「あなたも私も、犯罪者??」
−巷に見かける30の犯罪−
連載執筆中(現在、NO3まで掲載!!)
大阪弁護士会所属
服 部 廣 志
その1
株式会社の取締役会、株主総会議事録等の書面のみでの作成と商業登記
事例
日本の株式会社のうち、90%以上の会社は日常的、常習的に犯罪行為を反復しており、その犯罪行為を幇助しているのは、その会社の顧問税理士であることが多い。
X税理士
社長、今年は取締役などの役員の改選期ですよ。
重任でいいですね。
登記しておいてあげますから、この取締役会議事録と株主総会議事録に、押印しておいて下さいね。
Y社長
Xさん。これでいいですか。押印しておきました。
登記の方、宜しくお願いします。
・・・・
・・・・・
このような会話などにより、日本の会社の役員変更登記手続きが行われることが圧倒的に多い。
株式会社の取締役会や株主総会は、その議事録の書面のみを持ち回り、押印を求めて体裁を整えても商法上、取締役会や株主総会が開催されたことにはならないのです。
商法は、実際に取締役会や株主総会が、会議体として開催されることを求めているのです。いくら、株主や取締役らが、それで(書面の持ち回りによる押印)いいと言っても、商法上は、取締役会や株主総会が開催されたことにはならず、そのような議事録は、偽りの議事録なのです。
このような偽りの議事録により、取締役会や株主総会が開催されたもとして、役員の改選の登記などをしたら、それは商業登記簿という公正証書等の原本に不実(偽り)の登記を掲載させたものとして、刑法157条に定める公正証書等原本不実記載の犯罪行為となるのです。
多くの他の会社も、同じようにしている、、ということは、このような犯罪行為をすることについての弁明にはなりません。それは、泥棒が捕まって、多くの泥棒がいるじゃん、、というような弁明と本質的には異ならないからなのです。
あなたは、いままで、何回の公正証書等原本等不実記載の犯罪を犯してきましたか? 会社を作って20年??、、ということは、、10回くらいの犯罪行為を反復してきているわけです。立派な犯罪の常習者です。
イ 公正証書原本等不実記載の罪
ロ 刑法157条
ハ 5年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑
刑法157条=公正証書原本不実記載等
公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2 公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
3 前二項の罪の未遂は、罰する。
では、、どうすればいいのか?
一年に一回、取締役と株主を招集して、会議を開けばいいのです。一年に一回、食事会でもいいでしょう。そして、取締役会と株主総会を開催するのです。一年に一回、30分で済む会議を開催しないことについて、弁明の余地などないでしょう。
その2
賭マージャン、賭ゴルフ
事例
こころウキウキゴルフ場スタート場所
X幹事
お〜〜い! 全員、集〜〜合!!
みなさん、おはようございます。
今日は、当社創立30周年記念ゴルフ大会れす、、、
えっと〜〜
全員、馬券、買ってくれましたか??
1口、1000円で、全員、最低1口は買ってくだされよ!!
・・・・
・・・・
(ゴルフ終了後の懇親会の席上)
X幹事
えっと、発表しますれす
あたりは、5−8です。
あたった人は、Yさん、Zさん、Aさん、BさんとCさんの5人です。
配当金は、えっと、、一人あたり、8万円になりました。
は〜〜い 配当金です。どうぞ!!
Yさん、、
うれし〜〜い!!
・・・・・
警察だ!! 全員、うごくな!!
幹事はだれだ!!
X、、、あなたを賭博場開帳等図利の罪の現行犯で逮捕する!!
他の者も、全員、賭博の罪で逮捕する!!
動くな!!
カヂャ ガチャ ガチャ・・・・(手錠の音)
うえ〜〜〜ん?? うえ〜〜ん!!
マージャン愛好家やゴルフ愛好家の多くの人は、賭けている。お金を。
金銭を賭けると、その金額の大小如何にかかわらず、刑法の賭博の罪にあたると考えられています。
イ 賭博の罪
ロ 刑法185条
ハ 50万円以下の罰金刑
刑法185条=賭博
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。
ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。
また、このような行為を何回もしていると、常習賭博の罪にあたることとなります。
イ 常習賭博の罪
ロ 刑法186条1項
ハ 3年以下の懲役
刑法186条1項=常習賭博
常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
さらに、このような賭博行為の、いわゆる幹事役をした場合には、場合により賭博場開帳等図利の罪にあたることもあります。
イ 賭博場開帳等図利の罪
ロ 刑法186条2項
ハ 3ケ月以上5年以下の懲役
刑法186条2項=賭博場開帳等図利
賭博場を開帳し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
みんな、してるじゃん??
そう、、多くの人が賭けているのが実情でしょう。だからと言って、犯罪ではないとは言えないのです。ときどき、新聞で報道されているでしょう?? 暴力団構成員らの賭けゴルフ、賭けマージャンで逮捕!!って。
そう、、あなたは、賭博の常習犯罪者なのです!!
ゴルフは健康のために、、麻雀は、気分転換にしましょう!!
夢、夢、、、、賭け事でするなんてことは、、やめてよね!!
その3
転居と車検証の住所変更届け
事例
自宅を転居しても、自家用車の車検証の住所変更届けをせず、自家用車を運転している人が、結構いる。
道路運送車両法により処罰されます。
イ 車検証の変更届け不申請の罪
ロ 道路運送車両法109条・12条1項
ハ 30万円以下の罰金
道路運送車両法12条1項
自動車の所有者は、登録されている型式、車台番号、原動機の型式、所有者の氏名若しくは名称若しくは住所又は使用の本拠の位置に変更があつたときは、その事由があつた日から十五日以内に、運輸大臣の行う変更登録の申請をしなければならない。
道路運送車両法109条
次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
二 第十二条第一項、第十三条第一項又は第十五条第一項の規定による申請をせず、又は虚偽の申請をした者
転居をした場合には、住民票以外にも、変更届けを必要とするものが結構あるのです。