夫以外の者が嫡出否認の訴えを提起する場合の出訴期間について
     −−人事訴訟41条1項と家事事件手続法283条の関係−−
 
               大阪弁護士会所属
弁護士 五 右 衛 門
 
 
家事事件手続法283条
 夫が嫡出否認についての調停の申立てをした後に死亡した場合において、当該申立てに係る子のために相続権を害される者その他夫の三親等内の血族が夫の死亡の日から一年以内に嫡出否認の訴えを提起したときは、夫がした調停の申立ての時に、その訴えの提起があったものとみなす。
 
人事訴訟41条1項
 夫が子の出生前に死亡したとき又は民法第七百七十七条(嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない)に定める期間内に嫡出否認の訴えを提起しないで死亡したときは、その子のために相続権を害される者その他夫の三親等内の血族は、嫡出否認の訴えを提起することができる。この場合においては、夫の死亡の日から一年以内にその訴えを提起しなければならない。
 
 
1 人事訴訟法は、夫が死亡した場合において、相続権が害される三親等内の血族にも夫の死亡後、一年内に限り、嫡出否認の訴を提起する権限を付与するが、夫が申立てた調停が前置する場合には、夫の申立た調停申立時に、訴訟提起がなされたものとみなし、民法が定める「嫡出否認訴訟の提起の終期限とされている、出生を知ったときから一年以内」の「訴訟提起期限」との法律間の形式的整合性を確保しようとするものであって、訴訟提起についての期限が法定されている場合における調停前置の場合の形式的整合性の確保であり、特に変わったものでもなんでもない。
 
2 家事事件手続法272条3項は、調停の当事者が調停不成立通知を受けた日(出頭していれば調停期日当日)の翌日から起算して「2週間以内」に当該事案について提訴したときは、調停申立て時に提訴があったとみなしているが、これは、調停不成立により当然に訴訟提起とみなす制度をとらなかった前提のもとで調停前置主義に従ったことによる出訴期間不遵守等の不利益が生じないようにするための配慮とされている。
  この規定は調停の申立をした本人についての出訴期間不遵守等に関する手当条文であり、調停申立をした夫本人が死亡した場合には、もともとは、家事事件手続法272条3項は適用される余地がなく、調停申立をした夫本人が死亡した場合において、相続権を害される者その他夫の三親等内の血族に認められる嫡出否認の訴訟提起の出訴期間は、もともと人事訴訟41条1項所定の夫の死亡の日から一年以内となっているのです。
  しかし、民法777条が、嫡出否認訴訟を提起する当事者如何にかかわらず、一般論として、「嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から一年以内に提起しなければならない」と定めている民法の「訴訟提起期限」との法律間の形式的整合性を確保しようとするものであって、特に変わったものでもなんでもないものである。