一般向き・民法準拠計算書−金利の赤本
第一部 金利及び弁済金額計算に関する法律と実務(一般用・弁済計算くん用)
 
                 大阪弁護士会所属
                      弁護士 五 右 衛 門
 
・・・・・・・以下は、現在、執筆中の未完成のものです!!・・・・・・・
 
 昔の「元利計算くん」の法律と実務を、利用して掲載準備中
 
・・・・・・・以下は、現在、執筆中の未完成のものです!!・・・・・・・
 
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一 利息金・遅延損害金・法定利息金について
 
 「金銭を支払う」という債務(借金)に関連して、借り受けた元金とともに、一定の割合で支払う金銭には、利息金・遅延損害金・法定利息金の三種類のもの(以下「金利等」と呼ぶ)が、民事法の基本的な法律である民法で認められている。
 
消費貸借利息金条項・・掲載する予定
遅延利息金条項
法定利率条項
法定利息金条項
 
 
 これら三種の金利については、その発生の理由と原因が異なる。
 
 消費貸借契約(貸金契約)における利息金とは、元本使用の対価というべきもので、通常、消費貸借契約に基づき、金員を借り入れた場合の「貸金元本使用の対価」として、借り主が貸し主に支払う金員のことをいう。
 他方、遅延損害金とは、金員の支払いをすべき者が支払うべき日時に金員の支払いをしない場合に、本来支払うべき日の翌日以降金員を完済するまでの間に発生する損害賠償金のことをいう。(但し、民法419条2項参照)。
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判例・・最高裁判所昭和33年6月6日判決・民集12・9・1373
   「消費貸借における借り主は、特約のない限り、契約成立の日から約定利息を支払うべき義務がある。」 
法令・・民法415条本文
   債務者がその債務の本旨に従った履行をなさざるときは債権者はその損害の賠償を請求することを得。
法令・・民法419条1項
   金銭を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は法定利率によりてこれを定める。
   但し、約定利率が法定利率に越えるときは約定利率による。
 同条2項
前項の損害賠償については債権者は損害の証明をなすことを要せず、又債務者は不可抗力をもって抗弁となすことを得ず。
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 従って、消費貸借契約の場合においても、約定の弁済日当日までの金利は利息金といい、約定弁済日の翌日以降の金利は遅延損害金ということとなる。
 
 利息金ないし遅延損害金と類似するものの、その法的性質を異にするものとして、法定利息金というものがある。民法704条所定の利息金などであり、消費者金融などで問題とされている過払い金利息というのは、この法定利息金なのである。
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(悪意の受益者の返還義務等)
法令・・民法704条 
    悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
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 これから、利息金、遅延損害金、法定利息金を含め、これらを単に「金利」と表現することとし、主として消費貸借契約(ないし準消費貸借契約)いわゆる貸金契約を念頭において述べることとし、貸金以外の場合には、特に説明を付加することとする。
 
二 金利計算の方法
 
 金利計算は
     元金×利率×利率の単位期間数=金利
 という計算式で計算される。
 従って、金利計算を理解するためには、「利率」及び「利率の単位期間」を理解する必要がある。
  「元金」は借り受けた金員のことをいうので、以下、「金利の支払い時期」、「利率」、「利率の単位期間」及び「利率の単位期間の端数処理」等について、述べる。
 
三 金利の支払の時期等について
 
 金利を何時支払うのかという金利の支払時期の点であるが、金利の支払い時期も原則としては当事者間の契約、合意により決められる。
 その支払い時期としては、元本債務の弁済とともに利息計算の対象期間の末日に支払う「後払い方式」、利息計算の対象期間の初日に支払う「前払い方式」、ないし「金利の天引き」、元本債務の弁済期日と無関係に特定の日に支払う「中間払い方式」というような形態がある。
 ひとくちに、後払い方式、前払い方式等といっても、その支払う時期と支払い利息の対象期間により種々な形態がある。
 
 金利の天引きというのは、金員を貸し付ける際に一定の日までの金利を貸付金員から控除し、その控除した残額を貸し付けるという形態であり、これにも種々な形態がある。
 
 金利の天引きというのは実際に借り主に交付する金銭の金額に視点をおいたもので、金利の前払いというのは金利の支払い時期に視点をおいたものである。金利の前払い特約により金銭を貸し付ける場合、金利を天引きする場合が多い。このような場合には、金利の前払いということ以外に、金利の天引きという評価もされる。
 
 本来、元本使用の対価としての利息金は、元本保持の時間的経過により発生するものであり、元本保持の時間的経過が存在しないところに利息金はあり得ない。その意味では、利息金前払い方式により支払われる「利息金」は理論的には「利息金ではなく」、時間の経過とともに発生する利息金に充当されるべき「利息金充当予定金員」ともいうべきものである。
 
 金利の支払い時期について、当事者間に合意がない場合には、原則として債務の弁済期日と同日に支払う「後払い方式」と解されている。
 
四 利率について
 
  利率の表示について、パーセントで表示される場合(例、年5%とか年0.15%)と割合で表示される場合(例、年6分とか年4割3分6厘7耗)とがあり、いずれにしても前記計算式では、「0.05、0.0015、0.06 、0.4367」というように小数点以下の数字で表現されて計算される。
 
 約定利率について
 
  利率をいくらにするかということについては、後記の利息制限法出資等取締法及び貸金業法、消費者契約法等による民事及び刑事上の規制を除き、当事者間の自由な意思、合意に委ねられている。
 
 民法・商法の定める法定利率
 
  当事者間で利率を定めていなかった場合には、民法、商法により、次のとおりの法定利率が適用される。
  民事法定利率は、年5%(0.05)である(民法404条)。
  商事法定利率は、年6%(0.06)である(商法514条)。
   いわゆる商行為に関しては商事法定利率が適用され、商行為以外の金銭貸借等に
ついては民事法定利率が適用される。
 
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法令・・商法3条
  当事者の一方のために商行為たる行為については本法を双方に適用す。当事者の一
 方が数人ある場合においてその一人のために商行為たる行為については本法をその全
員に適用す
法令・・商法514条
  「商行為によりて生じた債権に関しては法定利率は年6分とする。」
判例・・最高裁判所昭和30年9月8日判決
   商法514条にいわゆる商行為によりて生じた債権とは、単に債務者とり商行為
たる行為によりて生じた債務に限らず、債権者にとり商行為たる行為によって生じた債
権を含む。
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  従って、当事者の一方にとって商行為の場合にも(他方にとって商行為でない場合
にも)商事法定利率年6%が適用される。
 
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判例・・最高裁判所昭和30年9月8日判決
  「売買契約が商行為であるときは、その解除による売買代金返還債務にも商法51
4条の適用がある。」
判例・・最高裁判所昭和47年5月25日判決
  「契約上の債務の不履行を原因とする損害賠償債務は、契約上の債務がその態様を
変じたに過ぎないものであるから、当該契約が商行為たる性格を有すれば、右損害賠償
債務も、その性格を同じくし、商法514条にいう商行為によりて生じた債務にあ
たる。」
 (会社を債務者とする消費貸借契約についての債務不履行を原因とする損害賠償債務
の事例)
判例・・最高裁判所昭和57年1月19日判決
  「自動車損害賠償保険法16条1項に基づく被害者の保険会社に対する直接請求権
は、被害者の保険会社に対して有する損害賠償請求権であって、保険金請求権の変形な
いしそれに準ずる権利ではないから、保険会社の被害者に対する損害賠償債務は商法5
14条の商行為によりて生じた債務に該当しない。」
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 前記の消費貸借における過払い金利息金について、商事法定利率である年6%が適用されるか否かについては下級審において見解が分かれているが、最近の高等裁判所の裁判例は年6%を適用する傾向にある。
 
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判例・・高松高裁平成18年6月29日判決
 「確かに、原判決が説示するとおり、利息制限法所定の利率を超える利息を弁済した結果発生する過払金についての不当利得返還請求権は、法律の規定によって生じる債権であるから、商法514条が本来予定する商行為によって生じた債権ということができないことは明らかである。
 しかしながら、民法704条がいわゆる悪意の受益者に対して「利息」を付した返還義務を規定した趣旨は、利得財産から通常発生すべき付加利益を併せて返還させることによって最小限の損害賠償をさせるためであると解される。
 被控訴人は、株式会社として商人であり、かつ、貸金業者として、法律上の原因なくして利得した控訴人からの過払金を自己の営業のために利用して収益を上げていたと推認できるから、商取引における資金需要の繁忙と投下資本による高収益の可能性から定められた商事法定利率年6分の割合による利息は、本件においては利得財産から通常発生すべき付加利益と考えることができる。
 そうすると、本件取引に関しては、商事法定利率である年6分の割合による利息を付して返還させることが民法704条の趣旨に合致するというべきである。したがって、本件における同条による利息の利率は、年6分と解するのが相当である。」
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  利息金の利率を当事者間で合意し約定利率が定められている場合において、遅延損
害金の利率を合意していなかった場合には、約定利率が前記の法定利率より低率であっ
た場合には遅延損害金の利率は法定利率が適用され、約定利率が法定利率より高率であ
った場合にはその約定利率が遅延損害金の利率としても適用される。
 
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判例・・最高裁判所大法廷昭和43年7月17日判決
  「利息制限法の制限を越える利息の約定のある金銭消費貸借において、遅延損害金
について特約のない場合には、本法1条1項所定の利率にまで減縮される利率と同率に
減縮されると解するのが相当である。」
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 利息制限法による利率制限
 
  民事・商事を問わず、利率については利息制限法による制限がある。
  利息制限法を越える金利は法律上無効ということとなり、利息制限法を超過する金
利は、金利の支払いではなく、残元金に充当されることとなり、過払い金があれば返還
請求することができる(但し、後記貸金業法に従う場合は別である)。
 
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法令・・利息制限法1条1項
   金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は、その利息が左の利率により計算し
た金額を越えるときは、その超過部分につき無効とする。
   元本が10万円未満の場合         年2割
   元本が10万円以上100万円未満の場合  年1割8分
   元金が100万円以上の場合        年1割5分
判例・・最高裁判所大法廷昭和39年11月18日判決
   「債務者が利息制限法所定の制限を越える利息、遅延損害金を任意に支払って
も、右制限を超過する部分は、強行法規である利息制限法1条、4条の各1項により無
効とされ、その部分の債務は存在しないのであるから、その部分にする弁済は効力を生
じない。従って、債務者が利息、遅延損害金と指定して支払っても、制限超過部分に対
する指定は無意味であり、結局その部分に対する指定がないのと同一であるから、元本
が残存するときは、民法491条の適用により元本に充当されるものとなる。」
判例・・最高裁判所大法廷昭和43年11月13日判決
   「・・制限超過部分の充当により、計算上元本が完済となったときは、その後に
債務の存在しないことを知らないで支払った金額の返還を請求することができる。」
判例・・最高裁判所昭和44年11月25日判決
   「利息制限法の制限を超えた利息、損害金を元本とともに任意に支払った場合に
おいて、その支払いにあたり充当に関して、特段の意思表示がない限り、右制限に従っ
た元利合計を越える支払い額は、債務者において、不当利得として、その返還を請求す
ることができる。」
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   利息制限法が定める制限利率は、次のとおりである。
   元金が10万円未満の場合
     利息金の利率の上限は2割(0.2)
     損害金の上限は4割   (0.4)
   元金が10万円以上100万円未満の場合
     利息金の利率の上限は1割8分(0.18) 
     損害金の上限は   3割6分(0.36)
   元金が100万円以上の場合
     利息金の利率の上限は1割5分(0.15)
     損害金の上限は   3割(0.3)である。
  利息金は当初の約束した弁済日当日までの分で、遅延損害金は弁済期日の翌日以降
の分である。
  但し、交通事故等の不法行為による損害賠償債務については、交通事故の当日分か
ら遅延損害金を支払わなければならない。
 
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判例・・最高裁判所昭和37年9月4日判決
   「不法行為に基づく損害賠償債務は、催告を要することなく、損害の発生と同時
に遅滞に陥る。」
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  なお、利息制限法が適用されるのは、金銭を目的とする消費貸借ないし準消費貸
借(貸金)上の利息についてである。
  売買代金の利息や米穀の貸借等には適用がない。
  売買代金等については適用がないことから、例えば自動車の分割購入の場合等の実
質金利は利息制限法所定の制限利率を超過している場合がある。
  このような売買代金の分割支払いの場合における金利等については、割賦販売法及
び同法に基づく「通産省令で定める方法により算定した割賦販売の手数料の料率」等
より規制されている。
 
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判例・・大審院大正10年11月28日判決・民録27・2051
   「利息制限法は金銭貸借の場合に限り適用すべきものなることは当院の判例とす
るところにして買主の支払うべき売買代金に利息を付することを約し代金の一部と認め
られるごとき場合に適用すべきものにあらざれば・・」。
判例・・大審院大正7年1月28日判決・民録24・67
   「利息制限法は契約自由の原則に対する例外規定なれば類推解釈をなしその適用
の範囲を拡張して米穀貸借に適用することを得ざるものとす」。
判例・・大審院大正10年5月18日判決・民録24・67
   「民法419条には金銭を目的とする債務の不履行についてはその損害賠償の額
は法定利率により、約定利率がこれを越えるときは約定利率による旨の条規存するもこ
れ金銭債権に特有な規定なること明文自体明らかなるのみならず、学会の定説として動
かすべからざるところとす。しかるに、原判決が金銭債務にあらざる本件(米穀の貸
借)につき約定利率に相当する損害の給付を命じたるは同法を不当に適用せられたるも
のにして不法の甚しきものといわざるべからず・・・・」
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4 出資金等取締法・貸金業法、消費者契約法による利率制限
 
  貸金業者の場合の利息金の利率の上限は、年40.004% (0.40 00
4)、但し、2月29日を含む場合は年40.1136(0.401136)である。
  日賦貸金業者の場合は、年109.5%(1.095)、但し、2月29日を含む
場合は年109.8%(109.8)である。
  貸金業者以外の場合の利率の上限は、年109.5%(1.095)、但し、2
月29日を含む場合は年109.8%(1.098)である。
 
5 出資金等取締法による刑事罰
 
   上記以上の利率の利息金をとる契約をしたり、現実に受領したりした場合には、
3年以下の懲役又は300万円以下の罰金ないしは懲役と罰金の併科の刑に処せられ
る(出資金等取締法5条1項2項)。
 
五 利率の単位期間の「端数」処理について
 
1 利率の単位期間について
 
  金利を計算するための利率について、「どのような期間で右の利率に相当する金員
を金利とするか」という問題で、理論的には、分単位、時間単位、日単位、週単位、月
単位、年単位とさまざまな形が考えられる。
  実際には、日単位(日歩)月単位(月利)年単位(年利)が用いられることが
多く、100万円を年利5%で3年間借り受けた場合には、
   元金×利率×単位期間数=金利
   100万円×0.05×3=150000円というように計算され、年利以外の
場合も同様の方法で計算される。
 
2 利率の単位期間の「端数」処理について
 
  利率の計算単位として、分単位、時間単位、日単位又は週単位(7日)を採用した
場合に、単位期間に満たない端数の時間、日等がでても、
      元金×利率×端数期間÷ 単位期間=金利
 という計算式で端数期間等についての金利計算は可能であり、問題は生じない。
  例えば、週単位で金100万円を週利0.0005で20日(2週と6日 )借り受
けたとする。
 2週分の金利計算
 元金   ×利率    ×利率の単位期間数=金利
 100万円×0.0005×2       =1000円
 6日の端数日数の金利計算
 元金   ×利率    ×端数期間÷ 単位期間=金利
 100万円×0.0005×6   ÷ 7  =428円
 2週と6日の金利
 1000円+428円=1428円
  この週単位の場合の「単位期間」は7日と確定しているからであり、分単位、時間
単位の場合も1時間は60分、1分は60秒というように「単位期間」が確定している
から、同様の計算方法をとれば足りるわけである。
  しかしながら、利率の単位期間として、月単位又は年単位を採用した場合に、単位
期間に満たない端数期間が生じる場合には、分単位、時間単位ないし日単位を採用した
場合と異なり、問題が生じる。なぜなら、月には28日、29日、30日そして31日
の月があり月の日数が一定していないという事情があり、年単位の場合には、365日
と366日の年があり、前記のような計算式にいれる「単位期間」の日数が確定しない
からである。
  なお、出資金等取締法5条3項は「前二項の適用については、貸付けの期間が15
日未満であるときは、これを15日として利息を計算するものとする。」と定め、刑罰
法規である同法5条1項、2項との関係においては、端数期間が15日未満の場合には
これを15日として利息計算したうえ、同法違反か否かを決定することとしている。1
5日未満を15日として利息計算したうえ同法違反の有無を決定するというのは「罪刑
法定主義」と「刑罰法令の謙抑主義」の結果とも考えられる。
 
3 「端数」単位期間の合意
 
  もちろん、当事者間で、このような単位期間についての合意があれば、それに従う
のは当然である。
イ 単位期間について、単純に「1年を365日として計算する」という合意がある場
合には、後記の「365日説」を採用することとなる。
ロ 「端数期間のみの合意をする」ということも理論上あり得る。端数期間について、
後述の全期間暦年閏年説で計算するとか、365日説で計算するという方式もあり得る
ものである。東京地裁民事21部もこのような合意があり得ることを認めている。
 
4 「端数」単位期間の合意がない場合
 
 以下、当事者間に合意がない場合を検討する。
(一) まず年利の場合を考える。
  大審院明治38年12月19日判決によれば「年利の場合でも、月利の場合でも、
当事者間で特別の意思表示等をしない限り、日割り計算する」ことを前提とすることと
なっている。
  なお、遅延損害金の場合においても、民法89条2項の適用により、「日割り計算
される」こととなる。
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判例・・大審院明治38年12月19日判決・民録11・1790
   「利子の計算は特別の意思表示なければ債権の存続期間日割をもってこれをなす
べきは民法89条2項の規定により明らかなる・・」
法令・・民法89条2項
   法定果実は、これを収受する権利の存続期間日割をもってこれを取得する。
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  例えば、100万円を年利3%の利率で4年と145日借り受けたとした場合
   4年分の金利については
 元金   ×利率  ×利率の単位期間数=金利
 100万円×0.03 ×4=120000円
  というように計算される。
   端数の145日分について
 元金×利率×端数期間÷ 単位期間=金利
 100万円×0.03×145÷単位期間=金利
  という計算式の単位期間に、365又は366日のいずれの数字をいれて計算する
のか確定できないという問題が生じる。
 
 365日説
 
  閏年の2月29日の存在を考慮せず、常に365日で計算するという考え方。36
5日説とでもいうべきものである。
 
 起算日基準説(2月29日基準説)
  利息計算期間の起算日(借入日)を基準として、向こう1年間(起算日から1年を
経過した翌年の起算日に応答する日の前日まで)の中に2月29日を含む場合には単位
期間として366日を採用し、2月29日を含まない場合には単位期間として365日
を採用するといういう考え方である(小川英明・新日本法規・貸し金訴訟の実務、71
頁以下)。この考え方は、年単位で計算する場合、計算すべき1年間が365日の場合
には365日を採用し、計算すべき1年間が366日の場合には366日を採用すると
いう、年単位の期間計算についての民法所定の発想を端数計算の場合の単位期間の場合
にも適用するという考え方である。
  この2月29日を含むか否かという基準による考え方の場合にも以下の二通りの考
え方があり得る。
  抽象的2月29日説
   端数期間の起算日を基準として、向こう1年間の中には2月29日を含むが現実
に金利計算する端数期間の中には2月29日を含まない場合においても、単位期間、す
なわち分母として366日を採用するという考え方(前記小川英明・貸し金訴訟の実務
の採用する考え方)
  具体的2月29日説
   現実に金利計算を行う端数期間の中に2月29日を含む場合にのみ、単位期間、
すなわち分母として366日を採用するという考え方である。
  なお、このように2月29日を基準として考える考え方(というより、向こう1年
間というのは365日なのか366日なのかにより決定する考え方)にも、このように
理論的に二つの考え方があると指摘するのは、本書が最初であると思う。
 
 暦年閏年説   
  利息計算対象期間の各々の日について、当該日が暦年でいう平年の中にある場合に
は365日を採用し、閏年の中にある場合には366日を採用する。平年と閏年にまた
がる場合には平年分と閏年分に分けて計算したうえ合算するという考え方である。
  この考え方にも二通りの考え方があり得る。
  全期間暦年閏年説
  利息計算対象期間の全期間について上記のような計算をするという考え方(全期間
暦年閏年説、小川英明・新日本法規・貸し金訴訟の実務68頁以下)
  端数期間暦年閏年説
  利息計算対象期間のうち、年単位の期間については年単位で考え(29日説と同様
の発想である)、端数期間についてのみ上記のように平年に属するか、閏年に属するか
により単位期間、すなわち分母を365日又は366日を採用するという考え方(端数
期間暦年閏年説ともいうべき考え方。大阪弁護士会・大阪弁護士協同組合作成の「法律
事務の手引」・全訂第4版102頁・大阪地方裁判所民事14部配布の資料・東京地方
裁判所民事21部債権執行係り取り扱い例参照)
  全期間暦年閏年説は、計算対象期間について「平年に属するか、閏年に属するか」
という観点を重視したもので国民の素朴な意識に近いものであり、端数期間暦年閏年説
、全期間暦年閏年説と2月29日説の折衷説ともいえるものである。
 
 各説の検討
 
イ 365日説について
  365日説は「利率等の表示の年利建て移行に関する法律25条」の適用がないに
もかかわらずこれを適用したと同じ結果となる点において問題があると指摘され(小川
英明著・前記貸金訴訟の実務72頁参照)、かつ2月29日の存在を理由もなく無視す
る点で疑問が残る。
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法令・・利率等の表示の年利建て移行に関する法律25条
  前各条の規定による改正後の法律の規定(他の法令の規定において準用する場合を
含む)に定める延滞税、利子税、還付加算金、延滞金、加算金、過怠金、違約金、割増
金、納付金及び延滞利息その他政令で指定するこれらに類するものの額の計算につきこ
れらの法律の規定その他法令の規定に定める年当たりの割合は、閏年の日を含む期間に
ついても、365日当たりの割合とする
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ロ 2月29日説(起算日基準説)の検討
  2月29日説は、民法143条が「期間を定めるに週、月又は年をもってしたると
きは暦に従いてこれを計算する」という民法の期間計算に関する条項等を根拠としてい
る(小川英明・前記貸金訴訟の実務二訂版参照)
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法令・・民法143条
   1項 期間を定めるに週、月又は年をもってしたるときは暦に従いてこれを計算
する。
   2項 週、月又は年の始めより期間を起算しないときはその期間は最後の週、月
又は年においてその起算日に応当する日の前日をもって満了する。
      但し、月又は年をもって期間を定めた場合において最後の月に応当日ない
ときはその月の末日をもって満期日とする。
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 抽象的2月29日説と具体的2月29日説の検討
  例えば平成10年3月1日に金員を年利5%で借り受け、1年と10日後に弁済す
ると仮定する。
  1年経過する日は平成11年2月28日であり、この日までの金利は1年分の金利
であり、残余の10日分の金利計算の単位期間をどうみるかという問題となり、右の端
数期間の起算日である平成11年3月1日から向こう一年間に2月29日は存在するこ
ととなる(平成12年は閏年であり、2月29日が存在する)。
  前記抽象的2月29日説によれば366日を採用することとなり、具体的2月29
日説によれば365日を採用することとなる。
  特定の日に金員を借用し、一定の期間経過した特定の日に債務を弁済する場合の金
利計算であるから、端数期間の中に「2月29日という日が具体的に存在するか否か」
という観点から決定すべきであるという立場にたてば、具体的2月29日説が正当とい
うこととなる。しかし、この具体的29日説の考え方によれば、端数期間の金利につい
て、「弁済年月日」という場合によっては偶然決定される事項により、端数期間の金利
計算の単位期間が左右される。換言すれば、利息計算について、分子の日数如何によっ
て分母が変わることを認めることとなり、その意味で合理性に欠けると考える。いま、
問題となっているのは「年利による利率計算の単位期間」の問題であり、「当該端数期
間はどのような日数の年単位(単位期間)の中にあるのか」、即ち「どのような日数の
分母を使うべきなのか」という問題であり、分子である端数期間により分母である単位
期間が変わるのは不当であるという観点を重視すれば、抽象的2月29日説が正当とい
うこととなる。結局2月29日説の中では抽象的2月29日説の方が合理的であると思
われる。
 
二 抽象的2月29日説、全期間暦年閏年説及び端数期間暦年閏年説の検討
  まず、全期間暦年閏年説と抽象的2月29日説、端数期間暦年説のいずれが妥当か
ということを検討する。
  「暦年による平年か閏年か」という観点から、365日又は366日を採用すると
いう考え方は、一般常識からすれば受け入れ易い、と考えられ、現に、多くの行政実務
は(全期間)暦年閏年説を採用しているとされているという(小川英明・前記貸金訴訟
の実務72頁参照)。ただ、行政の実務において(全期間)暦年閏年計算が多く用いら
れているとして、どのような目的の計算に用いられているかが問題である。今論議して
いるのは貸金等における金利計算の問題である。目的が異なれば方法が異なるのは当然
のことである。行政が行う貸金等消費貸借の実例について調査が十分できていないこと
から、これについての意見を表明する資格は著者にはない。
  現実に金利計算をしてみる。
  端数期間のない例として
  1000万円を年利5%で閏年の前年(例えば平成11年)の3月1日に借り受け
たとする。
  1年後の日は、閏年の2月29日となる。
  抽象的2月29日説及び端数期間暦年閏年説に従えば、金利は50万円。年利5%
に一致する。
 元金    ×利率    ×利率の単位期間数=金利
 1000万円×0.05  ×1       =50万円
   ワークシートNO1 参照
  全期間暦年閏年説に従えば、3月1日から12月31日までは365日計算、1月
1日から2月29日までは366日計算となり、金利は50万1145円となり、年5
%の数字より若干高めとなる。
 元金    ×利率    ×端数期間÷ 単位期間=金利
 1000万円×0.05  ×306 ÷365=41万9178円
 元金    ×利率    ×端数期間÷ 単位期間=金利
 1000万円×0.05  ×60  ÷366 =8万1967円
  41万9178円+8万1967円=50万1145円
    ワークシートNO2参照
  このように現実に計算してみると、民法の期間計算の法律に従い満1年間、100
0万円を年5%で借り受けた場合の金利は50万円と計算されるはずなのに、全期間暦
年閏年説に従えば金利は1145円多額に算出されることとなり、この全期間暦年閏年
説という考え方は、民法の金利計算の計算方法としては不当な結果を導き出すこととな
り、誤りであることは一目瞭然である。
  従って、上記のような例の場合に、金利を50万円と計算算出する「抽象的2月2
9日説」または「端数期間暦年説」が正当であると考えられる。
  これらの考え方は、年単位の金利計算をするについて「計算対象期間が平年に属す
るか、閏年に属するか」というような暦年における年間の日数単位の発想を否定し、「
当該消費貸借契約における1年」という期間は「その日数が365日であっても、36
6日であっても1年である」という発想である。
 
ホ 抽象的2月29日説及び端数期間暦年閏年説の検討
  次に、端数期間がある場合に、抽象的2月29日説と端数期間暦年閏年説のいずれ
が正当かということとなる。
  例として、平成11年3月1日に借入れ、平成12年12月30日に弁済するとす
る。この場合の差は、1年を経過した「残期間である平成12年3月1日から平成12
年12月30日までの期間」の単位期間として、366日を使用するのか、365日を
使用するのか、という問題となる。
  端数期間暦年説によれば、閏年か平年か、また単位期間として365日を採用する
か366日を採用するかという基準となる「平成12年2月29日という日の存在」
は、既に平成11年3月1日から平成12年2月29日という1年という年単位の期間
計算の中で考慮されているわけであり(言葉を換えれば、年単位計算との関係では、そ
の存在は無視されているとも表現できる)、右のように「考慮されている」ないし「存
在は無視されている」にもかかわらず、残存端数期間の利息計算において、「2月29
日が存在する閏年である」との理由から、これを考慮して「366日を単位期間として
採用する」というのは不合理な面を否定できないのみならず、端数期間の計算について
のみ、何故、平年と閏年とで計算方法を異にするのかという合理的な説明が困難である。
  また、この端数期間暦年説に従えば、消費貸借契約が成立し、日々、約定利息金が
発生しているにもかかわらず、弁済日が定まっていない場合には「利息金を支払うべき
特定の日」について「採用する単位期間が特定しない」ケースが生じる。換言すれば、
特定の日が経過したにもかかわらず、経過したその特定の日の発生利息金額が計算でき
ないというケースを招来することとなる。
  例えば、平年に該当する年の平成11年3月1日に金1000万円を年利5%で借
り受けたとする。利息金が発生する「平成11年3月10日」という日を考えてみる。
 平成11年3月10日に弁済したとしたら、端数期間10日ということとなり、平年
であることから、1000万円×0.05×10÷365=13698.63円=13
698円の利息が発生し、そのうちの1日である3月10日には、その10分の1であ
る1369円の利息金を発生計上させることとなる。
  しかし、他方1年を経過した後である平成12年3月5日に弁済したとしたら、借
り受け日である平成11年3月1日から1年を経過した平成12年2月29日までの1
年間366日間の利息金は1000万円×0.05=50万円となり、平成11年3月
10日に発生した利息金額は50万円÷366=1366.12=1366円というこ
ととなる。
  従って、同じ平成11年3月10日という1日について、弁済日が異なることによ
って発生する利息金額が異なる結果となる。
  このように端数期間暦年説を採用すると、前記具体的29日の場合と同様、「弁済
年月日」という場合によっては事後的に偶然決定される事項により、端数期間の金利計
算の単位期間、分母が左右されることとなる。即ち、利息金を発生すべき日が経過して
いるにもかかわらず、次回の弁済期日が定まるまでは当該日の発生利息金額を確定でき
ないというような事態が生じるのである。
  元本金額及び利率が確定しているにもかかわらず、弁済日が定まっていない場合に
は利息金を発生すべき日が経過したにもかかわらず、「利息金は発生した」、しかし
「発生金額は確定できません」というような計算方法である。
 このような計算方法が正当とされるのであれば、極論すれば、会社等の企業は財務諸
表上に「正確な経過利息金の計上ができない」というような事態をも招来するのである。
 このような計算方法が正当であるわけがないと考えるのである。
  以上から、端数期間暦年説は正当ではない。
  他方、抽象的29日説では、このような不合理は生じないものである。個別の起算
日を基準として年数計算、日数計算するという消費貸借契約の発想に立脚する限り、年
単位及び端数期間をも含めて、最後まで右発想を貫徹するのが首尾一貫しているものと
考えられる。
  抽象的的29日説が正当であると考える。
なお、前記小川英明著にかかる貸金訴訟の実務73頁に「なお、金銭消費貸借につ
いての適用が考えられる出資法5条は、閏年については丙説と同様に・・抽象的29日
説・・と同様に2月29日を含むかどうかにより年利を異にすることとしている」旨の
記載がある。出資法5条が「2月29日を含むかどうかにより年利を異にすることとし
ている」のは事実であるが、2月29日を含むか否かにより異にする年利は、丙説=抽
象的29日説の考え方と正反対の考え方なのであり、「丙説と同様に・・・」という指
摘は誤解を招く表現である。即ち、抽象的29日説の発想は「2月29日の存否に関わ
らず」1年間の年間金利は同一金額とすべきである」との発想に立脚するものであり、
他方出資法5条の趣旨は「2月29日を含む1年は、含まない1年より高額の利息金の
受領を認めるもの」であって、その発想は異質なものである。
 
 裁判所・弁護士会等の実務の扱い内容等について
 なお、大阪弁護士会・大阪弁護士協同組合作成の「法律事務の手引」(全訂第4版)
102頁、債権差し押さえに関する項には、次のように記されている。
             記
   金額の計算において、うるう年が含まれているときは、債務名義上に特約があれ
ば(「年365日の割合による」等)、それに従い、特約がないときには、次のように
計算して下さい (円未満は切り捨てて下さい)。
  1 起算日から計算して、年に満つる期間は、年利計算をする。
  2 次に、年に満たない期間は、平年分とうるう年分に分けて日割計算をする。
  3 1と2を合算する。                  
 大阪地方裁判所第14民事部配布にかかる書面には、次のような記載がある。
  利息、損害金の計算の仕方
1 1年を越える期間がある場合には、通算日数ではなく、「何年と何日」と記載する。
2 1年に満たない期間が、閏年または閏年にかかる場合、その部分につき366日の
 日割とする。 
 東京地方裁判所民事第21部 債権執行係
  年に満たない期間に閏年が含まれているときの計算方法として、大阪地裁と同様の
考え方が図示されている(自由と正義第46巻12号・利息、損害金の計算について)
 
 裁判所・弁護士会等の実務の扱い等の便法について
 
  消費貸借契約等において、特別の合意がない場合の、利息金ないし遅延損害金等の
計算方法は、理論的には、前記のとおり、抽象的29日説が正当と考えられ、一部の裁
判所や弁護士会の現在の実務の取り扱いは、問題を含むと考えられる。
  しかしながら、前記抽象的29日説は、消費貸借契約における分割弁済等の実情を
踏まえた議論であり、消費貸借等における利息金ないし遅延損害等の、一度限りの計算
方法としては、端数期間暦年説は、わかり易く、計算が簡便であり、電卓で計算できる
という利点がある。
  現実問題として、裁判所に対し、債権届け書を作成して提出する場合には、作成す
る時点での「残元本金額」及び「特定の期間のみの利息金ないし遅延損害金を計算す
る」という1回限りの計算であるところから、このような簡便な方法が採用されている
ものと推測している。
 
(二) 次に月利の場合を考える。
  月利の場合においても、大審院明治38年12月19日判決に よれば、「・・・
・月利の場合でも、当事者間で特別の意思表示等をしない限り、日割り計算する」とい
うこととなっている。
  例えば、100万円を月利0.002%の利率で2ケ月と10日借り受けたとした
場合
  2ケ月分の金利については
 元金    ×利率    ×利率の単位期間数=金利
 100万円 ×0.002 ×2       =6000円
 というように計算される。
  端数の10日分について
 元金    ×利率    ×端数期間÷ 単位期間=金利
 100万円 ×0.002 ×10  ÷単位期間=金利
  という計算式の単位期間に、28、29、30又は31のいずれの数字をいれて計
算するのか確定できないという問題が生じる。
  一月は原則として31日であるとして31日をいれることに合理性はない。30も
同様であり、28日、29日も同様である。
 
 暦月説
 
  その10日という日が、何日の月の10日に該当するのか、平年の2月であれば2
8日のうちの10日、5月であれば31日のうちの10日、4月であれば30日のうち
の10日、4月と5月にまたがっているのであれば、4月の30日のうちの4日と5月
の31日のうちの6日というように計算をする方法。
  右のとおり、例えば5月の10日であれば
 元金    ×利率    ×端数期間÷ 単位期間=金利
 100万円 ×0.002 ×10  ÷31=645円となり
   4月と5月にまたがっている前記の場合であれば
 元金    ×利率    ×端数期間÷ 単位期間=金利
 100万円 ×0.002 ×4   ÷30=266・66=267円
 元金    ×利率    ×端数期間÷ 単位期間=金利
 100万円 ×0.002 ×6   ÷31=387・09=387円
 となり、267円と387円の合計654円が10日分の金利となる。 
  年利計算の場合の前記「歴年閏年説」と同種の発想である。
 
 借入日起算日説
 
  端数計算の起算日から歴計算による1ケ月後の日までの日数を単位期間とする考え
方である。
  例えば、端数期間の起算日が3月4日とすれば最終日は4月3日となり、単位期間
日数は31日となる。
  端数期間の起算日が4月4日とすれば最終日は5月3日となり、単位期間日数は3
0日となる。 
  端数期間の起算日が2月4日とすれば最終日は3月3日となり、当該年度が平年で
2月29日が存在しない場合には、単位期間日数は28日となり、当該年度が閏年で2
月29日が存在する場合には、単位期間日数は29日となる。
  予定された単位期間を採用するという意味で前記年利の場合の「抽象的2月29
日説」と似た発想である。
  年利の場合に「抽象的2月29日説」を正当と考えるとすれば、借入日起算説」を
採用することとなると思われる。(前記小川英明・貸し金訴訟の実務も同様の考え方を
採用している)
 
六 金利計算における端数計算について
 
1 端数計算の合意
 
  金利計算を行うについて、例えば1円未満の金額について、四捨五入するのか、切
り捨てするのか、切り上げ計算するのか、国等が関係する場合に特別な規定が設けられ
ている場合を除き、消費貸借契約の場合等を定めた法律はない。
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法令・・国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律2条
   国及び公庫等の債権で金銭の給付を目的とするもの又は国及び公庫等の債務で金
銭の給付を目的とするものの確定金額に1円未満の端数があるときは、その端数金額を
切り捨てるものとする。
   国及び公庫等の債権の確定金額が1円未満であるときは、その金額を切り捨てる
ものとし、国及び公庫等の債務の確定金額が1円未満であるときは、その金額を1円と
して計算する。
   国及び公庫等の相互の間における債権又は債務の確定金額が1円未満であるとき
は、前項の規定にかかわらず、その金額を切り捨てるものとする。
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  消費貸借契約の当事者が契約のなかで、右のような計算の方法について合意してお
れば、右の合意に従って計算すれば足り、何らの問題も生じない。
  しかしながら、このような合意がなされることは殆どないのが実情である。
 
2 債務の現金支払い時における端数金額処理の方法
 
  ただ、当事者間でこのような端数処理計算についての合意をしていなかった場合に
おいても、金利計算を行うについて「1回限り」の金利計算を行い、債務を現金支払い
する場合においては、法律的に解答をだすことができる。
  「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」3条は、債務の現金弁済について、
1円未満について「四捨五入の原則」を定めていることから、四捨五入の法則に従い計
算すれば足りるからである。
  従って、借入金について、1回限りの金利計算を行い、右の金利計算に基づく金
利等を現金で支払う場合には、「四捨五入の法則」に従い計算して支払えば足りる。
  なお、金利計算に関し、このような四捨五入計算すべき場合においても、一律に「
切り捨て計算」している例が多いように思われる。
  消費貸借契約等貸金契約に基づく場合においても、現実に現金決済をする場合にお
いては、理論的には、現実の弁済金額を算出する最終の計算時においては、四捨五入計
算するのが正当ということとなるように思われる。
  1回限りの計算の場合は前述したとおりであるが、例えば3回の計算をして現金弁
済金額を算出する場合、最初の2回は単に金利計算にとどまることから、後述のとおり
「切り捨て計算」をすることとなるが、最終の3回目の計算の場合には「四捨五入計
算」をすることとなるように思われる。
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法令・・「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」3条
  債務の弁済を現金の支払いにより行う場合において、その支払うべき金額(数個の
債務の弁済を同時に現金で行う場合においては、その支払うべき金額の合計額)に50
銭未満の端数があるときは、又はその支払うべき金額の全額が50銭未満であるとき、
その端数金額又は支払うべき金額の全額を切り捨てて計算するものとし、その支払うべ
き金額に50銭以上1円未満の端数があるとき、又はその支払うべき金額の全額が50
銭以上1円未満であるときは、その端数金額又は支払うべき金額の全額を1円として
計算するものとする。但し、特約がある場合には、この限りではない。
  前項の規定は、国及び公庫等(国等の債権債務等の金額の端数計算に関する法律に
規定する国及び公庫等をいう)が収納し、又は支払う場合においては、適用しない。 
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  右の法律は、「債務の弁済を、現金で支払う場合」の1円未満について四捨五入の
原則」を定めたものであり、金利計算についての法則を定めたものではない。
 
3 端数処理計算方法について
 
  金利計算をするについて、特定の時期・期間において計算を一度終結させ、右の計
算結果を前提として、再度の計算等を行う必要がある場合には(通常の金利計算は、こ
のような作業を反復する場合が多い)、事実上、いずれかの単位において、四捨五入す
るのか、切り捨てするのか、切り上げ計算するのか、を決定しなければ計算を続行、継
続できないこととなる。
  これについて定めた法律はない。
  これについて定めた法律がないということから、前記の法律を準用ないし類推適用
し「四捨五入の原則」を採用するという考え方も当然あり得る。しかしながら、右の法
律は「金銭債務支払い」という一般的な事項を定めた法律であって、金利については利
息制限法、貸金業法、出資金等の取り締まりに関する法律等「金利額の許容する上限等
を定めた法律」がある。「四捨五入の原則」を金利計算に使用し、これらの法律に違反
することは許されない。金利を制限する法律の許容限度の利率を使用して計算し、「四
捨五入の原則」を採用して計算すると、場合により、わずか1円であっても前記金利制
限を定めた諸法令に違反する結果を導きだす事態を招来する結果となっては不都合であ
る。計算反復回数が多ければ多いほど金利制限諸法令違反の金額が増大する可能性があ
る。
  このように考えると、小数点以下について可能な限りの精微な計算が、反復計算す
るうえで事実上困難であるという現状では「四捨五入」や「切り上げ」という計算方法
はとれないということとなり、消去法「切り捨て」計算方法を取らざるを得なくなっ
てくる。
  更に、もう一点便宜上の根拠がある。
  金銭債務の弁済を裁判上で請求するについては、債権者において、正確な金利計算
をしたうえ、その支払いを求める金額を裁判所に呈示しなければ勝訴判決を得ることが
できないという民事訴訟法上の主張、立証責任からすれば、裁判上の請求をする債権者
は裁判所に対し、「法律的に正当な金額」の呈示をしなければならない点があげられる。
  前記のように、四捨五入計算することについて法律上の根拠があればよいが、そう
でない場合には「切り捨て計算」せざるを得なくなる。何故なら、切り上げ計算すれば
計算金利が僅かであっても不当に計算上高額となって債権者の請求する金額の一部が法
律上理由がないこととなり、また四捨五入計算をした場合、右四捨五入計算をした計算
結果が法律上正当か否か不明となり得るからであり、法律上正当か否かが不明であれば
裁判所は右計算結果を採用してくれないこととなるからである。
  即ち、債権者は正しい計算結果を提示することができない場合において、勝訴判決
を得るためには、正当な計算結果を精微な計算方法で明らかにできない場合は、正当な
計算結果よりは少なめの計算を提示して判決を求めざるを得なくなる。即ち、正しい計
算数値が事実上算出できない場合には、いずれかの単位において切り捨て計算を行い、
その計算結果が厳密に正しい計算数値より少額であり、債権者として債務者に支払いを
求める金額が法律上正当な金額の範囲内であると言わざるを得なくなる。よって「切り
捨て計算」が現時点では妥当と考える。
 
 切り捨ての単位
 
  切り捨ての単位については、小数点以下いずれの単位で切り捨ててもよいこととな
る。要するに、正確な計算より低額となればよいこととなる。
 
 判決による計算
 
  仮に貸金請求訴訟を提起した貸し主である原告が「四捨五入計算」をして金員の支
払いを求めたとして、裁判所はどのように判断すべきか。
  裁判所の求めに応じて、貸し主原告が切り捨て計算にし直してくれれば右の計算に
従って判決すれば足りるが(弁論主義・処分権主義)、貸し主原告が四捨五入計算を固
持した場合はどうするか。
  裁判所としては、四捨五入計算の結果に従って判決をすることはできず、正確な計
算をし直さなければならない。
  それが困難である場合には、いずれかの単位で切り捨て計算して判決をせざるを得
ないこととなる。
  いずれの単位で切り捨て計算することが許容されるかという問題であるが、判決で
求める正確な訴求金額を主張、立証すべき主張、立証責任は債権者にあるということ及び
「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」等一円未満の単位についての端数処理を
認めている法律等の趣旨から、便宜上「1円未満の単位」を切り捨て計算することもや
むを得ないと考える。
  このような裁判上の処理が是認されるならば、裁判外における金利計算も、その局
面は異なるものの、右同様「1円未満の単位」について切り捨て計算することも是認さ
れると考える。
  以上のとおり、「一円未満の単位」において切り上げ、四捨五入、切り捨てのうち
「切り捨て計算」を採用するべきであると考える。
 
 計算単位について
 
  また、前記のとおり、このような切り捨て計算は「特定の時期において計算を一度
終結させ」、右計算を前提として計算を続行する必要がある場合の「止むを得ない方
法」として是認されるものであることから、「合理的な必要性がない時期」に計算を終
結させることは許されないということになる。
  「計算を一度終結させる合理的な必要性がある場合」というのは、例えば弁済金の
一部支払いがなされたため、その時点での元利金計算をしなければならない場合、また
閏年計算ないし平年計算をする必要性から一度計算を終結させる場合とか、利息金の利
率から遅延損害金の利率に利率を変更して計算しなければならないような場合である。
  このように一度計算を終結させなければならない合理的な必要性がないにもかかわ
らず、例えば「12月31日」で一度計算を終結させるとか、「特定の月の末日」で計
算を終結させ、切り捨て計算をすることは、その都度、正しい数値から乖離する結果と
なるから許されないものと考える。
 
七 単利と複利(重利)について
 
  現在まで説明してきた金利計算の方法は、いわゆる単利計算の方法であり、発生し
た利息金には利息金が生じない場合である。
   利息金の計算の前提となる金額は
      「貸付元金」
        と
      「残元金」だけということとなる。
  このような計算方法を「単利」という。
  他方、複利(重利)というのは、「残元金」に「未払い利息金」を合計した金額が
利息金の計算の前提となる金額(新元金)となるという計算方法である。
     「残元金」+「未払い利息金」=新元金
  このように
      「残元金」+「未払い利息金」=新元金という計算をしたうえ、未払い利
息金を元金に組み入れることを「元本組み入れ」といい、その組み入れる期間について
は種々ある。
  1ケ月毎に行うのを「1ケ月複利」といい、6ケ月毎に行うのを「半年複利」、1
年毎に行うのを「1年複利」・・・等と呼ぶ。
  このような複利計算を行なえば、利息金が利息金を発生させ、貸し主には有利とな
るものの、借り主には不利益となることから、
  当事者同士が複利についての合意をしているか(約定複利)
     又は
  法律が認めている場合(法定重利等)
にだけ認められることとなっている(大審院大正6年3月5日判決民録23・411)。
  法律で認められている例として、民法405条がある。
  利息が一年分以上遅滞した場合において、債権者から債務者に対しその支払いを催
告(請求)しても、債務者がその利息の支払いをしない場合には、債権者はその利息を
元本に組み入れることができることとなっている(民法405条)。
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判例・・大審院大正6年3月5日判決
  「利息は法律の規定ある場合の外は当事者間の契約に基づき生ずるものなれば契約
なきときは債務者はこれが支払をなすべき債務あるべきにあらず。故に元本に対し利息
を支払うべき場合といえども重利の契約あるにあらざれば債務者は利息に対し更に利息
を支払うこと要せざるはもちろんなり」
法令・・民法405条
  利息が一年分以上延滞したる場合において債権者より催告をなすも債務者がその利
息を払わざるときは債権者はこれを元本に組み入れることを得。
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  ワークシートNO3を参照して下さい。
 (便宜上、2月29日が関係しない期間で、計算している)
  1000万円を年利5%で3年間借り受けた場合、単利計算であれば利息金は年5
0万円となり利息金の合計は150万円、3年後の元利金合計は1150万円となる。
ワークシートNO4の1、2、3を参照して下さい。
  しかし、同様1000万円を年利5%で3年間、1年複利で借り受けた場合、3年
後の元利金合計は1157万6250円となり、1年複利の場合には単利の場合より、
7万6250円残債務金額が多くなる。  
  ワークシートNO5の1ないし6参照して下さい。
  これを同様、半年複利で3年間借り受けたとしたら、3年後の元利金合計は115
9万6930円となり、1年複利の場合より、2万0680円多くなる。
  このように同一条件の場合、単利よりも複利の方が利息金額が多くなり、複利同士
の場合には元本組み入れ期間が短いほど、利息金額が多くなっていく。
 
八 貸付初日当日及び弁済日当日の金利(利息及び遅延損害金)について
 
1 利息金について
 
  金利を「何時から何時まで」発生させるかは当事者の自由である。当事者間で、い
つから金利を発生させるか合意されていない場合には「貸し付けた日」初日から計算す
ることとなる。
  民事法の基本法ともいうべき民法によると期間計算の場合、「初日不算入」が原則
であり、初日を算入すべき場合については法律が特例として定めている。
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民法138条
   期間の計算法は、法令、裁判上の命令又は法律行為に別段の定めある場合を除く
ほか、本章の規定に従う。
法令・・民法139条
   期間を定めるに時をもってしたるときは即時より起算す。
法令・・民法140条
   期間を定めるに日、週、月又は年をもってしたるときは期間の初日はこれを算入
せず。
   但し、その期間が午前零時より始まるときはこの限りにあらず。
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  貸金の場合の特例を定めた法律はない。
  しかしながら、前記判例昭和33年6月6日の最高裁判所判決は「貸金の場合には、
利息は借り受け金の利用の対価であることから、借主は、特約がない限り、借り受けた日
からこれを支払うべきであり、初日の利息を控除すべきではない」と判決しており、
「初日の利息」は特約がない限り「支払う」こととなっている。
 
2 遅延損害金について
 
  遅延損害金の場合、「ある日の一日の途中の時点」において遅延損害金の発生要件
が具備された場合、遅延損害金は、右の発生要件が具備した当日から起算するのか、翌
日から起算するのかという問題がある。
  これについては、当日からとする判例と翌日からとする判例があるが、実務上は翌
日から起算する例が多いといわれている(小川英明・前記貸金訴訟の実務82頁)。
  利息金の場合においては「当事者の意思の補充ないし意思推測」という観点から決
せられるものであり、前記のとおり最高裁判所は「特約がない限り、借り受けた日から
これを支払うべきである」と判断しており、利息金の性質及び当事者の意思推測という
観点等からすれば妥当な解釈と考えられる。
  しかしながら、遅延損害金の場合においては当事者の意思推測ということが利息の
場合と比較して困難である。
  「その一日の途中の時点」から遅滞に陥っている場合は、「法定果実はこれを収取
する権利の存続期間の日割り」とする民法89条2項の趣旨から、その一日分の遅延損
害金を時間割で負担分担させることはできず、債権者又は債務者の一方に不利益に決定
せざるを得ないこととなり、そのいずれが妥当かという問題である。
  法律上支払わなければならない金銭債務の支払いを怠ったことに対する「債権者側
からすれば受領しうべき金員を使用できない対価」であり、「債務者側からみれば支払
うべき金員を保留したことによる不当利得」という性格を持つものである。
  いずれに決するにしても不合理な面が残ることは否定できないところであり、この
ような不合理な結果については、いずれに負担させるのが公平の原則に合致するのかと
いう観点から決すれば「債務者に負担させるのがが妥当」ということとなり、結局
日分からの遅延損害金を支払うべきこととなる。
  不法行為の場合における前記判例の論理も、このような観点からも理解できるもの
と思われる。
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判例・・大審院明治29年6月16判決・民録2・6・37
   「金銭上の取引については、金員の性質如何にかかわらず、利子の契約なきもの
は債務者が遅滞に付せられたるときより法律上の利子を生じるをもって一般の法理とす」
判例・・大審院明治39年12月11日判決・民録12・1608
   「訴の提起は・・債務者を遅滞に付する効力を生じることは本院の判例として是
認するところなれば原院が訴の提起ありし翌日より利息支払いの義務ありとなしたるは
当然・・」
判例・・大審院大正10年5月27日判決・民録27・963
   「契約不履行による損害賠償の債務のごときは債務者がその履行の請求を受けた
る時より遅滞の責に任ずべきものなることは民法の規定により明白にしてその法意は債
務者をして履行の請求を受けたる日にその履行をなさしむるをもって足れりとし履行を
なさずしてその日を経過したる場合において始めて遅滞の責に任ぜしめたるものと解す
るを相当とす」
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3 金融機関の取り扱い等
 
  金融機関においては、借入日と弁済日の両方の金利を計算算入する方法を「両端」
と呼び、両端より一日少なく金利を計算算入する方法を「片端」と呼んでいるようである。
  金融機関により取り扱いは異なるものと考えられるが、日本の銀行、大手信販会社
等のなかで「片端」を採用している金融機関の多くは「初日の金利を計算算入しない」
という方式を採用しているものが多いようである。
  後記の元利均等弁済の方式の場合においても、銀行、大手信販会社等は初日の利息
金を計算算入していない例が多くみられる。
  このような初日利息不算入計算をしている消費貸借契約をみても、契約条項の中で
は「初日の金利を計算算入するか否か」定めていない場合が多いように思われる。銀行
等は一方的に「初日の金利は計算しない」という方法を採用しているわけである。
 
  ワークシートNO6を参照して下さい。
  1000万円を、金利年5%で平成10年3月1日に借り受け、平成10年5月2
5日に15万円、平成10年12月25日に40万円弁済したとした場合。
  最初に、平成10年5月25日現在の元利金計算をした。
  平成10年5月25日までの日数の表示「86」日は、貸付日である平成10年3
月1日と、平成10年5月25日を含んだ日数を計算している。
  発生金利金額は11万7808円であり、弁済金額15万円を、まず発生金利の1
1万7808円に充当し、残額3万2192円を元金1000万円に支払い充当すると
残元金は996万7808円となるという計算をしている。
  次に、平成10年12月25日現在の元利金計算をした。
  日数計算であるが、平成10年5月25日当日の金利は同日の金利計算の中でして
いるので、今回の場合には日数計算の中に平成10年5月25日当日を含めず、平成1
0年5月26日から平成10年12月25日当日までの日数「214」日を計算対象日
数とする。
  発生金利金額は29万2206円であり、弁済金額40万円を、まず発生金利の2
9万2206円に充当し、残額10万7794円を残元金996万7808円に支払い
充当すると残元金は986万0014円となるという計算をしている。
 
九 追加借り受け(反復借り受け)した場合の金利計算について
 
1 一括計算の可否等
 
  例えば金1000万円を年2%の金利で借り受けている人が、右の債務の元利金全
額を弁済しないうちに、金50万円を年利5%で借り受けたとする。
  借り受けた金利が異なることから、借受金については、各別に計算することとなる。
  一括計算は複雑、困難である。
  他方、金1000万円を年5%の金利で借り受けている人が、右の債務の元利金全
額を弁済しないうちに、金50万円を同一金利の年利5%で借り受けたとする。
  借り受けた金利が同一であることから、借受金については、簡単に一括計算するこ
とが可能である。
  ただ、この場合、一括計算する場合には、2つの前提条件がある。
  条件の1
    閏年計算について、前記「365日説」又は「全期間暦年閏年説」を前提とす
ること。なぜなら、「2月29日説」や「端数期間暦年閏年説」の場合には閏年計算を
する期間が「借り受け日」により決定されることとなることから、一括計算が複雑、困
難となるからである。
  条件の2
    この場合には、追加借り受けをした一日だけ、追加借り受けをした当日の従前
の借り受け金残元金についての利息計算と追加借り受けした金員の利息計算の合計利息
金の金利計算をしなければならない。
  前記のとおり、貸し付け初日の金利を計算する必要があるからである。
  ワークシートNO7参照
  ワークシートNO7の11年1月20日、「−500000円」の項を見て下さい。
金利・利息金額として「3万5185円」と記載されている。
  この金額は
 1月20日までの残元金986万0014円について
 元金    ×利率    ×端数期間÷ 単位期間=金利
9860014×0.05  ×26  ÷365=35117円
     と
1月20日に貸し付けた金50万円についての貸付初日の金利
 元金    ×利率    ×端数期間÷ 単位期間=金利
50万円   ×0.05  ×1   ÷365=68円
     を
合計しているわけである。
  即ち、35117円+68円=35185円が計算入力されているわけである。
  追加借り受けした場合には、初日利息金不算入の合意がある場合は別にして、この
ように二種類の金利計算をしたうえ合計金利を算出する必要がある。
  「元金計算くん」は、追加借り受けした場合には、右のように二種類の金利計算を
したうえ、金利の合計金額を表示するように設定されている。
 
2 一括計算のための契約条項例等
 
   同一人に対し、同一利率で貸し付け等を反復する可能性がある場合には、消費貸
借契約の中で、
  イ 「1年を365日として計算する(閏年を無視する)」旨の合意をしておくか
  ロ 閏年計算をするについて前記「全期間暦年閏年計算をする」旨の合意をしてお
いた方がよいということとなる。
  コンピューターにより反復継続する貸金の元利金の計算等を行う場合には、上記の
ような合意をしておくことが無難である。
  銀行実務のなかでは、消費貸借契約の中で、前記イの合意をしている例が多々みら
れる。
  イの合意の約定例文
   本契約においては1年は365日として計算することとする。
  ロの合意の約定例文
   利息ないし遅延損害金の計算をするについて、利息ないし遅延損害金の計算をす
る期間の起算日から(初日算入)1年以内に2月29日が存在するか否かを問わず、計
算すべき日が平年に該当する年に属する日である場合は1年を365日として計算し、
計算すべき日が閏年に該当する年に属する日である場合には1年を366日として計算
することとする。
 
十 過払い金がある場合の追加借り受けと金利計算について
 
  過払い金がある場合において、債務者が不当利得返還請求権を行使しない時期に、
追加借り受けした場合、別個の消費貸借契約が成立することについては異論はないと思
われる。
  過払い金がある場合には、別途債務者から債権者に対して、過払い金返還請求権に
より借入金債務と相殺する旨の意思表示をしたうえ清算計算をすることとなる。
  相殺の意思表示は、相殺適状時に遡及して効力を生じるとされ、当事者間における
相殺による債権債務の清算に対する当事者の期待等は一定限度で法律上保護されている
と考えられる。
  過払い金があるにもかかわらず、追加借り受けをした場合の事後の清算計算につい
ては、相殺の意思表示後であると考えられることから、「過払い金がある状態での追加
借り受け」については相殺される金額の限度では「追加借り受けの実体はない」と考え
て計算するのも一つの考え方であり、他方、追加借り受け自体は別個の消費貸借契約で
あり、後日相殺の意思表示がなされた段階で相殺適状に遡及して効力が発生するに過ぎ
ないものであり、相殺の対象となる金額について「追加借り受けの実体はない、と考え
るのは不当である」との考え方もあり得る。
この両者の考え方により差異がでるのは、事後的な清算計算の場合において、「追
加借り受け金全額」について、(初日利息算入する場合)「追加借り受け当日利息金
を計算計上する場合の元金金額はいくらなのか」という点に現れる。
前者の考え方によれば、「相殺後の残元金金額」ということとなり、他方、後者の
考え方によれば、「相殺前の残元金と追加貸付金の合計金員」ということとなる。
いずれの計算が妥当かは、個別に判断する他ないものと思われる。
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法令−民法506条 
   相殺は当事者の一方より其相手方に対する意思表示に依りて之を為す但其意思表
示には条件又は期限を附することを得す
   前項の意思表示は双方の債務か互に相殺を為すに適したる始に遡りて其効力を生す
 
判例−東京地裁昭和54年2月19日判決(判例時報945号61頁)
  「一般論としては過去数回にわたるそれぞれ発生原因事実を異にする右超過利息が
合計されて直ちにこれまた発生原因事実の違う本件公正証書記載の債権に当然に充当さ
れると考えるのは相当でないので、本件執行行為に際し被告会社には原告主張の如き注
意義務は存在しないと考えられるが、しかし、前記認定のとおり前記五回にわたる合計
金一、一〇〇万円、日歩一六銭、一七銭という高利の各金銭消費貸借の先行する本件に
おいては、当然借主である原告の方から本件公正証書記載の債権に対し右超過利息に係
る不当利得返還請求権をもって相殺の意思表示がなされる余地が存在し、弁論の全趣旨
によれば原告はその倒産に伴う債権債務の処理を弁護士に委任していることが認められ
るので、右相殺の意思表示がなされることは十分考えられる状況にあったのであるか
ら、前記認定のとおり金融を業務の一つとする被告会社としては、強制執行は主として
給付請求権の強制的実現という相手に打撃を与える法律上の手続きであることを考える
と、被告会社は当然本件執行行為に際してはあらかじめ右相殺の意思表示をされても未
だ貸金債権が存在するか否かを確認注意すべき義務があったといわざるをえず・・・・
被告会社は当該注意義務を尽くしていないことが認められるから、被告会社には原告主
張の過失があったとするのが相当である」
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十一 元金均等弁済及び元利金均等弁済について
 
  銀行等から金員の融資を受け長期間にわたって返済をする場合の返済方法の代表的
な例として、「元利金均等弁済方式」と「元金均等弁済方式」がある。
元利均等弁済方式の場合と元金均等弁済方式の場合では、
弁済の方法が全く異なることなることとなる。
  元金均等弁済の場合は、弁済期日における元金弁済金額が一定しており右の弁済す
べき元金相当金員に金利の金額を上乗せして 弁済していく方式であり、弁済を重ねる
につれて残元金が減少していくので、上乗せして支払うべき金利も逓減していくことか
ら、弁済期日毎の弁済金額の合計も逓減していくこととなる。
  他方、元利金均等弁済の場合には、弁済期日毎の弁済金額が一定していることか
ら(但し、銀行等の実務の場合には、後記のとおり、第1回目の弁済金額と最終回の弁
済金額は異なる場合が多い)、弁済金額のうち、元金に充当される金額と金利に充当さ
れる金額は、当初の段階では殆ど金利に充当され、最終弁済に近づくにつれ、元金への
充当金額が多額となっていく方法である。
  会社等企業の場合には、元金均等弁済が多用され、サラリーマン等の個人の場合に
は元利金均等弁済方式が多用されているようである。
 
 元金均等弁済について
 
  元金均等弁済の具体例をワークシートNO8及びNO9で示すこととする。
  5000万円を3年の36回の元金均等弁済する場合の例である。
  ワークシートNO8参照。
  毎回の元金充当額は138万8889円であり、第1回の弁済金額は156万01
21円で、最終弁済金額は138万8885円、支払い金利合計額は381万1628
円となる。
  毎回の元金充当金額は自由に設定でき、その元金充当金額により金利が異なってく
るだけであり、毎回の元金充当金額が多いほど毎回の弁済金額は多額となり、支払い金
利の合計金額は少額となる。ワークシートNO8記載の元金充当金額を139万円と
いう切りのいい金額に変更してみる。
  ワークシートNO9参照。
  毎回の元金充当額は139万円であり、第1回の弁済金額は156万1232円
で、最終弁済金額は135万5547円、支払い金利合計金額は380万8708円と
なる。
 (ローン返済くんは自由自在に金額設定と計算ができるようになっている。)
 
2 元利金均等弁済について
 
  元利金均等弁済方式は多くのサラリーマンや国民の多くが住宅ローン等で利用して
いる弁済方式であり、毎回の弁済金額が一定し、従って最初のうちは金利への支払い金
額多く、最後の方になると元金への充当金額が多くなる方式である。
  元利均等弁済の具体例をワークシートNO10で示すこととする。
  5000万円を3年の36回の元利均等弁済する場合の例である。毎回の元金充当
額は若干異なり、第1回から最終回の前までの弁済金額は149万7276円で、最終
弁済金額は149万7239円、支払い金利合計額は390万1899となる。
 
十二 都市銀行等の元利金均等弁済について
 
  銀行等で住宅ローン契約をして金員を借り受ける際、銀行と話し合うのは、「返済
期間、何年で返済するか」、「金利は年・・  %」なのか等である。
  銀行等との間で融資条件の話し合いがつくと、銀行等から「返済明細」と称する返
済金額の一覧表が送付されてくる。これは借り受けた金員について、返済期日、返済金
額、金利等が記載されている書面である。
  この元利均等弁済方式に関し、銀行等から送付されてくる返済金額一覧表は、特殊
な方法による金利計算がなされている場合がある。
  私たちは、通常、銀行等との融資約定において、例えば「年利5%」で借り受ける
という約定をした場合、銀行等から送付されてくる返済明細には、正確に年利5%で計
算された金利金額が記載されていると考えるし、これを疑う者は少ないと思われる。
  しかしながら、銀行等から送付されてくる返済明細記載の金利の金額は、同書面に
記載されているような、例えば「年利5%」というような金利計算はされていない。
  銀行等作成の金利は、年利でもなく、月利でもない、「約定書記載の年利を12分
の1した数字」(以下「仮想月利利率」という)、例えば年利5%の場合、0.05を
12分の1した0.004166666というような割合を残元金に乗じた金利が記載
されている場合がある。
  現実に入手した弁済表を見てみる。
  某都市銀行
  ローンご返済予定表
    適用利率 2.500%
返済日平成10年1月27日
返済元利合計 元本内入れ額 利息返済額  残元金
605384 403648 201736  96429782
返済日平成10年2月27日
返済元利合計 元本内入れ額 利息返済額  残元金
605384 404489 200895  96025293
返済日平成10年3月27日
返済元利合計 元本内入れ額 利息返済額  残元金
605384 405332 200052  95619961
  右の利息計算を検算してみると以下のとおりである。
  平成10年2月27日に弁済し、次回の弁済日は平成10年3月27日である。
  平成10年2月27日の残元金は9602万5293円であり、次回返済日である
3月27日までの利息計算対象日数は28日間である。
 元金      ×利率    ×端数期間÷ 単位期間=金利
96025293円×0.025 ×28  ÷365=18万4158.0961円
=18万4158円である。
  しかし、前記弁済表記載の金利金額は、20万0052円と記載されている。
  年利計算からすれば誤りであり、1万5894円取りすぎである。
  右の銀行の計算方法は次のような方法である。
 残元金     ×年利    ÷12
96025293 ×0.025 ÷12=200052.6937=20万0052
円となる。
  日本の都市銀行を調査した範囲内では、「元利均等弁済方式で利息金の後払い方式
の場合」正確な年利計算をした金利金額を記載した返済明細表を見つけることはでき
ず、調査した返済明細はすべて右のような年利を12分の1した割合(仮想月利利率)
が使用されている。
  年利を12分の1すれば月利になるわけではない。
  年利を12分の1するという計算方法は、年利でもなく、月利でもない、いわば
仮想の月利利率」を金利計算に使用しているということとなる。
  年利ないし月利というのは、前記のとおり、「利息計算の単位期間」を年ないし月
に求めるという考え方である。
 1年は12ケ月であっても、月には28日、29日、30日そして31日という月が
あり、そして、大審院明治38年12月19日判決「年利の場合でも・・・・、月利の
場合でも、当事者間で特別の意思表示等をしない限り、日割り計算する」及び民法14
3条「期間を定めるに週、月又は年をもってしたるときは暦に従いてこれを計算する」
を前提とすれば、月利計算の方法は前述したとおりであり、年利を12分の1すること
により得られた数値には特別な意味は全くないものであり、これが月利になるわけでは
ないのは明白である。
  年利とか月利という意味は、金利計算における「利率」と「その利率の単位期間」
を総合した表現なのであり、単なる「割合」ないし「利率」のみを意味するものではな
いのである。
  年利を12分の1するということの意味は、強いていえば、月には28日、29日、
30日そして31日という月があることを 否定し、1ケ月を30.4日(閏年の場合
には30.5日)と擬制してしまうことにほかならないものであり、このような事実に
反する擬制した数値を使用することにより正確な金利計算ができないことは論ずるまで
もないことである。
  ただ、都市銀行等の住宅ローン計算等において、右のような仮想月利利率が使用さ
れていることから、書籍等においては、「右のような仮想月利利率を月利と称し」たり
、「年利を12分の1すると月利となる」というような誤った記述が見受けられる。
  但し、当事者間の合意により、このような仮想の月利利率を使用してはいけないと
いうことではなく、借り主との合意に基づいて使用計算していれば問題はないが、借り
主がこのような仮想月利利率計算により金利計算がなされているということを知らなか
ったとすれば問題である。
  多くの借り主は知らないものと推測されるが・・・。
  日本の都市銀行等大手金融機関は、その使用する計算ソフト及び汎用コンピュータ
ーが今日のように性能的に進歩していない時期に住宅ローン等の貸し金業務を始めてお
り、当時の未発達のコンピューター時代に分割弁済計算等を開始しており、当時、正確
な年利計算のソフトが開発されないまま、「日債銀総合システム株式会社編、発行所社
団法人金融財政事情研究会」の「新元利均等償還テーブル」(住宅ローン必携)記載の
賦課金率表記載の賦課金率を使用して元利金均等弁済方法の1回あたりの弁済金額を算
出してきているためではないかと推測している。
  現に都市銀行等に問い合わせをすると、回答の殆どは「前記償還金テ−ブル記載の
賦課金率を使用している」との回答であった。
  右の「償還金テーブル」の金利計算方法が前記のような仮想月利利率を使用してい
ることから、都市銀行等はすべて前記のような仮想月利利率により金利計算をしてきて
いるのではないかと推測している。
  コンピューターを取り扱う専門部署を持っていると推測される都市銀行等がなぜ正
確な、例えば、消費貸借契約書に記載しているような年利による金利計算をしないのか
は分からない。都市銀行等は従前から賦課金率表を使用して元利均等分割計算を開始し
てきており、かつ銀行等の汎用コンピューターは計算機能と貸し金回収機能等がオンラ
イン等で接続されているため、その一部のみを改善するのが容易ではない、いわば柔軟
性に欠けることから、計算システムのみの改善に費用がかかることから改善をしてきて
いないためではないかと推測している。
  前記銀行等の仮想月利利率による金利計算は「年利」という前提で計算すれば、各
弁済期日毎の計算利息金額は、あるときは多すぎ、あるときは少なすぎるという結果と
なっている。
  即ち、1年、365日を12で除すると30・4(閏年は366日であるから30
・5)となるから、賦課金率表記載の金利計算をすると、1ケ月が28日,29日、そ
して30日の月の計算金利は正しい年利計算の金利金額より多額となり、1ケ月が31
日の月は正しい年利計算の金利より少額となる。
  但し、年間12ケ月のうち31日の月が半数以上の7ケ月あること等から銀行等の
計算による支払い利息金を合計すると、年利による計算利息金より若干少なめになる場
合が多いことから、住宅ローン等を借り受けている借り主に不利益を加えているわけで
はなく、利息金が年利と比較して若干少ないというだけで大きな問題はない。
  その誤差の程度は
  1億円を年利5%で借入れ、5年の60回分割で弁済すると仮定した場合、借り受
け年月日により若干異なるが、仮想月利利率による場合には、正確な年利計算の金利と
比較し、約2万0444円程度少額であるという程度である。
  平成9年12月1日に金1億円を借入れ、平成10年1月1日から毎月1日に5年
の60回分割で弁済すると仮定した場合、年利計算と仮想月利利率の両方で計算してみる。
  後記のとおり、マイクロソフトエクセル97ないし98に組み込まれている計算ソ
フト「ローン返済計画」は仮想月利利率計算であるので、仮想月利率の方はエクセルロ
ーン返済計画で試算してみることとする。
  ワークシートNO11(年利計算)参照
  ワークシートNO11(年利計算)の場合の総弁済金額は1億1324万7846
円となり、エクセルローン返済計画(仮想月利利率)の場合には、1億1322万74
02円となっており、その差額は2万0444円となる。
  右のとおり、住宅ローン等の場合、銀行が作成、交付する弁済金額一覧表は弁済予
定金額全額を一覧表記載のとおり弁済した場合には、支払い利息金額は、銀行等が借り
主が約定した「年・・%」という約定利率による利息金の総額よりも前記のとおり、若
干低額であることから、問題はないものの、極端な事例、例えばひと月の日数が31日
でない月、例えば2、4、6、9、11月だけをみると、銀行等の計算による利息金額
は年利計算による利息金額より若干高額となるため、問題がないわけではない。
  例えば、2月1日に5000万円を年利3%、60回分割で借り受けた人が弁済予
定を変更して3月1日に一括弁済すると仮定した場合、銀行等の一覧表記載の利息金額
は概算125000円くらいの金額が記載されている(もとより、銀行により若干の計
算式上の差異があり、特に最初の弁済金額による調整をしている場合には右調整金額に
より異なるものの、仮想月利利率という基本的な計算方法は変わらない)が、年利によ
る計算利息金は11万9178円となることから、「年利3%」という約定利率からす
れば約5822円程度、とり過ぎということとなる。
  ワークシートNO12を参照して下さい。
  但し、調査した範囲内ではあるが都市銀行のうち一行は、毎月、金利の金額を調整
したうえ数百円という単位で返還計算する等しているようであり、右の銀行は「その採
用している計算方法による金利金額が約定金利と異なる、「仮想月利利率」であること
を認識し、右のような微調整をしているものと推測される。
  また、前記のように金額調整をしていない金融機関の場合にも、一括繰り上げ弁済
をする場合において、弁済金額を計算し直し正確な計算をしておれば問題はない。
  本来、全銀行が右のような微調整をするか、又は住宅ローン等の借り主に対し、「
弁済金額一覧表の利息金の計算方法を説明したうえ」その承諾を得るか、融資約定書の
金利の利率を記載するところに正しい金利の利率を表示するか、又は、銀行等のコンピ
ューターの計算システムを正しい年利計算システムに変更する必要があるものと思われ
る。
  しかし、もう一つ不思議なことがある。都市銀行等のローン弁済においても、「利
息前払い方式」の場合には、正確な年利計算をしている例が見受けられるのである。何
故、利息の後払い方式と前払い方式とで異なるのか、現時点では、著者は分からない。
 
十三 仮想月利利率採用についての条項
 
  前記のような「仮想月利利率」を採用する場合には、消費貸借契約書等において、
下記のような条項を入れておくとよいであろう。
  契約条項例
   本消費貸借契約における1ケ月間の利息金は、元金ないし残元金に、本契約書上
に表示した年間利率を12分の1した利率(但し、小数点以下11桁以下切り捨て)を
乗じた金額とする(但し、1円未満以下を切り捨てる)。
   注・・「小数点以下11桁以下切り捨て」と記載したのは、前記「日債銀総合シ
ステム株式会社編、発行所社団法人金融財政事情研究会」の「新元利均等償還テーブ
ル」 (住宅ローン必携)が「小数点以下11桁以下切り捨て」で記載されているのを
参考とした。
  なお、全銀協作成の「ローン契約書ひな型試案」(提携・月利)によると下記のよ
うな記載がされている。
    利率 年  %(12分の1の月利計算)
  この書き方によると、第一に、年利が12で割り切れる場合はよいものの、割り切
れない場合はどうするのか、定めていない。第二に、「12分の1の月利」という表現
に問題がある。年利を12で割っても月利にならないことは前述したところであり、表
現として妥当ではない。