ウォールレスボーダレス時代における
    司法の限界とその抑制
           
                    大阪弁護士会所属
                       弁護士 五 右 衛 門
 
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NO18 国外行為の国内行為への取り込み・国内法の適用
NO13 3 海洋法に関する国際連合条約(追記)
NO17 国外サーバー保管データの差押え・刑事訴訟法の適用拡大?
NO16 刑法、刑事訴訟法適用の連結点・サーバーの所在とデジタルコンテンツ配布ポイント
NO15 海賊
NO14 NO3国外サーバー運営者に対する捜査−の変化
NO13 国際海洋法裁判所
NO12 国際刑事裁判所
NO11 捜査共助
NO10 国際物品売買契約に関する国連条約(ウィーン売買条約)
NO9 代理処罰
NO8 密漁船拿捕
NO7 外国国家と日本民事裁判権
NO6 各国によるスパイウェア規制法とスパイウェア投入行為と法的評価
NO5 戦争権限と国内法
NO4 国外犯処罰規定と国家主権、国際刑事法
NO3 国外サーバー運営者に対する捜査
NO2 国外のわいせつ物陳列サイトの紹介とリンク行為
NO1 わいせつ物陳列罪と国外犯、インターネット
参考文献など
 公衆送信権侵害と準拠法 http://www.itlaw.jp/handabook.pdf
NO0 サイバー犯罪条約
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NO18 国外行為の国内行為への取り込み・国内法の適用
 
1 東京高裁平成25年2月22日判決
 刑法175条1項後段にいう「頒布」とは,不特定又は多数の者の記録媒体上に電磁的記録その他の記録を取得させることをいうところ,被告人らは,サーバコンピュータからダウンロードするという顧客らの行為を介してわいせつ動画等のデータファイルを顧客らのパソコン等の記録媒体上に取得させたものであり,顧客によるダウンロードは,被告人らサイト運営側に当初から計画されてインターネット上に組み込まれた,被告人らがわいせつな電磁的記録の送信を行うための手段にほかならない。
 被告人らは,この顧客によるダウンロードという行為を通じて顧客らにわいせつな電磁的記録を取得させるのであって,その行為は「頒布」の一部を構成するものと評価することができるから,被告人らは,刑法175条1項後段にいう「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録・・・を頒布した」というに妨げない。
 
2 この論理
http://www.zunou.gr.jp/hattori/foreignserver.htm
 
7 最高裁平成26年11月25日判決
  刑法175条1項後段にいう「頒布」とは,不特定又は多数の者の記録媒体上に電磁的記録その他の記録を存在するに至らしめることをいうと解される。
 そして,前記の事実関係によれば,被告人らが運営する前記配信サイトには,インターネットを介したダウンロード操作に応じて自動的にデータを送信する機能が備え付けられていたのであって,顧客による操作は被告人らが意図していた送信の契機となるものにすぎず,被告人らは,これに応じてサーバコンピュータから顧客のパーソナルコンピュータへデータを送信したというべきである。
 したがって,不特定の者である顧客によるダウンロード操作を契機とするものであっても,その操作に応じて自動的にデータを送信する機能を備えた配信サイトを利用して送信する方法によってわいせつな動画等のデータファイルを当該顧客のパーソナルコンピュータ等の記録媒体上に記録,保存させることは,刑法175条1項後段にいうわいせつな電磁的記録の「頒布」に当たる。
 また,前記の事実関係の下では,被告人らが,同項後段の罪を日本国内において犯した者に当たることも,同条2項所定の目的を有していたことも明らかである。
 したがって,被告人に対しわいせつ電磁的記録等送信頒布罪及びわいせつ電磁的記録有償頒布目的保管罪の成立を認めた原判断は,正当である。
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NO17 国外サーバー保管データの差押え・刑事訴訟法の適用拡大?
 
1 国外サーバー保管データ の 差押え も可能となる!!  ネット経由で、実質、刑訴法の、一部、国外適用????
 
2 刑事訴訟法99条2項(未 施行)
  差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。
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NO16 刑法、刑事訴訟法適用の連結点・サーバーの所在とデジタルコンテンツ配布ポイント
 
1 音楽や動画といったデジタルコンテンツは、従来インターネット上で流通してきたHTMLファイルなどと比べてサイズが大きく、ネットワーク越しで配信を行なうとネットワークに多大な負荷がかかってしまう。
 このとき、ネットワーク上のさまざまな場所にデジタルコンテンツの配布ポイントを用意し、ユーザのネットワーク位置に応じた最適な配布ポイントを指示することで、大容量のコンテンツをスムーズにユーザに配信できるようになる。
 このようなシステムを構築して、多数のユーザにデジタルコンテンツを配信されるよう設計されたネットワークのことをコンテンツデリバリネットワークという。
http://e-words.jp/w/CDN.html
                 より。
 
2 従来、刑法、刑事訴訟法適用の可否を決定する連結点として、サーバーの所在が有意性を持っていた。
 しかし、CDNの普及により、サーバーとともに、デジタルコンテンツの配布ポイントが有意性を持ってくるように思われる。配布ポイントは、第二のサーバーとも評価可能であるからである。
 
3 配布ポイントへのデジタルデーターのアップ行為について、構成要件該当性の判断などがなされてくるだろう。
 データーのみならず、キャッシュについても。
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NO15 海賊
 
1 ソマリア沖 海賊、刑法で摘発 海自艦同乗の海保活用(1月3日8時1分配信 産経新聞)
 
 政府は2日、アフリカ・ソマリア沖の海賊対策で、日本籍船を護送する海上自衛隊艦船に同乗する海上保安官の権限を活用して、日本籍船の乗船者に対する殺人や逮捕監禁など重要犯罪を行った海賊の身柄を拘束し、刑法の国外犯規定を適用して逮捕・起訴する方針を固めた。政府は海上保安庁職員をソマリア近隣諸国へ派遣し、容疑者を移送するための空港や取り調べ施設の調査を始めた。
 
 一般自衛官は犯人の逮捕・送検などにあたる「司法警察権」を持たず、「海賊を捕らえても長く拘束できない」(政府関係者)のが実情だ。
 このため、司法警察員の資格を持つ1等海上保安士以上の海上保安官を護衛艦に乗せて活用する。
 
 刑法の国外犯規定は平成15年7月に改正され、日本人が海外で殺人、逮捕監禁、傷害、強盗などの重要犯罪の被害にあった際、日本の捜査機関が捜査できることになった。海自派遣では、この国外犯規定を適用し、殺人や傷害、逮捕監禁など日本人の生命・身体に直接危害を及ぼした犯罪に限定して逮捕・送検する。
 
  公海上の日本籍船は、日本の国内法が適用されるため、外国人乗組員など外国人乗船者の被害にも対応できる。
 ただ、ソマリアなど外国の領海で起きた事案については日本人乗組員に対する犯罪しか対応できない可能性があり、政府は法運用上の詰めを急いでいる。
 
2 ボーダレス時代において、「自国及び自国民のみを守る」という主張は、利己的な時代遅れの発想となっていくのか?
 
3 刑法
(国内犯)
第一条  この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。
2  日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。
(すべての者の国外犯)
第二条  この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。
一  削除
二  第七十七条から第七十九条まで(内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助)の罪
三  第八十一条(外患誘致)、第八十二条(外患援助)、第八十七条(未遂罪)及び第八十八条(予備及び陰謀)の罪
四  第百四十八条(通貨偽造及び行使等)の罪及びその未遂罪
五  第百五十四条(詔書偽造等)、第百五十五条(公文書偽造等)、第百五十七条(公正証書原本不実記載等)、第百五十八条(偽造公文書行使等)及び公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録に係る第百六十一条の二(電磁的記録不正作出及び供用)の罪六  第百六十二条(有価証券偽造等)及び第百六十三条(偽造有価証券行使等)の罪
七  第百六十三条の二から第百六十三条の五まで(支払用カード電磁的記録不正作出等、不正電磁的記録カード所持、支払用カード電磁的記録不正作出準備、未遂罪)の罪
八  第百六十四条から第百六十六条まで(御璽偽造及び不正使用等、公印偽造及び不正使用等、公記号偽造及び不正使用等)の罪並びに第百六十四条第二項、第百六十五条第二項及び第百六十六条第二項の罪の未遂罪
(国民の国外犯)
第三条  この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。
一  第百八条(現住建造物等放火)及び第百九条第一項(非現住建造物等放火)の罪、これらの規定の例により処断すべき罪並びにこれらの罪の未遂罪
二  第百十九条(現住建造物等浸害)の罪
三  第百五十九条から第百六十一条まで(私文書偽造等、虚偽診断書等作成、偽造私文書等行使)及び前条第五号に規定する電磁的記録以外の電磁的記録に係る第百六十一条の二の罪
四  第百六十七条(私印偽造及び不正使用等)の罪及び同条第二項の罪の未遂罪
五  第百七十六条から第百七十九条まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦、集団強姦等、未遂罪)、第百八十一条(強制わいせつ等致死傷)及び第百八十四条(重婚)の罪
六  第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪
七  第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪
八  第二百十四条から第二百十六条まで(業務上堕胎及び同致死傷、不同意堕胎、不同意堕胎致死傷)の罪
九  第二百十八条(保護責任者遺棄等)の罪及び同条の罪に係る第二百十九条(遺棄等致死傷)の罪
十  第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪
十一  第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪
十二  第二百三十条(名誉毀損)の罪
十三  第二百三十五条から第二百三十六条まで(窃盗、不動産侵奪、強盗)、第二百三十八条から第二百四十一条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷、強盗強姦及び同致死)及び第二百四十三条(未遂罪)の罪
十四  第二百四十六条から第二百五十条まで(詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、準詐欺、恐喝、未遂罪)の罪
十五  第二百五十三条(業務上横領)の罪
十六  第二百五十六条第二項(盗品譲受け等)の罪
(国民以外の者の国外犯)
第三条の二  この法律は、日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に適用する。
一  第百七十六条から第百七十九条まで(強制わいせつ、強姦、準強制わいせつ及び準強姦、集団強姦等、未遂罪)及び第百八十一条(強制わいせつ等致死傷)の罪
二  第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪
三  第二百四条(傷害)及び第二百五条(傷害致死)の罪
四  第二百二十条(逮捕及び監禁)及び第二百二十一条(逮捕等致死傷)の罪
五  第二百二十四条から第二百二十八条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未遂罪)の罪
六  第二百三十六条(強盗)及び第二百三十八条から第二百四十一条まで(事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷、強盗強姦及び同致死)の罪並びにこれらの罪の未遂罪
(公務員の国外犯)
第四条  この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国の公務員に適用する。
一  第百一条(看守者等による逃走援助)の罪及びその未遂罪
二  第百五十六条(虚偽公文書作成等)の罪
三  第百九十三条(公務員職権濫用)、第百九十五条第二項(特別公務員暴行陵虐)及び第百九十七条から第百九十七条の四まで(収賄、受託収賄及び事前収賄、第三者供賄、加重収賄及び事後収賄、あっせん収賄)の罪並びに第百九十五条第二項の罪に係る第百九十六条(特別公務員職権濫用等致死傷)の罪
(条約による国外犯)
第四条の二  第二条から前条までに規定するもののほか、この法律は、日本国外において、第二編の罪であって条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされているものを犯したすべての者に適用する。
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NO14 NO3国外サーバー運営者に対する捜査−の変化
 
1 従来、日本の警察は国外サーバー運営者に対する捜査照会は刑事訴訟法の適用範囲外との前提(??)で、消極的な運用をしていたようであるものの、近時は、積極的に海外サーバー運営者に対する捜査照会も行ってきているようである??
 勘違いかなぁ?? 日本国内の代理人を捜そうとしているのかなぁ??
2 ボーダレスの時代の捜査の必要性所以なのかなぁ??
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NO13 国際海洋法裁判所International Tribunal for the Law of the Sea:ITLOS
 
1 保証金減額と乗組員解放命じる=ロシア拿捕の豊進丸−国際海洋法裁
 8月6日23時0分配信 時事通信
 富山県の漁船「第88豊進丸」がロシア国境警備局に拿捕(だほ)され、乗組員17人が約2カ月にわたり抑留されている問題で、国際海洋法裁判所(ドイツ・ハンブルク)は6日、ロシアが当初提示した保証金を60%減額し、1000万ルーブル(約4600万円)とした上で、乗組員の速やかな解放を命じる判決を言い渡した。
 高額な保証金を法外として、裁判で妥当な金額への引き下げと乗組員の早期解放を要求していた日本政府は「全面的に主張が受け入れられた」(小松一郎外務省国際法局長)と評価した。政府は今後、乗組員の即時解放に向け、全力を尽くす意向。裁判は1審制で、この日の判決で確定する。  
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070806-00000199-jij-int
2 国際海洋法裁判所
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaiyo/itlos.html
3 海洋法に関する国際連合条約 
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/mt/19821210.T1J.html
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NO12 国際刑事裁判所International Criminal Court
 
1 日本が国際刑事裁判所への加入書提出
 日本政府は17日、戦争犯罪などを裁く国際刑事裁判所(ICC)への加入書を国連に寄託した。日本は10月にICCの105番目の加盟国となる。最大拠出国として全体の22%に当たる年約30億円程度を負担するほか、12月に行われる裁判官補欠選挙に斎賀富美子・人権担当大使が立候補し、人的貢献も目指す。
 ICCは国際法に基づき、戦争犯罪や集団殺害、人道に対する罪を裁くため、02年にオランダ・ハーグに設置された常設の国際法廷。コンゴ(旧ザイール)の武装組織指導者の公判が行われているほか、スーダン西部ダルフール紛争をめぐっても、元閣僚と民兵指導者が訴追されている。
 日本は98年の設立条約づくりの段階から積極的にかかわってきたが、国内法整備に手間取ったほか、未加盟の米国への配慮もあり加盟が遅れていた。今年4月、国会で加盟が承認され、ICCへの捜査協力や容疑者引き渡し手続きなどを定めた関連法が成立したことで、ようやく実現した
http://www.asahi.com/politics/update/0718/TKY200707180140.html
2 国際刑事裁判所ローマ規程
http://d.hatena.ne.jp/kazuma_002/
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NO11 警察庁、ブラジル警察と情報交換協力文書に調印
 
 警察庁とブラジル連邦警察は16日、国際犯罪の取り締まりや国外に逃亡した容疑者の追跡捜査などのため、ブラジルの首都・ブラジリアで、両国の警察が情報交換で協力することを定めた文書に署名した。
 ブラジルは、自国民の他国への引き渡しを憲法で禁じているが、日本で死亡ひき逃げ事件を起こしたとして国際手配された容疑者を、日本側の代理処罰の要請により、今年1月に在宅起訴している。今回の文書は代理処罰とは関係ないが、容疑者のブラジル滞在情報などの捜査共助の円滑化が期待できるという。
 警察庁が同様の文書を取り交わしたのは、中国、韓国、オーストラリアに次いで4か国目。(2007年4月17日2時18分 読売新聞)
 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070416i414.htm
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NO10 ウィーン売買条約
 
1 国際物品売買契約に関する国連条約(ウィーン売買条約)。国際的商取引の紛争解決ルールを定めたもの。
2 日本は未加盟。加盟を検討するという。
3 加盟国の企業間取引紛争の統一的準拠法となり、紛争解決が容易となる。
4 国際私法の難しい解釈論議を省略することが可能となるか。
5 http://www.meijigakuin.ac.jp/~lesa/database/cisg/cisgjapa.html
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NO9 代理処罰
 
1 日本で罪を犯して自国に逃亡、帰国した容疑者について、日本政府が容疑者の国に、容疑者が日本国内で犯罪を犯したことを立証する証拠を提供し、当該国の国外犯処罰規定により処罰するよう求める手続き。
2 当該国家と日本が「犯罪人引き渡し条約」を締結している場合には、日本は、条約に基づき犯人の引き渡しを求めたうえ、日本で起訴、処罰することとなる。
 しかし、グローバル化が進む現在、刑事法制が類似している等の場合には、代理処罰を求めるというのが原則形態となるということも将来的には想定可能である。
3 日本が「犯罪人引き渡し条約」を締結しているのは、現在、米国と韓国の2国のみである。
4 日本が他国から代理処罰の依頼を受けた例の有無は不知。
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NO8 密漁船拿捕
 
1 坂元茂樹神戸大学大学院法学研究科教授の指摘である(2006年8月23日付朝日新聞朝刊)
イ 国際法上、領海で外国漁船が漁獲行為を行うことは禁止されている。
ロ 外国漁船の取り締まりを沿岸国が行う場合、対象行為は取り締まり権限を行使しうる地理的位置で生じていなければならない。
ハ 国際海洋裁判所のサイガ号事件(99年)判決
・・実力の行使はできる限り回避し、それが不可能な場合は、状況において合理的かつ必要な限度内でなければならない。人道への配慮は、海洋法にも適用される。
・・追跡の船舶が最後の手段として実力を行為しうるのは、適当な行動が失敗した後である。その場合でさえも、適当な警告が当該船舶に発せられ、人命を危機にさらさないようにあらゆる努力が払われるべきである。 
2 現実は、、どうか??
3 海洋法に関する国際連合条約
  http://www.houko.com/00/05/H08/006.HTM
  国際海洋裁判所
  http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaiyo/itlos.html
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NO7 外国国家と日本民事裁判権
 
一 平成15(受)1231 貸金請求事件・平成18年07月21日最高裁判所第二小法廷判決
1 外国国家は,主権的行為以外の私法的ないし業務管理的な行為については,我 が国による民事裁判権の行使が当該外国国家の主権を侵害するおそれがあるなど特段の事情がない限り,我が国の民事裁判権から免除されない
2 外国国家は,私人との間の書面による契約に含まれた明文の規定により当該契約から生じた紛争について我が国の民事裁判権に服することを約した場合には,原則として,当該紛争について我が国の民事裁判権から免除されない  
3 外国国家の行為が,その性質上,私人でも行うことが可能な商業取引である場合には,その行為は,目的のいかんにかかわらず,特段の事情がない限り我が国の民事裁判権から免除されない私法的ないし業務管理的な行為に当たる
 
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NO6 各国によるスパイウェア規制法とスパイウェア投入行為と法的評価
 
 
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NO5 戦争権限と国内法
 
1 米国のブッシュ大統領が行った盗聴プロジェクト行為については興味深い論点がある。
 「2002年大統領の指示でNSAが開始した極秘盗聴プロジェクトは、テロリストとの関連があるという容疑があれば令状なしで国内からの国際電話及び電子メールの通信の盗聴・傍受を行うものだ。ブッシュ政権側は、軍の最高司令官であり最高執行官である大統領には憲法の下でNSA盗聴プロジェクトを承認する法的権限がある、としている。特に2001年9.11テロ攻撃以降に議会が採択した武力行使容認決議で、大統領の憲法上の権限を確認し補足したと主張」(村上博美:ワシントンDC在住)。
 
2 全米弁護士協会は2月13日、ブッシュ大統領の国内盗聴プロジェクトは大統領に与えられた憲法上の権限を超えるものだと非難。今後のどの政権においても1978年のFISAで設置された特別裁判所からの令状を取得しない国内の電話や電子メールによる通信の盗聴・傍受に断固として反対との声明を出した。40万人の会員を抱える全米弁護士協会は「もし大統領がFISAという法律がアメリカ国民を守るために不適当だというのなら、議会に改正を求めるべきだ」とし、更に議会に対しては「ブッシュ政権が戦争に行くことを承認したのであって、令状なしの盗聴を支持したわけではない」と再度確言することを要望した。(村上博美:ワシントンDC在住)。
 
3 戦争権限は相手国の国内法を無視する権限を付与する。
 しかし、ウォールレス、ボーダレスの時代。インターネットの普及は、ネット世界における外国法と国内法との区別をますます曖昧にしてきている。
 
4 日本においては、現在、このような問題は起こりえないか。
 しかし、国家執行機関の長に付与された「戦争権限」と国内法は検討しておくべき興味のある問題でもある。インターネットは国内法、国外法の区別を曖昧にし、またボーダレスは世界をひとつの枠組みの中で考えることを余儀なくしてきている。
 
5 日本における類似というか、類似様の行為は、超法規的行為として理解されているか。
 
 
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NO4 国外犯処罰規定と国家主権、国際刑事法
1 NHKの報道によれば、「米国内企業のコンピューターに不正に侵入して、各種情報を不正取得したロシア人青年について、米国FBIがおとり捜査で米国に誘き寄せ逮捕した際、その青年に操作させたコンピューターにスパイウェアを潜り込ませ、ロシア国内の青年の自宅のコンピューターに侵入して、不正取得した米国企業情報を確認、確保(証拠の収集)した」という事件があったようである。
2 これについて、ロシアは米国FBIの捜査官2名について、ロシア法に基づき、起訴したという。
3 米国FBIの捜査行為、米国企業に対する犯罪を取り締まる行為が、インターネットを通じて、ロシア国内で、ロシアの法令に抵触する行為と評価されている。ロシアでは逆に、犯罪とされる。
4 どう、理解し、今後、各国はどのように対応すべきなのだろうか。
 ボーダレス社会は、共通の刑罰法規、刑事手続法規を求めているのかも。
 
5 なお、前記ロシアの青年は懲役3年6月の実刑判決を受け、現在は、服役を終え、米国内のIT関連職務に従事しているという。
 http://www.icc-cpi.int/about.html
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NO3 国外サーバー運営者に対する捜査
 
1 日本の警察は、海外所在サーバーに対する捜査照会等について、その可否について消極的見解を採用しているようである。
2 その当否は、検討未了である。
 
 
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NO2 国外のわいせつ物陳列サイトの紹介とリンク行為
 
1 国外のわいせつ物陳列サイトの紹介とリンク行為についても、NO1記載のような実務的基準の適用が可能か。
2 自己管理にかかるサイトに国外のわいせつ物陳列サイトの紹介とともに当該サイトのURLを表示してリンクを貼る行為は、その自己管理にかかるサイトのサーバーが国内にあるのはもちろんのこと国外にある場合においても、「URLを表示してリンクを貼った」htmファイルなどをサーバーにアップロードするという行為が国内において行われており、幇助行為が国内において行われたと評価することが可能である。
3 NO1記載のような実務的基準の適用が可能であるとしても、各国により法的評価を異にしているという事実、法的評価を異にするこれらわいせつ物の閲覧自体の規制が困難であるという事実、わいせつという構成要件要素は社会の変化により微妙にその内容が変動し得るものであるという事実等、「わいせつ物陳列サイトの紹介とともに当該サイトのURLを表示してリンクを貼る行為」の可罰性の程度と検挙摘発の必要性、そして検索エンジンの社会的有用性(wwwの意味と機能の評価)などを総合勘案する必要もある。
 
4 難しい問題であるが、結論的には、検索エンジンの社会的有用性(wwwの意味と機能の評価)の肯定から、単なるリンク行為を処罰するのは不当という結論になるのか。
 
海外の児童ポルノサイトのアドレスをインターネット掲示板に掲載
 海外の児童ポルノサイトのアドレスをインターネット掲示板に掲載したとして、神奈川県警が沖縄県宜野湾市のパチンコ店店員(37)と鹿児島市の飲食店店員(37)の男2人を、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(公然陳列)容疑などで逮捕していたことがわかった。
 捜査関係者が明らかにした。海外の児童ポルノサイトのアドレスを掲載した同法違反容疑での立件は全国で初めて。県警は近く、この掲示板を開設した千葉県流山市の私立大2年の少年(19)を同法違反ほう助容疑などで横浜地検小田原支部に書類送検する。
 これまで国内の児童ポルノサイトのアドレスを掲載した摘発例はあったが、海外サイトの場合、サイト運営者の特定が難しかった。
 県警は4月、ネット上の違法・有害情報の通報を受け付ける民間団体「インターネット・ホットラインセンター」(東京都港区)に協力を依頼。センターは、ネット上の住所に当たるドメイン名の登録業者と連絡を取るなどして、サイト運営者が米カリフォルニア州内にある会社と突き止めた。
 捜査関係者らによると、男2人は昨年9月と今年2月、掲示板に海外の動画サイトの児童ポルノに接続するアドレス計11点を掲載し、不特定多数に閲覧させた。2人とも同法違反罪などで罰金50万円が確定している。
 少年は昨年8月、児童ポルノサイトのアドレスが掲載されることを知りながら、この掲示板を開設した疑い。調べに対し、「犯罪になるとは思わなかった」と話しているという。
 
 甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)は「国内の掲示板からの有害な海外サイトへのリンクを摘発したことは、警鐘を鳴らした点で意義がある」と話している。
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090708-00000078-yom-soci
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NO1 わいせつ物陳列罪と国外犯、インターネット
 
1 日本国刑法のわいせつ物陳列罪は、国内犯処罰規定である。
 
刑法(国内犯)
第1条  この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。
2  日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。(すべての者の国外犯)
第2条  この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。
一  削除
二  第77条から第79条まで(内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助)の罪
三  第81条(外患誘致)、第82条(外患援助)、第87条(未遂罪)及び第88条(予備及び陰謀)の罪
四  第148条(通貨偽造及び行使等)の罪及びその未遂罪
五  第154条(詔書偽造等)、第155条(公文書偽造等)、第157条(公正証書原本不実記載等)、第158条(偽造公文書行使等)及び公務所又は公務員によって作られるべき電磁的記録に係る第161条の2(電磁的記録不正作出及び供用)の罪
六  第162条(有価証券偽造等)及び第163条(偽造有価証券行使等)の罪
七  第163条の2から第163条の5まで(支払用カード電磁的記録不正作出等、不正電磁的記録カード所持、支払用カード電磁的記録不正作出準備、未遂罪)の罪
八  第164条から第166条まで(御璽偽造及び不正使用等、公印偽造及び不正使用等、公記号偽造及び不正使用等)の罪並びに第164条第2項、第165条第2項及び第166条第2項の罪の未遂罪
 
2 国内犯か否かの判定基準は、判例によると、構成要件該当事実の全部ないし一部が国内において存在すれば足りるとされている(大阪地裁平成11年2月23日判決・大阪地裁平成11年3月19日判決、「サイバー・ポルノの刑事規制」永井善之著232頁以下)。
 
3 わいせつ物の頒布ないし陳列という結果は、日本国内のPCにデーターをダウンロードするという事実ないしダウンロードしたデーターを再現するという事実により充足されている。
4 とすれば、理論的には、外国において外国に設置されているサーバー内にわいせつデーターをアップロードすることにより、日本国刑法に触れることとなる。
 
刑法(わいせつ物頒布等)
第175条
 わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料に処する。販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする。
 
5 4記載の海外における海外サーバーへのわいせつデーターのアップロード行為について日本の刑法のわいせつ物公然陳列罪により処罰できるのか否かについて、学説上は肯定説、否定説があり、現在まで、摘発事例及び裁判例はないようである(日本からアップロードした摘発事例や裁判例はある)。
 
6 弁護士実務として、上記についての問い合わせを受けた場合の回答はいかにすべきなのか。
イ 刑法理論的には可罰行為と理解できる。
ロ しかし、現在までの摘発事例及び裁判例はないようである。
ハ 摘発は、国と国との裁判権の問題や国境を越えた自由の問題という国際問題にもなりかねないのみならず、警察等の人的、物的設備から摘発が抑制されていると理解可能。
ニ 弁護士として、なんとも回答のしょうがない!! 上記イ、ロ及びハを述べることしかできない。
 
7 上記のようなサービス提供への関与と罪
 
イ 上記のように国外における国外サーバーへのアップロード自体、理論的には日本国刑法175条に該当するとした場合、そのようなサービスを提供しているという事情を承知のうえで、メンテナンス行為、顧客管理その他の行為をすることは、刑法175条の幇助行為に該当し、これも理論的には可罰的行為となることとなる。
 
ロ う〜〜む。
                               
刑法(幇助)
第六十二条  正犯を幇助した者は、従犯とする。
2  従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。
(従犯減軽)
第六十三条  従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。
 
ハ 大阪の奥村弁護士のML投稿によれば、「実務的には、全部外国でやっても、日本で観客を募る行為があれば刑法175条を適用しているようです」ということである。
 「幇助行為自体が、日本国内に存在すれば当該幇助行為については摘発する」ということであれば、捜査機関の摘発方針は、それなりに一貫性はあるか?
 
ニ 確かに、「幇助行為自体が、日本国内に存在すれば摘発する」ということであれば、日本国内において法益侵害行為を助長ないし増幅させる行為があるのだから、日本の捜査機関として摘発は当然か。
 これだけに止まるのならば、国境を越えた国際上の問題には発展しないか?
 
 「正犯は摘発しないが、幇助犯は摘発する!!
           一国の刑事司法の抑制による、従犯のみ独立処罰!!
 
 一見、矛盾するような形ではあるが、「一国の刑事司法の限界とその抑制 」という観点から、是認できるか?
 どこかの国にあった「死刑宣告!!」の事例とは、逆の発想である。
 
ホ 国外のわいせつ物陳列サイトの紹介とリンク行為についても、上記のような実務的基準の適用が可能か。
 
8 アダルトサイト運営者の実務
 
 アダルトサイトを米国のサーバーをレンタルして運営している業者らは、CDロムに焼き付けたデーターを米国まで飛行機に乗って自ら運搬しているようである。
 「日本から、外国に設置されているサーバー内にわいせつデーターをアップロードすることにより、日本国刑法に触れる」こととなり、またそのような行為をすれば警察の摘発を受けることとなるからである。
 自ら米国内に行き、米国内でサーバーにデーターをアップロードしても、現在のところ、日本の警察は摘発しないようであるからである。
 アダルトサイト運営による収益からすれば米国へ行く飛行機代等の交通費はわずかだそうだ。
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NO0 サイバー犯罪に関する条約
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/treaty159_4a.pdf


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