保険法
(平成二十年六月六日法律第五十六号)
気まま注釈
大阪弁護士会所属
弁護士 五右衛門
保険法の概要ー法務省
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1 目的
社会経済情勢の変化に対応して,商法第2編第10章に規定する保険契約に関する法制を見直し,共済契約をその規律の対象に含め,傷害疾病保険契約に関する規定を新設するほか,保険契約者等を保護するための規定等を整備するとともに,表記を現代語化し,保険契約に関する法整備を行う。
2 法律の骨子
(1) 保険契約に関する法制の整備
ア 商行為としての保険契約を規律の対象とする現行商法の規定を改め,保険契約と同等の内容を有する共済契約をその規律の対象に含め,保険契約一般についての新たな法典とする。
イ 損害保険契約及び生命保険契約のほか,現行商法には規定のない傷害疾病保険契約に関する規定を新設する。
ウ 保険契約者等を保護するため,契約締結時の告知に関する規定等を見直し,保険金の支払時期に関する規定等を新設するとともに,これらの規定を片面的強行規定(法の規定よりも保険契約者等に不利な約定を無効とする効力を有する規定)とする。
エ 一定の重大な事由がある場合(例えば,保険契約者が,被保険者を殺そうとしたり,保険金請求について詐欺を行ったりした場合など)に保険者による保険契約の解除を可能とする規定を新設する。
オ 損害保険契約のうち責任保険契約について,被害者が保険金から優先的に被害の回復を受けることができるようにするための先取特権の規定を新設する。
カ 生命保険契約及び傷害疾病定額保険契約について,保険金受取人の変更の意思表示の相手方は保険者であること,遺言による保険金受取人の変更も可能であることなどを規定する。
(2) 表記の現代語化
3 Q&A
Q1 なぜ商法の保険契約に関する規定を改正するのですか。
商法の規定は,明治32年の商法制定後,明治44年に一部の規定が改正されただけで,約100年間も実質的な改正がされておらず,表記も片仮名・文語体のままでした。
しかし,この間,社会経済情勢が大きく変化し,規定の内容をこれに適合したものに改める必要があることから,商法の規定を改正することとしたものです。
Q2 なぜ共済契約を適用対象とするのですか。
商法の規定は農協,生協等による共済契約には適用されず,現行法上,共済契約に関する一般的な契約ルールはありません。しかし,現代社会においては共済契約が社会的に重要な役割を果たしており,保障機能という点では保険契約と共通していることから,同一の契約ルールを適用することが適切です。
そこで,保険法では,保険契約と同等の内容を有する共済契約も適用の対象とすることとしています。
Q3 保険法と保険業法との関係は,どのようなものですか。
保険法は契約当事者間における契約ルールについて定めるものであるのに対し,保険業法は保険会社に対する監督(免許の内容,業務の内容の規制,罰則等)について定めるものであり,両者は役割を異にするものです。
なお,共済については,農業協同組合法,消費生活協同組合法等が協同組合に対する監督について定めています。
Q4 保険契約者等を保護するための規定として,どのようなものがありますか。
例えば,@契約締結時の告知について,保険者からの質問に答えれば足りることとするとともに,保険募集人による告知妨害等があった場合には,原則として保険者は告知義務違反を理由に契約を解除することができないこととしています。
また,A保険金の支払時期について,適正な保険金の支払のために必要な調査のための合理的な期間が経過した後は,保険者は遅滞の責任を負うこととしています。
さらに,Bこれらの規定よりも保険契約者等に不利な内容の定めを無効とすることとしています(片面的強行規定)。
Q5 施行期日はいつですか。
公布の日(平成20年6月6日)から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしています。
Q6 保険法が施行される前に締結された保険契約はどうなるのですか。
保険法の規定は,原則として,法律の施行日以後に締結された保険契約について適用することとしていますが,保険金の支払時期の規定,責任保険契約における先取特権の規定等,一部の規定については,施行日前に締結された保険契約にも適用することとしています。
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第一章 総則(第一条・第二条)
第二章 損害保険
第一節 成立(第三条―第七条)
第二節 効力(第八条―第十二条)
第三節 保険給付(第十三条―第二十六条)
第四節 終了(第二十七条―第三十三条)
第五節 傷害疾病損害保険の特則(第三十四条・第三十五条)
第六節 適用除外(第三十六条)
第三章 生命保険
第一節 成立(第三十七条―第四十一条)
第二節 効力(第四十二条―第四十九条)
第三節 保険給付(第五十条―第五十三条)
第四節 終了(第五十四条―第六十五条)
第四章 傷害疾病定額保険
第一節 成立(第六十六条―第七十条)
第二節 効力(第七十一条―第七十八条)
第三節 保険給付(第七十九条―第八十二条)
第四節 終了(第八十三条―第九十四条)
第五章 雑則(第九十五条・第九十六条)
附則
第一章 総則
(趣旨)
第一条 保険に係る契約の成立、効力、履行及び終了については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 保険契約
保険契約、共済契約その他いかなる名称であるかを問わず、当事者の一方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付(生命保険契約及び傷害疾病定額保険契約にあっては、金銭の支払に限る。以下「保険給付」という。)を行うことを約し、相手方がこれに対して当該一定の事由の発生の可能性に応じたものとして保険料(共済掛金を含む。以下同じ。)を支払うことを約する契約をいう。
共済も、本法により、規制される。当然でしょう。共済という名の保険なのだから。
二 保険者
保険契約の当事者のうち、保険給付を行う義務を負う者をいう。
三 保険契約者
保険契約の当事者のうち、保険料を支払う義務を負う者をいう。
四 被保険者 次のイからハまでに掲げる保険契約の区分に応じ、当該イからハまでに定める者をいう。
イ 損害保険契約
損害保険契約によりてん補することとされる損害を受ける者
ロ 生命保険契約
その者の生存又は死亡に関し保険者が保険給付を行うこととなる者
ハ 傷害疾病定額保険契約
その者の傷害又は疾病(以下「傷害疾病」という。)に基づき保険者が保険給付を行うこととなる者
第三分類も、本法により規制される。これも当然でしょう。
五 保険金受取人 保険給付を受ける者として生命保険契約又は傷害疾病定額保険契約で定めるものをいう。
六 損害保険契約 保険契約のうち、保険者が一定の偶然の事故によって生ずることのある損害をてん補することを約するものをいう。
七 傷害疾病損害保険契約 損害保険契約のうち、保険者が人の傷害疾病によって生ずることのある損害(当該傷害疾病が生じた者が受けるものに限る。)をてん補することを約するものをいう。
八 生命保険契約 保険契約のうち、保険者が人の生存又は死亡に関し一定の保険給付を行うことを約するもの(傷害疾病定額保険契約に該当するものを除く。)をいう。
九 傷害疾病定額保険契約 保険契約のうち、保険者が人の傷害疾病に基づき一定の保険給付を行うことを約するものをいう。
第二章 損害保険
第一節 成立
(損害保険契約の目的)
第三条 損害保険契約は、金銭に見積もることができる利益に限り、その目的とすることができる。
(告知義務)
第四条 保険契約者又は被保険者になる者は、損害保険契約の締結に際し、損害保険契約によりてん補することとされる損害の発生の可能性(以下この章において「危険」という。)に関する重要な事項のうち保険者になる者が告知を求めたもの(第二十八条第一項及び第二十九条第一項において「告知事項」という。)について、事実の告知をしなければならない。
(遡及保険)
第五条 損害保険契約を締結する前に発生した保険事故(損害保険契約によりてん補することとされる損害を生ずることのある偶然の事故として当該損害保険契約で定めるものをいう。以下この章において同じ。)による損害をてん補する旨の定めは、保険契約者が当該損害保険契約の申込み又はその承諾をした時において、当該保険契約者又は被保険者が既に保険事故が発生していることを知っていたときは、無効とする。
2 損害保険契約の申込みの時より前に発生した保険事故による損害をてん補する旨の定めは、保険者又は保険契約者が当該損害保険契約の申込みをした時において、当該保険者が保険事故が発生していないことを知っていたときは、無効とする。
(損害保険契約の締結時の書面交付)
第六条 保険者は、損害保険契約を締結したときは、遅滞なく、保険契約者に対し、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
一 保険者の氏名又は名称
二 保険契約者の氏名又は名称
三 被保険者の氏名又は名称その他の被保険者を特定するために必要な事項
四 保険事故
五 その期間内に発生した保険事故による損害をてん補するものとして損害保険契約で定める期間
六 保険金額(保険給付の限度額として損害保険契約で定めるものをいう。以下この章において同じ。)又は保険金額の定めがないときはその旨
七 保険の目的物(保険事故によって損害が生ずることのある物として損害保険契約で定めるものをいう。以下この章において同じ。)があるときは、これを特定するために必要な事項
八 第九条ただし書に規定する約定保険価額があるときは、その約定保険価額
九 保険料及びその支払の方法
十 第二十九条第一項第一号の通知をすべき旨が定められているときは、その旨
十一 損害保険契約を締結した年月日
十二 書面を作成した年月日
2 前項の書面には、保険者(法人その他の団体にあっては、その代表者)が署名し、又は記名押印しなければならない。
(強行規定)
第七条 第四条の規定に反する特約で保険契約者又は被保険者に不利なもの及び第五条第二項の規定に反する特約で保険契約者に不利なものは、無効とする。
第二節 効力
(第三者のためにする損害保険契約)
第八条 被保険者が損害保険契約の当事者以外の者であるときは、当該被保険者は、当然に当該損害保険契約の利益を享受する。
(超過保険)
第九条 損害保険契約の締結の時において保険金額が保険の目的物の価額(以下この章において「保険価額」という。)を超えていたことにつき保険契約者及び被保険者が善意でかつ重大な過失がなかったときは、保険契約者は、その超過部分について、当該損害保険契約を取り消すことができる。ただし、保険価額について約定した一定の価額(以下この章において「約定保険価額」という。)があるときは、この限りでない。
(保険価額の減少)
第十条 損害保険契約の締結後に保険価額が著しく減少したときは、保険契約者は、保険者に対し、将来に向かって、保険金額又は約定保険価額については減少後の保険価額に至るまでの減額を、保険料についてはその減額後の保険金額に対応する保険料に至るまでの減額をそれぞれ請求することができる。
(危険の減少)
第十一条 損害保険契約の締結後に危険が著しく減少したときは、保険契約者は、保険者に対し、将来に向かって、保険料について、減少後の当該危険に対応する保険料に至るまでの減額を請求することができる。
(強行規定)
第十二条 第八条の規定に反する特約で被保険者に不利なもの及び第九条本文又は前二条の規定に反する特約で保険契約者に不利なものは、無効とする。
第三節 保険給付
(損害の発生及び拡大の防止)
第十三条 保険契約者及び被保険者は、保険事故が発生したことを知ったときは、これによる損害の発生及び拡大の防止に努めなければならない。
(損害発生の通知)
第十四条 保険契約者又は被保険者は、保険事故による損害が生じたことを知ったときは、遅滞なく、保険者に対し、その旨の通知を発しなければならない。
(損害発生後の保険の目的物の滅失)
第十五条 保険者は、保険事故による損害が生じた場合には、当該損害に係る保険の目的物が当該損害の発生後に保険事故によらずに滅失したときであっても、当該損害をてん補しなければならない。
(火災保険契約による損害てん補の特則)
第十六条 火災を保険事故とする損害保険契約の保険者は、保険事故が発生していないときであっても、消火、避難その他の消防の活動のために必要な処置によって保険の目的物に生じた損害をてん補しなければならない。
(保険者の免責)
第十七条 保険者は、保険契約者又は被保険者の故意又は重大な過失によって生じた損害をてん補する責任を負わない。戦争その他の変乱によって生じた損害についても、同様とする。
2 責任保険契約(損害保険契約のうち、被保険者が損害賠償の責任を負うことによって生ずることのある損害をてん補するものをいう。以下同じ。)に関する前項の規定の適用については、同項中「故意又は重大な過失」とあるのは、「故意」とする。
(損害額の算定)
第十八条 損害保険契約によりてん補すべき損害の額(以下この章において「てん補損害額」という。)は、その損害が生じた地及び時における価額によって算定する。
2 約定保険価額があるときは、てん補損害額は、当該約定保険価額によって算定する。ただし、当該約定保険価額が保険価額を著しく超えるときは、てん補損害額は、当該保険価額によって算定する。
(一部保険)
第十九条 保険金額が保険価額(約定保険価額があるときは、当該約定保険価額)に満たないときは、保険者が行うべき保険給付の額は、当該保険金額の当該保険価額に対する割合をてん補損害額に乗じて得た額とする。
(重複保険)
第二十条 損害保険契約によりてん補すべき損害について他の損害保険契約がこれをてん補することとなっている場合においても、保険者は、てん補損害額の全額(前条に規定する場合にあっては、同条の規定により行うべき保険給付の額の全額)について、保険給付を行う義務を負う。
2 二以上の損害保険契約の各保険者が行うべき保険給付の額の合計額がてん補損害額(各損害保険契約に基づいて算定したてん補損害額が異なるときは、そのうち最も高い額。以下この項において同じ。)を超える場合において、保険者の一人が自己の負担部分(他の損害保険契約がないとする場合における各保険者が行うべき保険給付の額のその合計額に対する割合をてん補損害額に乗じて得た額をいう。以下この項において同じ。)を超えて保険給付を行い、これにより共同の免責を得たときは、当該保険者は、自己の負担部分を超える部分に限り、他の保険者に対し、各自の負担部分について求償権を有する。
(保険給付の履行期)
第二十一条 保険給付を行う期限を定めた場合であっても、当該期限が、保険事故、てん補損害額、保険者が免責される事由その他の保険給付を行うために確認をすることが損害保険契約上必要とされる事項の確認をするための相当の期間を経過する日後の日であるときは、当該期間を経過する日をもって保険給付を行う期限とする。
2 保険給付を行う期限を定めなかったときは、保険者は、保険給付の請求があった後、当該請求に係る保険事故及びてん補損害額の確認をするために必要な期間を経過するまでは、遅滞の責任を負わない。
3 保険者が前二項に規定する確認をするために必要な調査を行うに当たり、保険契約者又は被保険者が正当な理由なく当該調査を妨げ、又はこれに応じなかった場合には、保険者は、これにより保険給付を遅延した期間について、遅滞の責任を負わない。
(責任保険契約についての先取特権)
第二十二条 責任保険契約の被保険者に対して当該責任保険契約の保険事故に係る損害賠償請求権を有する者は、保険給付を請求する権利について先取特権を有する。
2 被保険者は、前項の損害賠償請求権に係る債務について弁済をした金額又は当該損害賠償請求権を有する者の承諾があった金額の限度においてのみ、保険者に対して保険給付を請求する権利を行使することができる。
3 責任保険契約に基づき保険給付を請求する権利は、譲り渡し、質権の目的とし、又は差し押さえることができない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
一 第一項の損害賠償請求権を有する者に譲り渡し、又は当該損害賠償請求権に関して差し押さえる場合
二 前項の規定により被保険者が保険給付を請求する権利を行使することができる場合
(費用の負担)
第二十三条 次に掲げる費用は、保険者の負担とする。
一 てん補損害額の算定に必要な費用
二 第十三条の場合において、損害の発生又は拡大の防止のために必要又は有益であった費用
2 第十九条の規定は、前項第二号に掲げる費用の額について準用する。この場合において、同条中「てん補損害額」とあるのは、「第二十三条第一項第二号に掲げる費用の額」と読み替えるものとする。
(残存物代位)
第二十四条 保険者は、保険の目的物の全部が滅失した場合において、保険給付を行ったときは、当該保険給付の額の保険価額(約定保険価額があるときは、当該約定保険価額)に対する割合に応じて、当該保険の目的物に関して被保険者が有する所有権その他の物権について当然に被保険者に代位する。
(請求権代位)
第二十五条 保険者は、保険給付を行ったときは、次に掲げる額のうちいずれか少ない額を限度として、保険事故による損害が生じたことにより被保険者が取得する債権(債務の不履行その他の理由により債権について生ずることのある損害をてん補する損害保険契約においては、当該債権を含む。以下この条において「被保険者債権」という。)について当然に被保険者に代位する。
一 当該保険者が行った保険給付の額
二 被保険者債権の額(前号に掲げる額がてん補損害額に不足するときは、被保険者債権の額から当該不足額を控除した残額)
2 前項の場合において、同項第一号に掲げる額がてん補損害額に不足するときは、被保険者は、被保険者債権のうち保険者が同項の規定により代位した部分を除いた部分について、当該代位に係る保険者の債権に先立って弁済を受ける権利を有する。
(強行規定)
第二十六条 第十五条、第二十一条第一項若しくは第三項又は前二条の規定に反する特約で被保険者に不利なものは、無効とする。
第四節 終了
(保険契約者による解除)
第二十七条 保険契約者は、いつでも損害保険契約を解除することができる。
(告知義務違反による解除)
第二十八条 保険者は、保険契約者又は被保険者が、告知事項について、故意又は重大な過失により事実の告知をせず、又は不実の告知をしたときは、損害保険契約を解除することができる。
2 保険者は、前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、損害保険契約を解除することができない。
一 損害保険契約の締結の時において、保険者が前項の事実を知り、又は過失によって知らなかったとき。
二 保険者のために保険契約の締結の媒介を行うことができる者(保険者のために保険契約の締結の代理を行うことができる者を除く。以下「保険媒介者」という。)が、保険契約者又は被保険者が前項の事実の告知をすることを妨げたとき。
三 保険媒介者が、保険契約者又は被保険者に対し、前項の事実の告知をせず、又は不実の告知をすることを勧めたとき。
3 前項第二号及び第三号の規定は、当該各号に規定する保険媒介者の行為がなかったとしても保険契約者又は被保険者が第一項の事実の告知をせず、又は不実の告知をしたと認められる場合には、適用しない。
4 第一項の規定による解除権は、保険者が同項の規定による解除の原因があることを知った時から一箇月間行使しないときは、消滅する。損害保険契約の締結の時から五年を経過したときも、同様とする。
(危険増加による解除)
第二十九条 損害保険契約の締結後に危険増加(告知事項についての危険が高くなり、損害保険契約で定められている保険料が当該危険を計算の基礎として算出される保険料に不足する状態になることをいう。以下この条及び第三十一条第二項第二号において同じ。)が生じた場合において、保険料を当該危険増加に対応した額に変更するとしたならば当該損害保険契約を継続することができるときであっても、保険者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、当該損害保険契約を解除することができる。
一 当該危険増加に係る告知事項について、その内容に変更が生じたときは保険契約者又は被保険者が保険者に遅滞なくその旨の通知をすべき旨が当該損害保険契約で定められていること。
二 保険契約者又は被保険者が故意又は重大な過失により遅滞なく前号の通知をしなかったこと。
2 前条第四項の規定は、前項の規定による解除権について準用する。この場合において、同条第四項中「損害保険契約の締結の時」とあるのは、「次条第一項に規定する危険増加が生じた時」と読み替えるものとする。
(重大事由による解除)
第三十条 保険者は、次に掲げる事由がある場合には、損害保険契約を解除することができる。
一 保険契約者又は被保険者が、保険者に当該損害保険契約に基づく保険給付を行わせることを目的として損害を生じさせ、又は生じさせようとしたこと。
二 被保険者が、当該損害保険契約に基づく保険給付の請求について詐欺を行い、又は行おうとしたこと。
三 前二号に掲げるもののほか、保険者の保険契約者又は被保険者に対する信頼を損ない、当該損害保険契約の存続を困難とする重大な事由
(解除の効力)
第三十一条 損害保険契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。
2 保険者は、次の各号に掲げる規定により損害保険契約の解除をした場合には、当該各号に定める損害をてん補する責任を負わない。
一 第二十八条第一項 解除がされた時までに発生した保険事故による損害。ただし、同項の事実に基づかずに発生した保険事故による損害については、この限りでない。
二 第二十九条第一項 解除に係る危険増加が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故による損害。ただし、当該危険増加をもたらした事由に基づかずに発生した保険事故による損害については、この限りでない。
三 前条 同条各号に掲げる事由が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故による損害
(保険料の返還の制限)
第三十二条 保険者は、次に掲げる場合には、保険料を返還する義務を負わない。
一 保険契約者又は被保険者の詐欺又は強迫を理由として損害保険契約に係る意思表示を取り消した場合
二 損害保険契約が第五条第一項の規定により無効とされる場合。ただし、保険者が保険事故の発生を知って当該損害保険契約の申込み又はその承諾をしたときは、この限りでない。
(強行規定)
第三十三条 第二十八条第一項から第三項まで、第二十九条第一項、第三十条又は第三十一条の規定に反する特約で保険契約者又は被保険者に不利なものは、無効とする。
2 前条の規定に反する特約で保険契約者に不利なものは、無効とする。
第五節 傷害疾病損害保険の特則
(被保険者による解除請求)
第三十四条 被保険者が傷害疾病損害保険契約の当事者以外の者であるときは、当該被保険者は、保険契約者に対し、当該保険契約者との間に別段の合意がある場合を除き、当該傷害疾病損害保険契約を解除することを請求することができる。
2 保険契約者は、前項の規定により傷害疾病損害保険契約を解除することの請求を受けたときは、当該傷害疾病損害保険契約を解除することができる。
(傷害疾病損害保険契約に関する読替え)
第三十五条 傷害疾病損害保険契約における第一節から前節までの規定の適用については、第五条第一項、第十四条、第二十一条第三項及び第二十六条中「被保険者」とあるのは「被保険者(被保険者の死亡によって生ずる損害をてん補する傷害疾病損害保険契約にあっては、その相続人)」と、第五条第一項中「保険事故が発生している」とあるのは「保険事故による損害が生じている」と、同条第二項中「保険事故が発生していない」とあるのは「保険事故による損害が生じていない」と、第十七条第一項、第三十条及び第三十二条第一号中「被保険者」とあるのは「被保険者(被保険者の死亡によって生ずる損害をてん補する傷害疾病損害保険契約にあっては、被保険者又はその相続人)」と、第二十五条第一項中「被保険者が」とあるのは「被保険者(被保険者の死亡によって生ずる損害をてん補する傷害疾病損害保険契約にあっては、その相続人。以下この条において同じ。)が」と、第三十二条第二号中「保険事故の発生」とあるのは「保険事故による損害が生じていること」と、第三十三条第一項中「、第三十条又は第三十一条」とあるのは「又は第三十一条」と、「不利なものは」とあるのは「不利なもの及び第三十条の規定に反する特約で保険契約者又は被保険者(被保険者の死亡によって生ずる損害をてん補する傷害疾病損害保険契約にあっては、被保険者又はその相続人)に不利なものは」とする。
第六節 適用除外
第三十六条 第七条、第十二条、第二十六条及び第三十三条の規定は、次に掲げる損害保険契約については、適用しない。
一 商法(明治三十二年法律第四十八号)第八百十五条第一項に規定する海上保険契約
二 航空機若しくは航空機により運送される貨物を保険の目的物とする損害保険契約又は航空機の事故により生じた損害を賠償する責任に係る責任保険契約
三 原子力施設を保険の目的物とする損害保険契約又は原子力施設の事故により生じた損害を賠償する責任に係る責任保険契約
四 前三号に掲げるもののほか、法人その他の団体又は事業を行う個人の事業活動に伴って生ずることのある損害をてん補する損害保険契約(傷害疾病損害保険契約に該当するものを除く。)
第三章 生命保険
第一節 成立
(告知義務)
第三十七条 保険契約者又は被保険者になる者は、生命保険契約の締結に際し、保険事故(被保険者の死亡又は一定の時点における生存をいう。以下この章において同じ。)の発生の可能性(以下この章において「危険」という。)に関する重要な事項のうち保険者になる者が告知を求めたもの(第五十五条第一項及び第五十六条第一項において「告知事項」という。)について、事実の告知をしなければならない。
(被保険者の同意)
第三十八条 生命保険契約の当事者以外の者を被保険者とする死亡保険契約(保険者が被保険者の死亡に関し保険給付を行うことを約する生命保険契約をいう。以下この章において同じ。)は、当該被保険者の同意がなければ、その効力を生じない。
(遡及保険)
第三十九条 死亡保険契約を締結する前に発生した保険事故に関し保険給付を行う旨の定めは、保険契約者が当該死亡保険契約の申込み又はその承諾をした時において、当該保険契約者又は保険金受取人が既に保険事故が発生していることを知っていたときは、無効とする。
2 死亡保険契約の申込みの時より前に発生した保険事故に関し保険給付を行う旨の定めは、保険者又は保険契約者が当該死亡保険契約の申込みをした時において、当該保険者が保険事故が発生していないことを知っていたときは、無効とする。
(生命保険契約の締結時の書面交付)
第四十条 保険者は、生命保険契約を締結したときは、遅滞なく、保険契約者に対し、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
一 保険者の氏名又は名称
二 保険契約者の氏名又は名称
三 被保険者の氏名その他の被保険者を特定するために必要な事項
四 保険金受取人の氏名又は名称その他の保険金受取人を特定するために必要な事項
五 保険事故
六 その期間内に保険事故が発生した場合に保険給付を行うものとして生命保険契約で定める期間
七 保険給付の額及びその方法
八 保険料及びその支払の方法
九 第五十六条第一項第一号の通知をすべき旨が定められているときは、その旨
十 生命保険契約を締結した年月日
十一 書面を作成した年月日
2 前項の書面には、保険者(法人その他の団体にあっては、その代表者)が署名し、又は記名押印しなければならない。
(強行規定)
第四十一条 第三十七条の規定に反する特約で保険契約者又は被保険者に不利なもの及び第三十九条第二項の規定に反する特約で保険契約者に不利なものは、無効とする。
第二節 効力
(第三者のためにする生命保険契約)
第四十二条 保険金受取人が生命保険契約の当事者以外の者であるときは、当該保険金受取人は、当然に当該生命保険契約の利益を享受する。
(保険金受取人の変更)
第四十三条 保険契約者は、保険事故が発生するまでは、保険金受取人の変更をすることができる。
2 保険金受取人の変更は、保険者に対する意思表示によってする。
3 前項の意思表示は、その通知が保険者に到達したときは、当該通知を発した時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、その到達前に行われた保険給付の効力を妨げない。
(遺言による保険金受取人の変更)
第四十四条 保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる。
2 遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない。
(保険金受取人の変更についての被保険者の同意)
第四十五条 死亡保険契約の保険金受取人の変更は、被保険者の同意がなければ、その効力を生じない。
(保険金受取人の死亡)
第四十六条 保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる。
(保険給付請求権の譲渡等についての被保険者の同意)
第四十七条 死亡保険契約に基づき保険給付を請求する権利の譲渡又は当該権利を目的とする質権の設定(保険事故が発生した後にされたものを除く。)は、被保険者の同意がなければ、その効力を生じない。
(危険の減少)
第四十八条 生命保険契約の締結後に危険が著しく減少したときは、保険契約者は、保険者に対し、将来に向かって、保険料について、減少後の当該危険に対応する保険料に至るまでの減額を請求することができる。
(強行規定)
第四十九条 第四十二条の規定に反する特約で保険金受取人に不利なもの及び前条の規定に反する特約で保険契約者に不利なものは、無効とする。
第三節 保険給付
(被保険者の死亡の通知)
第五十条 死亡保険契約の保険契約者又は保険金受取人は、被保険者が死亡したことを知ったときは、遅滞なく、保険者に対し、その旨の通知を発しなければならない。
(保険者の免責)
第五十一条 死亡保険契約の保険者は、次に掲げる場合には、保険給付を行う責任を負わない。ただし、第三号に掲げる場合には、被保険者を故意に死亡させた保険金受取人以外の保険金受取人に対する責任については、この限りでない。
一 被保険者が自殺をしたとき。
二 保険契約者が被保険者を故意に死亡させたとき(前号に掲げる場合を除く。)。
三 保険金受取人が被保険者を故意に死亡させたとき(前二号に掲げる場合を除く。)。
四 戦争その他の変乱によって被保険者が死亡したとき。
(保険給付の履行期)
第五十二条 保険給付を行う期限を定めた場合であっても、当該期限が、保険事故、保険者が免責される事由その他の保険給付を行うために確認をすることが生命保険契約上必要とされる事項の確認をするための相当の期間を経過する日後の日であるときは、当該期間を経過する日をもって保険給付を行う期限とする。
2 保険給付を行う期限を定めなかったときは、保険者は、保険給付の請求があった後、当該請求に係る保険事故の確認をするために必要な期間を経過するまでは、遅滞の責任を負わない。
3 保険者が前二項に規定する確認をするために必要な調査を行うに当たり、保険契約者、被保険者又は保険金受取人が正当な理由なく当該調査を妨げ、又はこれに応じなかった場合には、保険者は、これにより保険給付を遅延した期間について、遅滞の責任を負わない。
(強行規定)
第五十三条 前条第一項又は第三項の規定に反する特約で保険金受取人に不利なものは、無効とする。
第四節 終了
(保険契約者による解除)
第五十四条 保険契約者は、いつでも生命保険契約を解除することができる。
(告知義務違反による解除)
第五十五条 保険者は、保険契約者又は被保険者が、告知事項について、故意又は重大な過失により事実の告知をせず、又は不実の告知をしたときは、生命保険契約を解除することができる。
2 保険者は、前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、生命保険契約を解除することができない。
一 生命保険契約の締結の時において、保険者が前項の事実を知り、又は過失によって知らなかったとき。
二 保険媒介者が、保険契約者又は被保険者が前項の事実の告知をすることを妨げたとき。
三 保険媒介者が、保険契約者又は被保険者に対し、前項の事実の告知をせず、又は不実の告知をすることを勧めたとき。
3 前項第二号及び第三号の規定は、当該各号に規定する保険媒介者の行為がなかったとしても保険契約者又は被保険者が第一項の事実の告知をせず、又は不実の告知をしたと認められる場合には、適用しない。
4 第一項の規定による解除権は、保険者が同項の規定による解除の原因があることを知った時から一箇月間行使しないときは、消滅する。生命保険契約の締結の時から五年を経過したときも、同様とする。
(危険増加による解除)
第五十六条 生命保険契約の締結後に危険増加(告知事項についての危険が高くなり、生命保険契約で定められている保険料が当該危険を計算の基礎として算出される保険料に不足する状態になることをいう。以下この条及び第五十九条第二項第二号において同じ。)が生じた場合において、保険料を当該危険増加に対応した額に変更するとしたならば当該生命保険契約を継続することができるときであっても、保険者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、当該生命保険契約を解除することができる。
一 当該危険増加に係る告知事項について、その内容に変更が生じたときは保険契約者又は被保険者が保険者に遅滞なくその旨の通知をすべき旨が当該生命保険契約で定められていること。
二 保険契約者又は被保険者が故意又は重大な過失により遅滞なく前号の通知をしなかったこと。
2 前条第四項の規定は、前項の規定による解除権について準用する。この場合において、同条第四項中「生命保険契約の締結の時」とあるのは、「次条第一項に規定する危険増加が生じた時」と読み替えるものとする。
(重大事由による解除)
第五十七条 保険者は、次に掲げる事由がある場合には、生命保険契約(第一号の場合にあっては、死亡保険契約に限る。)を解除することができる。
一 保険契約者又は保険金受取人が、保険者に保険給付を行わせることを目的として故意に被保険者を死亡させ、又は死亡させようとしたこと。
二 保険金受取人が、当該生命保険契約に基づく保険給付の請求について詐欺を行い、又は行おうとしたこと。
三 前二号に掲げるもののほか、保険者の保険契約者、被保険者又は保険金受取人に対する信頼を損ない、当該生命保険契約の存続を困難とする重大な事由
(被保険者による解除請求)
第五十八条 死亡保険契約の被保険者が当該死亡保険契約の当事者以外の者である場合において、次に掲げるときは、当該被保険者は、保険契約者に対し、当該死亡保険契約を解除することを請求することができる。
一 前条第一号又は第二号に掲げる事由がある場合
二 前号に掲げるもののほか、被保険者の保険契約者又は保険金受取人に対する信頼を損ない、当該死亡保険契約の存続を困難とする重大な事由がある場合
三 保険契約者と被保険者との間の親族関係の終了その他の事情により、被保険者が第三十八条の同意をするに当たって基礎とした事情が著しく変更した場合
2 保険契約者は、前項の規定により死亡保険契約を解除することの請求を受けたときは、当該死亡保険契約を解除することができる。
(解除の効力)
第五十九条 生命保険契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。
2 保険者は、次の各号に掲げる規定により生命保険契約の解除をした場合には、当該各号に定める保険事故に関し保険給付を行う責任を負わない。
一 第五十五条第一項 解除がされた時までに発生した保険事故。ただし、同項の事実に基づかずに発生した保険事故については、この限りでない。
二 第五十六条第一項 解除に係る危険増加が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故。ただし、当該危険増加をもたらした事由に基づかずに発生した保険事故については、この限りでない。
三 第五十七条 同条各号に掲げる事由が生じた時から解除がされた時までに発生した保険事故
(契約当事者以外の者による解除の効力等)
第六十条 差押債権者、破産管財人その他の死亡保険契約(第六十三条に規定する保険料積立金があるものに限る。次項及び次条第一項において同じ。)の当事者以外の者で当該死亡保険契約の解除をすることができるもの(次項及び第六十二条において「解除権者」という。)がする当該解除は、保険者がその通知を受けた時から一箇月を経過した日に、その効力を生ずる。
2 保険金受取人(前項に規定する通知の時において、保険契約者である者を除き、保険契約者若しくは被保険者の親族又は被保険者である者に限る。次項及び次条において「介入権者」という。)が、保険契約者の同意を得て、前項の期間が経過するまでの間に、当該通知の日に当該死亡保険契約の解除の効力が生じたとすれば保険者が解除権者に対して支払うべき金額を解除権者に対して支払い、かつ、保険者に対してその旨の通知をしたときは、同項に規定する解除は、その効力を生じない。
3 第一項に規定する解除の意思表示が差押えの手続又は保険契約者の破産手続、再生手続若しくは更生手続においてされたものである場合において、介入権者が前項の規定による支払及びその旨の通知をしたときは、当該差押えの手続、破産手続、再生手続又は更生手続との関係においては、保険者が当該解除により支払うべき金銭の支払をしたものとみなす。
第六十一条 死亡保険契約の解除により保険契約者が保険者に対して有することとなる金銭債権を差し押さえた債権者が前条第一項に規定する通知をした場合において、同条第二項の規定による支払の時に保険者が当該差押えに係る金銭債権の支払をするとすれば民事執行法(昭和五十四年法律第四号)その他の法令の規定による供託をすることができるときは、介入権者は、当該供託の方法により同項の規定による支払をすることができる。
2 前項の通知があった場合において、前条第二項の規定による支払の時に保険者が当該差押えに係る金銭債権の支払をするとすれば民事執行法その他の法令の規定による供託の義務を負うときは、介入権者は、当該供託の方法により同項の規定による支払をしなければならない。
3 介入権者が前二項の規定により供託の方法による支払をしたときは、当該供託に係る差押えの手続との関係においては、保険者が当該差押えに係る金銭債権につき当該供託の方法による支払をしたものとみなす。
4 介入権者は、第一項又は第二項の規定による供託をしたときは、民事執行法その他の法令の規定により第三債務者が執行裁判所その他の官庁又は公署に対してすべき届出をしなければならない。
第六十二条 第六十条第一項に規定する通知の時から同項に規定する解除の効力が生じ、又は同条第二項の規定により当該解除の効力が生じないこととなるまでの間に保険事故が発生したことにより保険者が保険給付を行うべきときは、当該保険者は、当該保険給付を行うべき額の限度で、解除権者に対し、同項に規定する金額を支払わなければならない。この場合において、保険金受取人に対しては、当該保険給付を行うべき額から当該解除権者に支払った金額を控除した残額について保険給付を行えば足りる。
2 前条の規定は、前項の規定による保険者の解除権者に対する支払について準用する。
(保険料積立金の払戻し)
第六十三条 保険者は、次に掲げる事由により生命保険契約が終了した場合には、保険契約者に対し、当該終了の時における保険料積立金(受領した保険料の総額のうち、当該生命保険契約に係る保険給付に充てるべきものとして、保険料又は保険給付の額を定めるための予定死亡率、予定利率その他の計算の基礎を用いて算出される金額に相当する部分をいう。)を払い戻さなければならない。ただし、保険者が保険給付を行う責任を負うときは、この限りでない。
一 第五十一条各号(第二号を除く。)に規定する事由
二 保険者の責任が開始する前における第五十四条又は第五十八条第二項の規定による解除
三 第五十六条第一項の規定による解除
四 第九十六条第一項の規定による解除又は同条第二項の規定による当該生命保険契約の失効
(保険料の返還の制限)
第六十四条 保険者は、次に掲げる場合には、保険料を返還する義務を負わない。
一 保険契約者、被保険者又は保険金受取人の詐欺又は強迫を理由として生命保険契約に係る意思表示を取り消した場合
二 死亡保険契約が第三十九条第一項の規定により無効とされる場合。ただし、保険者が保険事故の発生を知って当該死亡保険契約の申込み又はその承諾をしたときは、この限りでない。
(強行規定)
第六十五条 次の各号に掲げる規定に反する特約で当該各号に定める者に不利なものは、無効とする。
一 第五十五条第一項から第三項まで又は第五十六条第一項 保険契約者又は被保険者
二 第五十七条又は第五十九条 保険契約者、被保険者又は保険金受取人
三 前二条 保険契約者
第四章 傷害疾病定額保険
第一節 成立
(告知義務)
第六十六条 保険契約者又は被保険者になる者は、傷害疾病定額保険契約の締結に際し、給付事由(傷害疾病による治療、死亡その他の保険給付を行う要件として傷害疾病定額保険契約で定める事由をいう。以下この章において同じ。)の発生の可能性(以下この章において「危険」という。)に関する重要な事項のうち保険者になる者が告知を求めたもの(第八十四条第一項及び第八十五条第一項において「告知事項」という。)について、事実の告知をしなければならない。
(被保険者の同意)
第六十七条 傷害疾病定額保険契約の当事者以外の者を被保険者とする傷害疾病定額保険契約は、当該被保険者の同意がなければ、その効力を生じない。ただし、被保険者(被保険者の死亡に関する保険給付にあっては、被保険者又はその相続人)が保険金受取人である場合は、この限りでない。
2 前項ただし書の規定は、給付事由が傷害疾病による死亡のみである傷害疾病定額保険契約については、適用しない。
(遡及保険)
第六十八条 傷害疾病定額保険契約を締結する前に発生した給付事由に基づき保険給付を行う旨の定めは、保険契約者が当該傷害疾病定額保険契約の申込み又はその承諾をした時において、当該保険契約者、被保険者又は保険金受取人が既に給付事由が発生していることを知っていたときは、無効とする。
2 傷害疾病定額保険契約の申込みの時より前に発生した給付事由に基づき保険給付を行う旨の定めは、保険者又は保険契約者が当該傷害疾病定額保険契約の申込みをした時において、当該保険者が給付事由が発生していないことを知っていたときは、無効とする。
(傷害疾病定額保険契約の締結時の書面交付)
第六十九条 保険者は、傷害疾病定額保険契約を締結したときは、遅滞なく、保険契約者に対し、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない。
一 保険者の氏名又は名称
二 保険契約者の氏名又は名称
三 被保険者の氏名その他の被保険者を特定するために必要な事項
四 保険金受取人の氏名又は名称その他の保険金受取人を特定するために必要な事項
五 給付事由
六 その期間内に傷害疾病又は給付事由が発生した場合に保険給付を行うものとして傷害疾病定額保険契約で定める期間
七 保険給付の額及びその方法
八 保険料及びその支払の方法
九 第八十五条第一項第一号の通知をすべき旨が定められているときは、その旨
十 傷害疾病定額保険契約を締結した年月日
十一 書面を作成した年月日
2 前項の書面には、保険者(法人その他の団体にあっては、その代表者)が署名し、又は記名押印しなければならない。
(強行規定)
第七十条 第六十六条の規定に反する特約で保険契約者又は被保険者に不利なもの及び第六十八条第二項の規定に反する特約で保険契約者に不利なものは、無効とする。
第二節 効力
(第三者のためにする傷害疾病定額保険契約)
第七十一条 保険金受取人が傷害疾病定額保険契約の当事者以外の者であるときは、当該保険金受取人は、当然に当該傷害疾病定額保険契約の利益を享受する。
(保険金受取人の変更)
第七十二条 保険契約者は、給付事由が発生するまでは、保険金受取人の変更をすることができる。
2 保険金受取人の変更は、保険者に対する意思表示によってする。
3 前項の意思表示は、その通知が保険者に到達したときは、当該通知を発した時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、その到達前に行われた保険給付の効力を妨げない。
(遺言による保険金受取人の変更)
第七十三条 保険金受取人の変更は、遺言によっても、することができる。
2 遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない。
(保険金受取人の変更についての被保険者の同意)
第七十四条 保険金受取人の変更は、被保険者の同意がなければ、その効力を生じない。ただし、変更後の保険金受取人が被保険者(被保険者の死亡に関する保険給付にあっては、被保険者又はその相続人)である場合は、この限りでない。
2 前項ただし書の規定は、給付事由が傷害疾病による死亡のみである傷害疾病定額保険契約については、適用しない。
(保険金受取人の死亡)
第七十五条 保険金受取人が給付事由の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる。
(保険給付請求権の譲渡等についての被保険者の同意)
第七十六条 保険給付を請求する権利の譲渡又は当該権利を目的とする質権の設定(給付事由が発生した後にされたものを除く。)は、被保険者の同意がなければ、その効力を生じない。
(危険の減少)
第七十七条 傷害疾病定額保険契約の締結後に危険が著しく減少したときは、保険契約者は、保険者に対し、将来に向かって、保険料について、減少後の当該危険に対応する保険料に至るまでの減額を請求することができる。
(強行規定)
第七十八条 第七十一条の規定に反する特約で保険金受取人に不利なもの及び前条の規定に反する特約で保険契約者に不利なものは、無効とする。
第三節 保険給付
(給付事由発生の通知)
第七十九条 保険契約者、被保険者又は保険金受取人は、給付事由が発生したことを知ったときは、遅滞なく、保険者に対し、その旨の通知を発しなければならない。
(保険者の免責)
第八十条 保険者は、次に掲げる場合には、保険給付を行う責任を負わない。ただし、第三号に掲げる場合には、給付事由を発生させた保険金受取人以外の保険金受取人に対する責任については、この限りでない。
一 被保険者が故意又は重大な過失により給付事由を発生させたとき。
二 保険契約者が故意又は重大な過失により給付事由を発生させたとき(前号に掲げる場合を除く。)。
三 保険金受取人が故意又は重大な過失により給付事由を発生させたとき(前二号に掲げる場合を除く。)。
四 戦争その他の変乱によって給付事由が発生したとき。
(保険給付の履行期)
第八十一条 保険給付を行う期限を定めた場合であっても、当該期限が、給付事由、保険者が免責される事由その他の保険給付を行うために確認をすることが傷害疾病定額保険契約上必要とされる事項の確認をするための相当の期間を経過する日後の日であるときは、当該期間を経過する日をもって保険給付を行う期限とする。
2 保険給付を行う期限を定めなかったときは、保険者は、保険給付の請求があった後、当該請求に係る給付事由の確認をするために必要な期間を経過するまでは、遅滞の責任を負わない。
3 保険者が前二項に規定する確認をするために必要な調査を行うに当たり、保険契約者、被保険者又は保険金受取人が正当な理由なく当該調査を妨げ、又はこれに応じなかった場合には、保険者は、これにより保険給付を遅延した期間について、遅滞の責任を負わない。
(強行規定)
第八十二条 前条第一項又は第三項の規定に反する特約で保険金受取人に不利なものは、無効とする。
第四節 終了
(保険契約者による解除)
第八十三条 保険契約者は、いつでも傷害疾病定額保険契約を解除することができる。
(告知義務違反による解除)
第八十四条 保険者は、保険契約者又は被保険者が、告知事項について、故意又は重大な過失により事実の告知をせず、又は不実の告知をしたときは、傷害疾病定額保険契約を解除することができる。
2 保険者は、前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、傷害疾病定額保険契約を解除することができない。
一 傷害疾病定額保険契約の締結の時において、保険者が前項の事実を知り、又は過失によって知らなかったとき。
二 保険媒介者が、保険契約者又は被保険者が前項の事実の告知をすることを妨げたとき。
三 保険媒介者が、保険契約者又は被保険者に対し、前項の事実の告知をせず、又は不実の告知をすることを勧めたとき。
3 前項第二号及び第三号の規定は、当該各号に規定する保険媒介者の行為がなかったとしても保険契約者又は被保険者が第一項の事実の告知をせず、又は不実の告知をしたと認められる場合には、適用しない。
4 第一項の規定による解除権は、保険者が同項の規定による解除の原因があることを知った時から一箇月間行使しないときは、消滅する。傷害疾病定額保険契約の締結の時から五年を経過したときも、同様とする。
(危険増加による解除)
第八十五条 傷害疾病定額保険契約の締結後に危険増加(告知事項についての危険が高くなり、傷害疾病定額保険契約で定められている保険料が当該危険を計算の基礎として算出される保険料に不足する状態になることをいう。以下この条及び第八十八条第二項第二号において同じ。)が生じた場合において、保険料を当該危険増加に対応した額に変更するとしたならば当該傷害疾病定額保険契約を継続することができるときであっても、保険者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、当該傷害疾病定額保険契約を解除することができる。
一 当該危険増加に係る告知事項について、その内容に変更が生じたときは保険契約者又は被保険者が保険者に遅滞なくその旨の通知をすべき旨が当該傷害疾病定額保険契約で定められていること。
二 保険契約者又は被保険者が故意又は重大な過失により遅滞なく前号の通知をしなかったこと。
2 前条第四項の規定は、前項の規定による解除権について準用する。この場合において、同条第四項中「傷害疾病定額保険契約の締結の時」とあるのは、「次条第一項に規定する危険増加が生じた時」と読み替えるものとする。
(重大事由による解除)
第八十六条 保険者は、次に掲げる事由がある場合には、傷害疾病定額保険契約を解除することができる。
一 保険契約者、被保険者又は保険金受取人が、保険者に当該傷害疾病定額保険契約に基づく保険給付を行わせることを目的として給付事由を発生させ、又は発生させようとしたこと。
二 保険金受取人が、当該傷害疾病定額保険契約に基づく保険給付の請求について詐欺を行い、又は行おうとしたこと。
三 前二号に掲げるもののほか、保険者の保険契約者、被保険者又は保険金受取人に対する信頼を損ない、当該傷害疾病定額保険契約の存続を困難とする重大な事由
(被保険者による解除請求)
第八十七条 被保険者が傷害疾病定額保険契約の当事者以外の者である場合において、次に掲げるときは、当該被保険者は、保険契約者に対し、当該傷害疾病定額保険契約を解除することを請求することができる。
一 第六十七条第一項ただし書に規定する場合(同項の同意がある場合を除く。)
二 前条第一号又は第二号に掲げる事由がある場合
三 前号に掲げるもののほか、被保険者の保険契約者又は保険金受取人に対する信頼を損ない、当該傷害疾病定額保険契約の存続を困難とする重大な事由がある場合
四 保険契約者と被保険者との間の親族関係の終了その他の事情により、被保険者が第六十七条第一項の同意をするに当たって基礎とした事情が著しく変更した場合
2 保険契約者は、前項の規定により傷害疾病定額保険契約を解除することの請求を受けたときは、当該傷害疾病定額保険契約を解除することができる。
(解除の効力)
第八十八条 傷害疾病定額保険契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。
2 保険者は、次の各号に掲げる規定により傷害疾病定額保険契約の解除をした場合には、当該各号に定める事由に基づき保険給付を行う責任を負わない。
一 第八十四条第一項 解除がされた時までに発生した傷害疾病。ただし、同項の事実に基づかずに発生した傷害疾病については、この限りでない。
二 第八十五条第一項 解除に係る危険増加が生じた時から解除がされた時までに発生した傷害疾病。ただし、当該危険増加をもたらした事由に基づかずに発生した傷害疾病については、この限りでない。
三 第八十六条 同条各号に掲げる事由が生じた時から解除がされた時までに発生した給付事由
(契約当事者以外の者による解除の効力等)
第八十九条 差押債権者、破産管財人その他の傷害疾病定額保険契約(第九十二条に規定する保険料積立金があるものに限る。以下この条から第九十一条までにおいて同じ。)の当事者以外の者で当該傷害疾病定額保険契約の解除をすることができるもの(次項及び同条において「解除権者」という。)がする当該解除は、保険者がその通知を受けた時から一箇月を経過した日に、その効力を生ずる。
2 保険金受取人(前項に規定する通知の時において、保険契約者である者を除き、保険契約者若しくは被保険者の親族又は被保険者である者に限る。次項及び次条において「介入権者」という。)が、保険契約者の同意を得て、前項の期間が経過するまでの間に、当該通知の日に当該傷害疾病定額保険契約の解除の効力が生じたとすれば保険者が解除権者に対して支払うべき金額を解除権者に対して支払い、かつ、保険者に対してその旨の通知をしたときは、同項に規定する解除は、その効力を生じない。
3 第一項に規定する解除の意思表示が差押えの手続又は保険契約者の破産手続、再生手続若しくは更生手続においてされたものである場合において、介入権者が前項の規定による支払及びその旨の通知をしたときは、当該差押えの手続、破産手続、再生手続又は更生手続との関係においては、保険者が当該解除により支払うべき金銭の支払をしたものとみなす。
第九十条 傷害疾病定額保険契約の解除により保険契約者が保険者に対して有することとなる金銭債権を差し押さえた債権者が前条第一項に規定する通知をした場合において、同条第二項の規定による支払の時に保険者が当該差押えに係る金銭債権の支払をするとすれば民事執行法その他の法令の規定による供託をすることができるときは、介入権者は、当該供託の方法により同項の規定による支払をすることができる。
2 前項の通知があった場合において、前条第二項の規定による支払の時に保険者が当該差押えに係る金銭債権の支払をするとすれば民事執行法その他の法令の規定による供託の義務を負うときは、介入権者は、当該供託の方法により同項の規定による支払をしなければならない。
3 介入権者が前二項の規定により供託の方法による支払をしたときは、当該供託に係る差押えの手続との関係においては、保険者が当該差押えに係る金銭債権につき当該供託の方法による支払をしたものとみなす。
4 介入権者は、第一項又は第二項の規定による供託をしたときは、民事執行法その他の法令の規定により第三債務者が執行裁判所その他の官庁又は公署に対してすべき届出をしなければならない。
第九十一条 第八十九条第一項に規定する通知の時から同項に規定する解除の効力が生じ、又は同条第二項の規定により当該解除の効力が生じないこととなるまでの間に給付事由が発生したことにより保険者が保険給付を行うべき場合において、当該保険給付を行うことにより傷害疾病定額保険契約が終了することとなるときは、当該保険者は、当該保険給付を行うべき額の限度で、解除権者に対し、同項に規定する金額を支払わなければならない。この場合において、保険金受取人に対しては、当該保険給付を行うべき額から当該解除権者に支払った金額を控除した残額について保険給付を行えば足りる。
2 前条の規定は、前項の規定による保険者の解除権者に対する支払について準用する。
(保険料積立金の払戻し)
第九十二条 保険者は、次に掲げる事由により傷害疾病定額保険契約が終了した場合には、保険契約者に対し、当該終了の時における保険料積立金(受領した保険料の総額のうち、当該傷害疾病定額保険契約に係る保険給付に充てるべきものとして、保険料又は保険給付の額を定めるための給付事由の発生率、予定利率その他の計算の基礎を用いて算出される金額に相当する部分をいう。)を払い戻さなければならない。ただし、保険者が保険給付を行う責任を負うときは、この限りでない。
一 第八十条各号(第二号を除く。)に規定する事由
二 保険者の責任が開始する前における第八十三条又は第八十七条第二項の規定による解除
三 第八十五条第一項の規定による解除
四 第九十六条第一項の規定による解除又は同条第二項の規定による当該傷害疾病定額保険契約の失効
(保険料の返還の制限)
第九十三条 保険者は、次に掲げる場合には、保険料を返還する義務を負わない。
一 保険契約者、被保険者又は保険金受取人の詐欺又は強迫を理由として傷害疾病定額保険契約に係る意思表示を取り消した場合
二 傷害疾病定額保険契約が第六十八条第一項の規定により無効とされる場合。ただし、保険者が給付事由の発生を知って当該傷害疾病定額保険契約の申込み又はその承諾をしたときは、この限りでない。
(強行規定)
第九十四条 次の各号に掲げる規定に反する特約で当該各号に定める者に不利なものは、無効とする。
一 第八十四条第一項から第三項まで又は第八十五条第一項 保険契約者又は被保険者
二 第八十六条又は第八十八条 保険契約者、被保険者又は保険金受取人
三 前二条 保険契約者
第五章 雑則
(消滅時効)
第九十五条 保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第六十三条又は第九十二条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、三年間行わないときは、時効によって消滅する。
2 保険料を請求する権利は、一年間行わないときは、時効によって消滅する。
(保険者の破産)
第九十六条 保険者が破産手続開始の決定を受けたときは、保険契約者は、保険契約を解除することができる。
2 保険契約者が前項の規定による保険契約の解除をしなかったときは、当該保険契約は、破産手続開始の決定の日から三箇月を経過した日にその効力を失う。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(経過措置の原則)
第二条 この法律の規定は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後に締結された保険契約について適用する。ただし、次条から附則第六条までに規定する規定の適用については、次条から附則第六条までに定めるところによる。
(旧損害保険契約に関する経過措置)
第三条 第十条、第十一条、第十二条(第十条及び第十一条の規定に反する特約に係る部分に限る。以下この項において同じ。)、第三十条(第三十五条の規定により読み替えて適用する場合を含む。以下この項において同じ。)、第三十一条第一項(第三十条又は第九十六条第一項の規定による解除に係る部分に限る。以下この項において同じ。)及び第二項第三号、第三十三条第一項(第三十条並びに第三十一条第一項及び第二項第三号の規定に反する特約に係る部分に限り、第三十五条の規定により読み替えて適用する場合を含む。)並びに第三十六条(第十二条及び第三十三条第一項(第三十条並びに第三十一条第一項及び第二項第三号の規定に反する特約に係る部分に限る。)に係る部分に限る。)の規定は、施行日前に締結された損害保険契約(以下この条において「旧損害保険契約」という。)についても、適用する。
2 旧損害保険契約の保険事故(第五条第一項に規定する保険事故をいう。以下この条において同じ。)が施行日以後に発生した場合には、第十五条、第二十一条(第三十五条の規定により読み替えて適用する場合を含む。)、第二十六条(第十五条並びに第二十一条第一項及び第三項(第三十五条の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定に反する特約に係る部分に限り、第三十五条の規定により読み替えて適用する場合を含む。)及び第三十六条(第二十六条(第十五条並びに第二十一条第一項及び第三項の規定に反する特約に係る部分に限る。)に係る部分に限る。)の規定を適用する。
3 旧損害保険契約の保険事故が施行日以後に発生した場合には、第二十二条第一項及び第二項の規定を適用する。
4 旧損害保険契約に基づき保険給付を請求する権利(施行日前に発生した保険事故に係るものを除く。)の譲渡又は当該権利を目的とする質権の設定若しくは差押えが施行日以後にされた場合には、第二十二条第三項の規定を適用する。
(旧生命保険契約に関する経過措置)
第四条 第四十七条(施行日以後にされた質権の設定に係る部分に限る。)、第四十八条、第四十九条(第四十八条の規定に反する特約に係る部分に限る。)、第五十七条、第五十九条第一項(第五十七条又は第九十六条第一項の規定による解除に係る部分に限る。以下この項において同じ。)及び第二項第三号並びに第六十五条第二号(第五十七条並びに第五十九条第一項及び第二項第三号の規定に反する特約に係る部分に限る。)の規定は、施行日前に締結された生命保険契約(次項において「旧生命保険契約」という。)についても、適用する。
2 旧生命保険契約の保険事故(第三十七条に規定する保険事故をいう。)が施行日以後に発生した場合には、第五十二条及び第五十三条の規定を適用する。
3 施行日前に締結された第三十八条に規定する死亡保険契約の解除権者(第六十条第一項に規定する解除権者をいう。)が施行日以後に当該死亡保険契約を解除した場合には、第六十条から第六十二条までの規定を適用する。
(旧傷害疾病定額保険契約に関する経過措置)
第五条 第七十六条(施行日以後にされた質権の設定に係る部分に限る。)、第七十七条、第七十八条(第七十七条の規定に反する特約に係る部分に限る。)、第八十六条、第八十八条第一項(第八十六条又は第九十六条第一項の規定による解除に係る部分に限る。以下この項において同じ。)及び第二項第三号並びに第九十四条第二号(第八十六条並びに第八十八条第一項及び第二項第三号の規定に反する特約に係る部分に限る。)の規定は、施行日前に締結された傷害疾病定額保険契約(以下この条において「旧傷害疾病定額保険契約」という。)についても、適用する。
2 旧傷害疾病定額保険契約の給付事由(第六十六条に規定する給付事由をいう。)が施行日以後に発生した場合には、第八十一条及び第八十二条の規定を適用する。
3 旧傷害疾病定額保険契約の解除権者(第八十九条第一項に規定する解除権者をいう。)が施行日以後に当該旧傷害疾病定額保険契約を解除した場合には、同条から第九十一条までの規定を適用する。
(保険者の破産に関する経過措置)
第六条 第九十六条の規定は、施行日前に締結された保険契約についても、適用する。