未弁済」という表示がでます。
 6 未弁済ないし全額未弁済欄には弁済不足金額が欄外に表示されます。
 7 このように遅延損害金加算選択も可能な滞納賃料充当計算書は他にはないのかもし  れません。
 
三 あれば喜ぶ人々
 
 1 不動産賃貸業の方
  ・・賃貸賃料,水道光熱費などの管理や計算が簡単にできます。
  ・・賃貸契約書に賃料不払いの場合の遅延損害金支払い条項を定めておけば,未払い   賃料の遅延損害金の支払いを求めることもできます。
  ・・通常,滞納賃料について,遅延損害金の支払いまで求めることは少ないでしょう。
   しかし,「滞納を継続すれば遅延損害金も請求します」と伝え,滞納賃料の支払い   を促すことには意味があるでしょう。
 
 2 不動産業の方
 ・・不動産業の方は,不動産賃貸人の方の依頼を受け,賃貸不動産の管理をされること  が多いでしょう。このような場合に,賃料などの管理に便利です。
 ・・物件毎に,賃借人毎に計算を保存,管理できます。
 
 3 不動産訴訟を担当する弁護士の方
  ・・未払い賃料計算がかんたんにでき,未払い賃料支払い催告の内容証明の送付に便   利です。
  ・・「何月分」の「何円」から未払いであるとかんたんに計算できます。
 
 4 マンション管理組合の方・その他
  ・・マンション管理組合の方が、共益費として管理費用を請求する場合に,未納の区   分所有者に請求する場合、或いは区分所有者が賃貸している場合には,その賃料を   差し押さえる場合に有力です。
 
 
四 多様な用途
 
 1 月間賃料,水道代,駐車場代などの延滞計算が,一括で可能です。
 2 弁済を受けたお金を約定支払い日の古い分の賃料などに自動的に充当計算する。こ  れについて遅延損害金を加算選択することも任意に選択できます。
 3 全額充当(完済)と一部充当(未完済)などの別が表示されます。未払い賃料など  の起算月(未払いが始まった月)及び未払い金額(不足金額)などが表示されます。
 4 延滞賃料などの分割弁済計算など。定額支払い金額に延滞利息金加算計算も簡単に  できます。
 5 賃料などの債務弁済,残金状況の整理,把握 
  イ 債務者の氏名別に計算書の名前を付けて保存し,継続的に債務状況の整理と把握   に利用できる。
  ロ 遅延損害金の加算も簡単に計算できる。
  ハ 遅延損害金加算をした場合の金額を算出し,早期の弁済を促す手段のひとつとし   て利用可能です。
 
 
 
第三 内容証明郵便などの書き方1
 
一 未払い賃料などの支払い催告が必要な理由を考えてみましょう。
 以上の法律と計算ソフトを,参考に実践してみましょう。
 
 1 賃料未払いがある場合,あまり放置するとよくありません。
   賃料滞納金額が多くなると,相手も毎月の賃料にあわせて賃料滞納金額が加算され  いよいよ支払いが困難になっていくからです。
   そこで,2ケ月以上の滞納はさせないようにするとともに,2ケ月以上の滞納が   ある場合には,強く支払いを求め,3ケ月分以上の滞納となった場合には,契約解除  という方法を準備,選択すべき場合が多いでしょう。
 2 賃料未払いがある場合,一度は必ず,催促・催告する必要があります。
 
  イ 賃料の未払いが継続した場合,賃貸借契約を解除するという方法がありますが,   この賃貸借契約を解除するためには,その前提として,未払い賃料について支払い   の催告をしておく必要があるのです。
 
  ロ 賃貸借契約書には,「賃料不払いがあった場合,催告せずに契約を解除できる」   という条項があるのが一般的です。
    しかし,「このような条項は効力がない」と理解して下さい。前に述べた賃借人   に不利益な条項の無効規定が生きてくるからです。 
 
   賃貸借契約条項では,次の如く規定していることが多いのですが,
   「賃料不払いがあった場合には,催告なくして契約を解除できる」
   「賃料を2ケ月分滞納した場合は,契約は解除となる」
   しかし,いずれの条項も,効力はない。
   あらためて,支払いの催促・催告をする。
          ↓
   賃借人がそれでも支払わない。
          ↓
   契約の解除ができるようになる。
 
 
  ハ 未払い賃料の催促・催告は不可欠です。必ず催告することが大切です。
 
  ニ 極めて例外として長期間の賃料未払いが継続してきた場合には、あらかじめ催告   が不要な場合もあります。このような場合には、賃貸借の継続が不可能な信頼関係   が破壊されたとして,いきなり解約解除ができる場合もあります。
 
 
 
3 未払い賃料の催告・催促をする場合の最低限度の知識です。
 
 イ 口頭 10点(/100点満点) 
 
    口頭でした場合には,いつ,どこで,誰に,どのような表現で,催促したのか,   相手がどのように回答したのかをメモに残しておきましょう。
 
    将来,未払い賃料について催促・催告をしたか否かが問題となることがあります。   口頭で催促したという記憶だけでは,心もとないこととなります。日記に記載する   のもいいでしょう。なんでもいいですから,メモを残しておくのです。このメモが   将来問題となった場合に証拠となります。
   「メモなんかが証拠になるのですか」,と質問される場合があります。日本の民事   訴訟法ではメモでも立派な証拠となるのです。
 
 
   口頭 → 記憶曖昧,証拠なし → 相手否定 → 立証に困る
 
 
 ロ 普通郵便 50点(/100点満点) 
 
   普通郵便で催促の書面を送付する場合には,かならず催促状の写し,コピーを残し  ておきましょう。  
 
   写し,コピーを残す理由はイで記載したのと同様の理由です。
   将来,紛争となるかしれない相手方に書面などを交付する場合,その写し,コピー  を残すということは不可欠です。しかし,このように写しを残すということに気づか  ない人が多いようです。注意をしましょう。
 
 
   普通郵便 → 配達の記録,証拠なし → 相手否定 → 立証に困る
 
 ハ 配達証明付き書留郵便 70点(/100点満点)
 
   内容証明郵便というような方法で,最初から喧嘩をするような方法での催促はした  くはない。しかし,普通郵便だと,将来,相手から「受領していない」と言われたら  困る,というような場合に用いる方法です。 
   配達証明付きの書留郵便なので,相手に書留郵便を配達したことの証明を受けるこ  とができます。「配達したことの証明の葉書」が郵便局から送付されてきます。
   しかし,その配達したことを証明する葉書は,書留郵便を配達したことを証明して  くれても,どのような書面を,どのような内容の書面を配達したかということについ  ての証明はしてくれません。「何か」を配達したということだけの証明です。「何を」  配達したとうことの証明はないのです。
 
   従って,この配達証明付き書留郵便の場合には,写し,コピーを保存しておいて,  その写しを送付したことをあなた自身が言葉で説明しなければなりません。
 
   また,この方法は,通知書とともに,他の書面などを添付して送付する場合にも使  用されます。
 
 
   配達証明付き書留郵便 →配達の中身の記録,証拠なし→相手否定→立証に困る(   但し,実務上は,それほど困らない場合も少なくはない)
 
 ニ 内容証明郵便 100点(/100点満点)
  1 内容証明郵便は
 
   イ 「相手に配達した」こと
   ロ 「配達した書面の内容,中身」まで,証明してくれます。
    従って,書面により相手になんらかの意思を伝えたことの証明としては,十分な    ものです。
 
  2 差し出し方法
 
   a 同じ文面の書面を3通作成して,郵便局に持っていく。
   b 宛名,差出人氏名の記載した封筒1通も一緒に郵便局に持参する。
   c 3通のうちの1通に,郵便手数料金額相当の郵券(切手)を貼り付ける。
   d 郵券を貼り付けた1通,貼り付けていない2通,そして封筒を一緒に窓口で渡    します。
 
   e 郵便局は
    ・・郵券を貼り付けた1通を保管し
    ・・1通を相手方に送付し
    ・・もう1通に,発信したことの証明をして,返還してくれます。
    ・・そして,相手に配達した後,配達した日付を記載した葉書を郵送してくれま     す。
 
   f 「郵便局から返還を受けた発信証明付きの書面」と郵便局から後日郵送される    「配達証明の葉書」をセットにすれば,相手に書面を送付したことが証明される     こととなるのです。 
 
    「郵便局から返還を受けた発信証明付きの書面」
    「配達証明の葉書」
    書面郵送の証拠
 
  3 内容証明郵便の約束ごと
 
   イ 内容証明郵便は,上記のとおり,発信した書面の内容まで証明してくれること    から,内容証明の書面には,「字数などの制限,約束ごと」があります。
 
   ・ 一行の字数は,20字まで(行数20行)まで。
   ・ 一枚の行数は,26行まで(字数26字まで)。
   ・ 句読点は,一字と数える。
 
   ・ 内容証明原稿本文の,発信人の住所,氏名・相手の住所,氏名と封筒の発信人,    相手方の記載は全く同一でなければいけません。
 
   ・ 発信人の氏名欄下部に,押印をしなければなりません。
   ・ 内容証明原稿が二枚以上になった場合,割印を押印しなければなりません。
  
   ロ 弁護士事務所では,通常,上記のような字数制限,行数制限については,一太    郎やWord文書の書式設定で,内容証明どおりの書式設定をしておき,このスタ    イルの書式を利用して内容証明原稿を作成します。
     そんなに難しいことではないので,一度,試してみて下さい。
 
   ハ PCなどをお持ちでない場合には,上記のような字数制限を数えながら,原稿    を作成するか,又は文具店で内容証明用の罫紙を購入して原稿を作成してみて下    さい。 
 
 
 
第四 内容証明郵便などの書き方2
 
 一 内容証明など賃料催促/催告の書面を作成するについて,注意すべき事項を挙げて  みます。
 
  イ 「誰が」,「どういう立場で」書面を出すのかということを書面の上ではっきり   と記載する。
 
  ・・例えば,「あなたに後記物件目録記載の建物を賃貸しております」・・・・
 
   このような表現があれば,建物の賃貸人として,書面をだしていることが明確とな  ります。
 
  ロ 「どの建物ないし土地について」書面をだしているのかということを書面の上で   はっきりと記載する。
 
  ・・例えば,「あなたに後記物件目録記載の建物を賃貸しております」・・・・
 
   このような表現があれば,後記物件目録記載の建物に関して,書面をだしているこ  とが明確となります。
 
  ハ 土地建物の表示には二種類のものがあります。
  (住居表示などによるもの)
    通常,賃貸借契約書に記載されている土地建物の表示です。
  (土地建物の登記簿謄本の表示によるもの)
    登記簿謄本の表示どおりに記載するものです。
 
  ・・素人の方の記載されるものは,「住居表示によるもの」が多いようです。
  ・・他方,弁護士らが記載するものは,殆どすべてが「登記簿謄本の表示」を採用し   ているようです。
 
   将来,訴訟に発展する可能性を考えると,登記簿謄本の表示を採用しておくのが無  難です。
   もちろん,住居表示と登記簿謄本の表示を併用,並列記載するのもいいでしょう。
 
 
   物件目録
  (住居表示)の例
  大阪市北区西天満5丁目16番3号
  (登記簿上の表示)の例
  大阪市北区西天満5丁目16番地3号
 
   というような形式で物件目録を記載するのです。
 
 
 
 二 内容証明の文例(見本)
 
  1 建物(土地)賃貸借契約の場合
 
   イ 賃料当月末日払いの約束の場合
 
     あなたに対し,後記物件目録記載の建物(土地)を,毎月末日限り,当月分賃    料10万円を振り込み送金して支払うとの約定で賃貸しておりますところ,あな    たは平成18年5月分以降の賃料を支払っておられません。
     本書面到達の日から7日以内に,未払い賃料合計30万円を,下記口座に振り    込 み送金して支払われるよう催告致します。
     上記期限内に支払われない場合には,上記期間の経過を停止期限として,本賃    貸借契約を解除致します。
 
   (物件目録)
*******
              平成20年8月5日
山田 太郎
    山川一郎殿
 
 
   ロ 賃料前払いの約束の場合
 
    あなたに対し,後記物件目録記載の建物(土地)を,毎月末日限り,翌月分賃料   10万円を振り込み送金して支払うとの約定で賃貸しておりますところ,あなたは   平成18年5月分以降の賃料を支払っておられません。
    本書面到達の日から7日以内に,未払い賃料合計30万円を,下記口座に振り込   み送金して支払われるよう催告致します。
    上記期限内に支払われない場合には,上記期間の経過を停止期限として,本賃貸   借契約を解除致します。
 
   (物件目録)
*******
              平成20年8月5日
山田 太郎
   山川一郎殿
 
  2 上記文例の分解説明
 
   イ 上記文例の表現では
    ・ 山田太郎が山川一郎に,建物(土地)を賃貸していることが表現されている。
 
   ロ 上記文例の表現では
    ・ いつまでに,賃料を支払う約束となっているかが表現されている。
 
   ハ 上記文例の表現では
    ・ 月額賃料の金額が表現されている。
 
   ニ 上記文例の表現では
    ・ 賃料の支払い方法が表現されている。
 
   ホ 上記文例の表現では
    ・ 未払い賃料合計金額が表現されている。
 
   ヘ 上記文例の表現では
    ・ 支払い催促をしている金額が表現されている。
 
   ト 上記文例の表現では
    ・ 支払い催促の期限が表現されている。
     催促状を受領した日から7日以内と。
   ロ 賃料前払いの約束の場合
 
  3 上記のように
   賃貸人と賃借人の氏名
   賃借対象物件の表示
   月額賃料金額
   約定支払い方法
   未払い賃料金額
   支払い催促の期限
    が記載されていると,賃料支払いの催促,催告として,必要な事項が網羅されて   いることとなり,催促状,催告状として問題はないこととなります。
 
 
  4 特殊な定型文言=「上記期間の経過を停止期限として」,「賃貸借契約を解除す   る」
 
   イ 上記内容証明のひな形には,「上記期間の経過を停止期限として,賃貸借契約    を解除する」という,耳慣れない表現,が用いられています。
 
   ロ これは定型的に使用する表現というように理解して下さい。 
 
   ハ 既にお話したとおり,賃料の不払いを理由として賃貸借契約を解除する場合
   ・ まず,不払い賃料を支払うように催促,催告し
   ・ それでも支払わない場合には,契約の解除ができることとなっています。
 
     滞納賃料支払いの催促,催告
        ↓
     契約の解除
 
   ・ 上記のように二段階の手続きを必要とするということとなれば,
     滞納賃料支払いの催促,催告の意思表示=内容証明
         ↓
     契約の解除=内容証明
    というように二回の内容証明郵便を送付する必要があることとなります。
 
   このように2回も内容証明郵便を送付する煩わしさを省略するための表  現が,この表現なのです。
 
   「本書面到達の日から7日以内に,未払い賃料合計30万円を,下記口座に振り込   み送金して支払われるよう催告致します」
   支払い催促,催告の書面を受け取った日から,7日以内に,未払い賃料を支払うよ   うに催告しています。 
 
   「上記期限内に支払われない場合には,上記期間の経過を停止期限として,本賃貸    借契約を解除致します」
   書面を受け取った日から7日を経過したときに,契約解除の意思表示をする旨通知   しています。
 
    法律的な表現で難しいかもしれませんが,「契約解除の意思表示は7日が経過す   るまで(停止する)しない」,ということは「7日が経過した日に契約解除の意思   表示をする」ということです。
 
   「滞納賃料支払いの催促,催告の意思表示をする」
   とともに
   「受け取った日から7日経過した日に契約の解除の意思表示をする」
   とふたつの意思表示をしているのです。
 
  ニ 7日経過後に,2回目の契約解除の意思表示がなされても,その7日の期間内に   賃借人が未払い賃料を催促,催告に従って支払っていれば,解除の意思表示をして   も,解除の効果が発生せず,無駄な結果となり,逆に,その7日の期間内に賃借人   が未払い賃料を催促,催告に従って支払っていなければ契約解除の効果が発生する   という関係になるのです。
 
  ホ 2回の意思表示,内容証明の送付が煩わしいので,上記のような定型   文言を使用するのです。
 
     注意書き−このような「書面を受け取った日から7日以内に支払え。7日経過    した日に契約を解除する」という表現について,契約解除の条件(法定条件)を    記載したものであると説明される学者もいます。
      これは,明らかな誤りです。
     契約解除の意思表示による契約解除の効果の発生する法定の前提条件が「催告    しても支払わない」ことであることは異論はないところであり,「法定の条件は    意思表示など法律行為の付款とはなり得ない」のです。 
 
 
 
第五 賃料未払いの期間と契約解除など
 
  一 契約解除が認められる要件など
 
  1 賃料の支払いは賃貸借契約の中心であり,賃料を支払わない賃借人を保護する必   要性はないと言ってもいいのかもしれません。
 
  2 しかし,人間にはちょっとした過ち,勘違いなどがあります。支払いを忘れてい   たとか,支払ったと勘違いしていたとか,何らかの偶発的な事情により支払い約束   の日に支払うことができなかった場合とか,いろいろあります。
 
    このような場合にまで,人間の生活の本拠でもあり得る賃借物件からの退去や明   け渡しを認めるのは酷な場合もあります。
    このような理由から,賃料の不払いにより,賃貸人と賃借人との間の賃  貸借契約を継続することが困難な事情が認められるに至った場合には賃貸  借契約の解除が認められ,そのような事態にまでなっていないと認められ  る場合には賃貸借契約の解除は認められないこととなります。
 
  3 先ほど説明しましたように「賃料の支払いは賃貸借契約の中心」であることから,   少なくとも3ケ月分以上の賃料を滞納したような場合には,賃貸借契約の解除は認   められることとなるでしょう(賃料の滞納が3ケ月分以内であったら,賃貸借契約   の解除が認められないという意味ではありません)。
 
  4 このような理由から,賃貸借契約解除という強行手段をとるのは,賃   料滞納期間が概ね3ケ月以上となった場合と考えていいでしょう。
 
 二 契約解除という強行手段採用の時期
 
 1 一記載の理由などから,契約解除というような手段を採用するのは滞納が概ね3ケ  月以上となった場合ということとなります。
 
 2 滞納が1ないし2ケ月の場合には,支払いの催促,ないし催告にとどめておくのが  無難ということになります。
 (もちろん,1ないし2ヶ月分の賃料滞納を反復している場合には,場合により,信頼  関係を破壊したものとて,賃貸借契約の解除が認められる場合もあり得ます)
 
 
 
第六 付録計算書の入力,使用方法など
 
 一 マクロ使用の設定
 
  1 付録の計算プログラムは,いずれもマクロを使用しています。
   従って,お使いのエクセルで,マクロの使用ができる設定をして頂かないと,本計   算書は作動しません。
 
  2 利用上のご注意
 
   イ WindowsXP でエクセルをご利用になると「マクロに証明機関の証明書・・・」    等のメッセージが表示されて,ご利用できない場合があります。
    これは,エクセルの初期設定としてマクロを使用できないように設定されている    ためです。
     一方,当該計算書ではマクロを利用しております。このため,ご利用になるエ    クセルでマクロを利用できるようにしていただく必要があります。
   ロ 次の手順で,エクセルでマクロを利用できるようにすることができます。
   (1)まず,エクセルを起動して下さい。
   (2)画面の上部に「ファイル 編集 ・・・」といったメニューバーが並んでい     ると思います。
   (3)ここの「ツール」から「オプション」を選んで下さい。そうすとる小窓が開     くと思います。
   (4)この小窓の中の右側上部を見ていただくと「セキュリティ」というタグがあ     ると思いますので,これをクリックして下さい。
   (5)それで表示されたものの下部に「マクロセキュリティ」というボタンがある     と思います。このボタンを押して下さい
     ここで表示される「セキュリティレベル」が「高」になっていると思われます。    (6)この「セキュリティレベル」を「中」にして,OKボタンを押して下さい。
     これで,お使いのエクセルでマクロが利用できるようになります。
 
 二 使用方法
 
  1 PCに収録された計算書をダブルクリックして下さい。
  2 マクロを有効にするか否かを問うダイアログが表示されますので,「マクロを有   効にする」をクリックして下さい。
  3 表紙にあるボタンをクリックすると計算書が開きます。
  4 入力方法(サンプル入力を参考にして下さい)
   イ 入力する場所は,白地のセルの部分です。
   ロ 着色したセルの部分は入力できません。
   ハ 入力する数値の入力方法は,サンプル入力例を参考にして下さい。
   ニ 各種入力補助ボタン
    ・ 削除・・・入力された数値を津削除,抹消します。
    ・ 表紙・・・計算書の表紙に戻ります。
    ・ 閉じる・・計算書を閉じます。
    ・ サンプル・サンプル数値を自動入力します。
    ・ 利率・・・サンプル利率を自動入力します。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
第七 以下では、訴状の中でよく利用される事例を記載しています。
 
 第1事例 説明,賃料請求の訴状は,比較的簡単なものを事例として参照して下さい。
 
訴  状(賃料)
平成  年  月  日
 
大阪簡易裁判所 御中
                          山  田  太  郎   ,
 
               当事者の表示
(送達場所)
〒   −    
   市       丁目  番  号
原告    山  田  太  郎
                       電 話
                       FAX
〒   −    
   市       丁目  番  号
被告    山  川  一  郎
 
賃料請求事件
訴訟物の価額 金600,000円
貼用印紙額    金6,000円
 
               請求の趣旨
1 被告は原告に対し,金60万円及びこれに対する平成 年 月 日か ら支払 済まで年6分の割合による金員を支払え
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。
 
請求の原因
1 当事者 (1)原告は,貸屋建物を賃貸宿の目的とする貸主業者である。(2)被告は,借家人である。
2 原告と被告間の賃貸借契約を締結したのは,平成20年1月15日である。
3 契約の内容 原告を貸主とし,被告を借主とする@項記載の貸屋物件を目的とする賃貸借契約である。
    @物件 大阪市北区西天満1−2−3 西天満マンション123号
    A賃貸期間 2年
    B賃料(共益費を含む)月額10万円
    C賃料の支払方法 毎月末日限り当月分を支払う。
 (3)連帯保証人
4  原告は,被告に対し,3@の物件を引き渡した。
5(1)賃料等の合計額金60万円(平成20年5月分から同年10月分まで6ヶ月分)
 (2)支払済みの額    0円
 (3)残額(延滞賃料等の合計額)は、金60万円である。
6 よって,原告は,被告に対し,請求の趣旨のとおり、賃料請求権に基づき,未払賃料 合計60万円及びこれに対する毎月の賃料債権の支払期限である月末の翌日から支払済 まで商事法所定の年6分の割合による損害金の支払を求める、本件訴訟を提起する。
 
証拠方法
1 甲第1号証(賃貸借契約書)
添付書類
1 建物登記事項証明書
1 甲号証写し                    各1通
 第2事例 同じく簡単な建物明渡しの事例です。
   建物登記事項証明書は,原告が貸屋を所有していることを証明するものであり,必  ず必要です。
   建物評価証明書は,貼用印紙額算定上必ず必要です。
 
 
訴  状(建物明け渡し)
 
平成  年  月  日
 
大阪地方裁判所 御中
                          山  田  太  郎   ,
 
               当事者の表示
(送達場所)
〒   −    
   市       丁目  番  号
原告    山  田  太  郎
                       電 話
                       FAX
〒   −    
   市       丁目  番  号
被告    山  川  一  郎
 
賃料請求事件
訴訟物の価額 金         円
貼用印紙額  金         円
 
               請求の趣旨
1 被告は原告に対し,別紙物件目録記載の建物を明け渡し,かつ金30万円を支払え。
2 被告は原告に対し平成18年5月1日から建物明渡済みまで1ヶ月金10万円の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに第1,2項につき仮執行の宣言を求める。
 
請求の原因
1 原告は別紙物件目録記載の建物を所有しているところ,被告との間で次のとおりの約定により平成  年  月  日賃貸借契約を締結した(甲1)。
 @賃貸物件 大阪市北区西天満1−2−3の建物 
 A賃貸期間 2年
 B賃料(共益費を含む)月額10万円
 C賃料の支払方法 毎月末日限り当月分を支払う。
 D保証金と返還金額                         
2 被告は平成20年5月1日以降の賃料を全く支払わない。そこで原告は同年8月5日付内容証明郵便をもって同年5月より10月までの延滞賃料合計30万円を郵便到達後7日以内に支払われるよう催告し,期間内に支払われない場合は,本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をなし,郵便は同年8月7日被告に到達した(甲2)。
3 ところが,被告は,催告期間内に延滞賃料の支払をしなかったので,本件賃貸借契約は,同月14日の経過をもって解除されたのであるが,被告はその後も本件建物を明け渡さないまま現在に及んでいる。
4 よって,原告は被告に対し,請求の趣旨記載の請求に及び本件訴訟を提起する。
 
               物件の表示
1 所  在  大阪市北区西天満一丁目2番地
  家屋番号
  種  類
  構  造
  床面積
証拠方法
1 甲第1号証(賃貸借契約書)
2 甲第2号証(賃貸借契約を解除した旨の内容証明付通知書)
 
添付書類
1 建物登記事項証明書
2 建物評価証明書
3 甲号証写し                    各1通
 第3事例 同じく簡単な建物の収去及び土地明渡しの事例です。
 
 
訴  状(建物収去・土地明け渡し)
 
平成  年  月  日
 
大阪地方裁判所 御中
                          山  田  太  郎   ,
 
               当事者の表示
(送達場所)
〒   −    
   市       丁目  番  号
原告    山  田  太  郎
                       電 話
                       FAX
〒   −    
   市       丁目  番  号
被告    山  川  一  郎
 
賃料請求事件
訴訟物の価額 金         円
貼用印紙額  金         円
 
               請求の趣旨
1 被告は原告に対し,別紙物件目録記載2の建物を収去し,別紙物件目録記載1の土地を明け渡せ
2 被告は原告に対し,金60万円及び内10万円については平成18年6月1日から支払済みまで、内10万円については平成18年7月1日から支払済みまで、内10万円については平成18年8月1日から支払済みまで、内10万円については平成18年9月1日から支払済みまで、内10万円については平成18年10月1日から支払済みまで各々年6分の割合による金員を支払え。
3 被告は原告に対し平成18年11月1日から明渡済みまで1ヶ月金10万円の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに第2及び3項につき仮執行の宣言を求める。
 
請求の原因
1 原告は別紙物件目録記載の土地を所有しているところ,被告との間で次のとおりの約定により昭和  年4月1日建物所有を目的として土地賃貸借契約を締結した(甲1)。
 @賃貸物件 大阪市北区西天満1−2−3の土地 
 A賃貸期間 10年
 B賃貸月額 10万円
 C賃料の支払方法 毎月末日限り当月分を支払う。
 D解約解除の事由 賃料不払いを停止条件とする。
 D保証金と返還金額                         
2 被告は平成18年5月1日以降の賃料を全く支払わない。そこで原告は同年8月5日付内容証明郵便をもって同年5月より10月までの延滞賃料合計30万円を郵便到達後
7日以内に支払われるよう催告し,期間内に支払われない場合は,本件賃貸借契約を解除する旨の意思表示をなし,郵便は同年8月7日被告に到達した。
3 ところが,被告は,催告期間内に延滞賃料の支払をしなかったので,本件賃貸借契約は,同月14日の経過をもって解除されたのであるが,被告はその後も本件建物を収去せず,現在に至るまで居住し続けている。
4 よって,原告は被告に対し,請求の趣旨記載の請求に及び本件訴訟を提起する。
 
               物件の表示
1 所  在  大阪市北区西天満一丁目
  地  番
  地  目
  地  積
 
2 所  在  大阪市北区西天満一丁目2番地
  家屋番号
  種  類
  構  造
  床面積
証拠方法
1 甲第1号証(土地賃貸借契約書)
2 甲第2号証(賃貸借契約を解除した旨の内容証明付通知書)
 
添付書類
1 土地登記事項証明書
2 建物登記事項証明書
3 土地評価証明書
4 建物評価証明書
5 甲号証写し                    各1通
 第4事例 賃料計算ソフトを利用した建物の収去及び土地明渡しの事例です。
別紙計算書を参考に皆さん頑張って下さい。
 
訴状
 
平成20年8月15日
 
大阪地方裁判所   御 中
 
                原告訴訟代理人
弁 護 士    
建物等明渡等請求事件
 
訴訟物の価額   金11,000,000
貼用印紙額   金    56,000
 
請求の趣旨
3 被告S・Tは,原告に対し,別紙物件目録記載1の建物を明け渡せ。
4 被告S・Tは,原告に対し,別紙物件目録記載2の土地を明け渡せ。
5 被告らは,連帯して原告に対し,平成20年7月1日から別紙物件目録記載1の建物及び同目録記載2の土地の明渡済に至るまで,1か月につき47万2500円の金員を支払え。
6 被告らは,連帯して原告に対し,2,411,432円及びこれに対する平成20年7月1日から支払済まで,年6分の割合による金員を支払え。
7 訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決並びに第3及び4項につき仮執行の宣言を求める。
 
第1 被告S・Tについて
1 被告S・Tとの契約
(1)原告会社は,不動産賃貸等を業とする株式会社である。
原告会社は,別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)及び別紙物件目録記載2の土地(以下「本件土地」という。)について,訴外所有者K(株)(以下「訴外K」という。)より賃借し,引渡しを受け,転貸を許されていた(甲3,第2条参照)。
原告会社は,平成12年9月4日,被告S・T(以下「被告S・T」という。)に対し,本件建物を次のとおりの約定で賃貸し,同10日引き渡した(甲3)。
(2)賃貸借契約の内容
@ 目的物  本件建物(但し,1階及び2階の契約面積は変更している)及び駐車場用地として本件土地を使用している。
A 賃料  月額金47万2500円(消費税含む)
B 賃貸借期間  平成12年10月1日から平成17年9月30日までの5年間とし,さらに3年毎に更新される。
C 賃料支払期  毎月末日に翌月分を賃貸人の指定する口座に振込みする方法で支払う。
D 解約条項  賃貸人及び賃借人は6か月前に各相手方に通知することにより契約を解除できる。
賃借人が賃料を2か月分以上怠った場合には,賃貸人は賃借人に催告をしたうえ契約を解除できる
E 連帯保証  被告S・Tの原告に対する債務について,被告S・K(以下被告S・Kという)は,連帯して保証をした。
2 被告S・Tの債務不履行と賃貸借契約解除等
(1)賃料不払
被告S・Tは,平成14年から慢性的な賃料の支払を怠りを継続していた(甲4の1)。
原告会社は,被告S・Tに再三催告しているが,被告S・Tの不払賃料額は,平成20年3月24日の時点で約5ヶ月分合計2,382,294円であったが,同年7月1日時点では延滞賃料及び損害金合計では2,411,432円になっている(別紙物件目録記載の延滞家賃計算書のとおり−以下延滞家賃計算書という)。
原告会社は,被告S・Tに対し,平成20年3月25日付内容証明郵便を以て延滞賃料1,719,438円(延滞損害金を含まない)の支払を催告し,請求に応じない場合は平成20年6月30日限り本件賃貸借契約を解除する旨の通知をした(甲4)。上記通知書は3月26日に被告S・Tに送達された。
尚,甲4を作成した際には,延滞賃料に対する各損害金を参入していないので,督促金額に相違がある。
(2)仮定主張としての無催告解除
前述のとおり,本件賃貸借契約の解除については催告を要する旨の規定がある。しかし,被告S・Tは既に2か月分以上の賃料支払を怠っている。さらに,被告S・Tは,原告会社からの通知を受領したが,被告S・Tは延滞家賃計算書のとおりの支払をしたのみであり,このような行為は本件賃貸借契約における信頼関係を完全に破壊するものである。
8 よって,原告会社は,被告S・Tらに対し,本件建物の賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権としての明渡請求権に基づき,別紙物件目録記載1の建物及び同目録記載2の土地の明け渡しを,請求の趣旨第1項及び第2項記載のとおりの判決を求めるとともに,被告らに対し延滞家賃計算書の不足金額欄による賃貸借契約による賃料請求権及び目的物返還債務の履行遅滞に基づく損害賠償請求権に基づき支払済まで商事法の年6分の割合による金員(延滞家賃計算書の遅延損害金欄記載の損害金を求めるために,平成20年7月1日から別紙物件目録記載1の建物及び同目録記載2の土地の明渡済に至るまで,請求の趣旨とおり支払いの判決を求める
 
 
証拠方法
1 甲第1号証   不動産登記事項証明書(建物)
2 甲第2号証   不動産登記事項証明書(土地)
3 甲第3号証   建物賃貸借契約書
4 甲第4号証の1 賃貸借契約の解除通知書
5 甲第4号証の2 郵便物等配達証明書
 
証拠方法
1 甲各号証写     各1通
2 現在事項全部証明書      1通
3  固定資産評価証明書  1通
4 訴訟委任状      1通
当事者目録
 
(送達場所)
〒   −    
   市       丁目  番  号
原告    株式会社 山  田  商  社
                       電 話
                       FAX
(送達場所)
〒   −    
   市       丁目  番  号
被告    S  ・   T
(送達場所)
〒   −    
   市       丁目  番  号
 
 
被告    S  ・   K
 
 
 
 
 
物件目録
 
 1  所在  大阪府大阪市北区三丁目111番地1
    家屋番号   111番1
   構造  鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺3階建
   床面積  1階 160.84平方メートル
          2階 148.35平方メートル
          3階 152.08平方メートル
   但し,別紙建物1階平面図のイ・ロ・ハ・ニ・ホ・イの各点で囲まれた部分    約108.58平方メートル
及び別紙建物2階平面図のイ・ロ・ハ・ニ・ホ・ヘ・イの各点で囲まれた部分    約106.04平方メートル
 
 2  所在  大阪府大阪市北区三丁目111番地1
    地   番  1111番1
地   目  宅  地
地   積  282.69平方メートル
    但し,別紙土地測量図のイ・ロ・ハ・ニ・イの各点で囲まれた部分
      約172.47平方メートル            
 
 先取特権により,差押えにより共益費及び管理費等が回収できます。
 
 一 共益費・管理費等の債権では訴状なしで,差押えができる場合がありま  す。
 1 建物の区分所有等に関する法律第七条の先取特権によるのです。
   建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年四月四日法律第六十九号)では,以  下の規定であります。
 (先取特権)
  第7条  区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属     施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に     基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共     用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上     に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつ     き区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
    2  前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特      権とみなす。
    3  民法 (明治二十九年法律第八十九号)第三百十九条 の規定は、第一項の先     取特権に準用する。
   この先取特権は,民事執行の手続きに従い,実行をします。つまり,訴状を省   いて,いきなり強制執行ができるのです。
    そのかわり先取特権をの存在を証明する文書がいります。下記の債権差押命令申   立書に記載しているような添付資料がないと,裁判所は差押の決定をしませんので,   注意して下さい。
 
 第5事例 訴訟を提起せずに,先取特権により差押えが可能な事例です。債権者が管      理組合等限られますが,債務者が第三者に賃貸借している賃料から回収する      方法です。
 
債権差押命令申立書
(区分所有建物における共益費・管理費等債権に基づく一般先取特権)
 
                          平成20年8月15日
 
大阪地方裁判所 第○○民事部 御中
 
             申立債権者 ABマンション管理組合
                   代表者代表理事 C  (印)  
                   Tel 06(xxxx)xxxx
                   Fax 06(xxxx)xxxx
当事者
担保権・被担保債権・請求債権  別紙目録のとおり
差押債権
債権者は、債務者に対し、別紙担保権・被担保債権・請求債権目録記載の債権を有しているが、債務者がその支払をしないので、別紙担保権目録記載の一般先取特権(共益費等の債権)に基づき、債務者が第三債務者に対して有する別紙差押債権目録記載の債権の差押命令を求める。
添付書類
1 平成X年度ABマンション管理組合定時総会議事録(写し)
2 ABマンション管理規約(写し)
3 滞納共益費・管理費明細
 
 
当事者目録
 
   市       丁目  番  号
債権者ABマンション管理組合
代表者代表理事 C
                       電 話
                       FAX
〒000−0000 △□市□□区××町6丁目   番   号
          債務者         D
 
〒000−0000 ○○市△△区○○町X丁目   番   号
第三債務者       E
 
担保権・被担保債権・請求債権目録
 
1 担保権
  ABマンション管理規約第○○条第○項が定める、月5,000円の共益費及び同規 約第○○条第○項が定める、月4,000円の管理費、並びに同規約第○○条第○項が 定める毎月末日払いの約定による債権者が債務者に対して有する共益費・管理費債権に 基づく一般先取特権
2 被担保債権及び請求債権
(1) 残元金 金54万0000円
      債権者の債務者に対する共益費・管理費債権にして、平成××年○月        分から平成△△年○○月分(60ヶ月分)までの未払分の合計額
  (2) 執行費用 金7360円
      (内訳)
      本申立手数料               金4000円
      本命令送達料               金2360円
      本申立書作成・提出費用          金1000円
合計 金54万7360円
 
差押債権目録
 
金54万7360円
 
 ただし、債務者が第三債務者に対して有する本命令送達日以降支払期の到来する下記建物の賃料債権にして、支払期の早いものから頭書金額に満つるまで。
 
(一棟の建物の表示)
所    在 ○○市△△区○○町X丁目3番地
建物の名称 ABマンション
(敷地権の目的たる土地の表示)
土地の符号 1
所在及び地番 ○○市△△区○○町X丁目3番
地    目 宅地
地    積 800.91平方メートル
(専有部分の建物の表示)
家屋番号 ○○町X丁目3番の1001
建物の名称 1001
種    類 居宅
構    造 鉄骨鉄筋コンクリート造1階建
床面積 10階部分 60.26平方メートル
(敷地権の表示)
土地の符号 1、 敷地権の種類 所有権、敷地権の割合 ○分の△
第三債務者に対する陳述催告の申立書
 
                          平成  年  月  日
 
○○地方裁判所 第○○民事部 御中
 
                  申立債権者 ABマンション管理組合
                  代表者代表理事   C (印)
 
         当事者の表示 別紙目録のとおり
 
 本日、御庁に申し立てた上記当事者間の債権差押命令申立事件について、第三債務者に対し、民事執行法第147条第1項に規定する陳述の催告をされたく申し立てる。
 第6事例 同じく簡単な売掛金事例です。
 
 
訴  状(売掛金)
 
平成  年  月  日
 
大阪地方裁判所 御中
                          山  田  太  郎   ,
 
               当事者の表示
(送達場所)
〒   −    
   市       丁目  番  号
原告    山  田  太  郎
                       電 話
                       FAX
〒   −    
   市       丁目  番  号
被告    山  川  一  郎
 
売掛代金請求事件
訴訟物の価額 金500万円
貼用印紙額  金    円
 
               請求の趣旨
1 被告は原告に対し,金500万円及び平成  年  月  日から完済まで年6分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。
 
請求の原因
1(被告に対する請求)原告は、商品を販売している商人(或いは株式会社)であり、被  告は、買い主である。
2 売買の契約関係の詳細
 (1)売買契約日(期間)平成  年  月  日(から平成  年  月  日)
 (2)被告に売り渡した商品名 
 (3)連帯保証人
4(1)売買代金額 原告はA商品を数量 個を単価  円 合計  円を平成  年  月 日に売り渡した。
 (2)支払済みの額(支払いが一部なされた場合)
 (3)残額
5(1)支払期限(平成  年  月  日)の経過
 (2)商品を引き渡した日 平成  年  月  日
 (3)催告到達日 平成  年  月  日
6 よって,原告は,被告に対し,売掛代金請求権に基づき,未払代金   円及びこれ に対する売買代金の支払期限である平成19年 月 日の翌日から支払済まで商事法所 定の年6分の割合による損害金の支払を求め本件訴訟を提起する。
 
証拠方法
1 甲第1号証(納品書)
2 甲第2号証(請求書)
 
添付書類
 
1 甲号証写し                    各1通
 第7事例 同じく売掛金事例に債務引受が加わった事例です。
 
訴  状(売掛金と債務引き受け)
 
平成20年2月25日
 
大阪地方裁判所   御 中
 
                原告
                       山田太郎
 
 
               当事者の表示
(送達場所)
〒   −    
   市       丁目  番  号
原告    山  田  太  郎
                       電 話
                       FAX
〒   −    
   市       丁目  番  号
被告    A
   市       丁目  番  号
被告    B
 
売掛金等請求事件
 
訴   額  金3,000,000円
貼用印紙額  金24,000円
 
請求の趣旨
1 被告Aは,原告に対し,金150万円及びこれに対する平成 年 月 日か ら支払 済まで年6分の割合による金員を支払え
2 被告Bは,原告に対し,連帯して金150万円及びこれに対する平成 年  月 日 から支払済まで年6分の割合による金員を支払え
3 訴訟費用は,被告らの負担とする
 との判決並びに第1項,第2項につき仮執行宣言を求める。
 
請求の原因
1(被告Aに対する請求)
   原告は,北国屋の屋号で靴用品全般の卸売業を営む業者である。
   原告は,平成18年ころから,被告A(以下「被告A」という。)に対し,毎月2  0日締月末払いの約定で,靴テープや金具類を販売していた。
   しかし,平成19年ころから,被告道雄の支払いが滞るようになり,平成20年1  月20日時点での被告Aの未払代金は合計で300万円になっていた(甲1)。
2(被告A及びB名に対する請求) 
   そこで,原告は,被告Aと交渉し,平成19年10月12日,上記代金のうち金1  50万円について,被告Aの妻である被告B(以下「被告B」という。)が併存的に  債務を引き受けて支払うことを合意した(甲2参照)。
3 よって,原告は,被告Aに対し,売掛代金請求権に基づき,未払代金残金300万円 及びこれに対する売買代金の支払期限である平成19年 月 日の翌日から支払済まで 商事法所定の年6分の割合による損害金の支払を求めるとともに,被告Bに対し,被告 Aに対する売掛代金請求権に基づき,金150万円及びこれに対する訴状送達の翌日か ら支払済まで商事法所定の年6分の割合による損害金の支払を求め,本件訴訟を提起す る。
 
証拠方法
1 甲第1号証(請求書)
2 甲第2号証(債務引受書)
2 甲第3号証(内容証明による催告書)
添付書類
 
1 甲号証写し                    各1通