「中学生にもわかるかな,民法改正の概要」
 
            大阪弁護士会所属
           弁護士 五右衛門
 
                   20191025日 追記補筆    
逆目次
NO3・(2)事業用融資における第三者保証の制限・・・未完
NO1・睡眠時間、入院期間の見直し(・・・消滅時効期間についての見直し)
 
NO1・睡眠時間、入院期間の見直し(・・・消滅時効期間についての見直し)
 
・「権利の上に眠る者は、保護しない」なんて、法についてのことわざ(諺)がある。
・法律は保護しなくなる、睡眠時間、入院期間を、その人の職業で定めていたんですよ???
 
前民法は、
 
・ 合理的な理由もなく(??)、職業によって
ーあんたのー睡眠・入院期間は、、、、、1年
ーーあなたは、、、3年
ーーそして、お前さんは、、、、、5年
なんて、その人の職業別に、区々、バラバラに定めていたんです。
 
改正前170 条(3 年の短期消滅時効 1)
 次に掲げる債権は,3 年間行使しないときは,消滅する。ただし,第二号に掲げ
る債権の時効は,同号の工事が終了した時から起算する。
一 医師,助産師又は薬剤師の診療,助産又は調剤に関する債権
二 工事の設計,施工又は監理を業とする者の工事に関する債権
 
改正前第 171 条〔3 年の短期消滅時効 2〕
 弁護士又は弁護士法人は事件が終了した時から,公証人はその職務を執行した時から 3 年を経過したときは,その職務に関して受け取った書類について,その責任を免れる。
 
改正前第 172 条(2 年の短期消滅時効 1)
弁護士,弁護士法人又は公証人の職務に関する債権は,その原因となった事件が終了した時から 2 年間行使しないときは,消滅する。
A 前項の規定にかかわらず,同項の事件中の各事項が終了した時から 5 年を経過したときは,同項の期間内であっても,その事項に関する債権は,消滅する。
 
改正前第 173 条〔2 年の短期消滅時効 2〕
 次に掲げる債権は,2 年間行使しないときは,消滅する。
一 生産者,卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権
二 自己の技能を用い,注文を受けて,物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
三 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育,衣食又は寄宿の代価について有する債権
 
改正前第 174 条(1 年の短期消滅時効)
 次に掲げる債権は,1 年間行使しないときは,消滅する。
一 月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権
二 自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価
に係る債権
三 運送賃に係る債権
など
 
・しかし、大体、通常、人の睡眠時間や入院期間なんて、それほど異なるものではないのではないの、、
 また
 入院するにしても、病名により、異なることはあるにしても、人によって大きく異なることはないと考えられのではないの、、、??
 
そこで、改正民法は
 病名(権利の種別)によって、睡眠時間、入院期間(消滅時効の期間)を
定め直したんです。
 
 権利が
債務不履行による損害賠償請求の場合
 (通常、よくある病気ともいえない、風邪なんかよね)
  睡眠・入院してから・・・・・10年
   (権利を行使できるときから・・・10年)
 
  眼がさめてから・・・・・・・5年
   (権利を行使できることを知ったときから・・・5年)
 
生命、身体侵害による損害賠償請求の場合
 (病気、けがの場合よね)
    睡眠・入院してから・・・・・20年
   (権利を行使できるときから・・・20年)
 
  眼がさめてから・・・・・・・5年
   (権利を行使できることを知ったときから・・・5年)
 
(債権等の消滅時効)
改正第166条  債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一  債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二  権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
2  債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
3  ・・・
 
 (人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
改正167条  人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「10年間」とあるのは、「20年間」とする。
 
 従来、時効の中断、停止(改正による時効の完成猶予、時効の更新)が認められなかった除斥期間であるとの解釈が有力であった不法行為の20年について、「他人を殺害して20年以上自宅床下に埋めて隠匿していたような事案」(下記最高裁平成21年 4月28日判決)の発生により、「これを時効である」と明記した。
 
最高裁平成21年 4月28日第三小法廷判決抜粋 
 民法724条後段の規定は,不法行為による損害賠償請求権の除斥期間を定めたものであり,不法行為による損害賠償を求める訴えが除斥期間の経過後に提起された場合には,裁判所は,当事者からの主張がなくても,除斥期間の経過により上記請求権が消滅したものと判断すべきである(最高裁昭和59年(オ)第1477号平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2209頁参照)。
 ところで,民法160条は,相続財産に関しては相続人が確定した時等から6か月を経過するまでの間は時効は完成しない旨を規定しているが,その趣旨は,相続人が確定しないことにより権利者が時効中断の機会を逸し,時効完成の不利益を受けることを防ぐことにあると解され,相続人が確定する前に時効期間が経過した場合にも,相続人が確定した時から6か月を経過するまでの間は,時効は完成しない(最高裁昭和35年(オ)第348号同年9月2日第二小法廷判決・民集14巻11号2094頁参照)。そして,相続人が被相続人の死亡の事実を知らない場合は,同法915条1項所定のいわゆる熟慮期間が経過しないから,相続人は確定しない。
 これに対し,民法724条後段の規定を字義どおりに解すれば,不法行為により被害者が死亡したが,その相続人が被害者の死亡の事実を知らずに不法行為から20年が経過した場合は,相続人が不法行為に基づく損害賠償請求権を行使する機会がないまま,同請求権は除斥期間により消滅することとなる。
 しかしながら,被害者を殺害した加害者が,被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま除斥期間が経過した場合にも,相続人は一切の権利行使をすることが許されず,相続人が確定しないことの原因を作った加害者は損害賠償義務を免れるということは,著しく正義・公平の理念に反する。
 このような場合に相続人を保護する必要があることは,前記の時効の場合と同様であり,その限度で民法724条後段の効果を制限することは,条理にもかなうというべきである(最高裁平成5年(オ)第708号同10年6月12日第二小法廷判決・民集52巻4号1087頁参照)。
 そうすると,被害者を殺害した加害者が,被害者の相続人において被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,そのために相続人はその事実を知ることができず,相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が経過した場合において,その後相続人が確定した時から6か月内に相続人が上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは,民法160条の法意に照らし,同法724条後段の効果は生じないものと解するのが相当である。
 
 
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
改正724条  不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一  被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
二  不法行為の時から20年間行使しないとき。
 
 従来、5年未満だった短期消滅時効について、一律に5年としたこととの比較、均衡もあり、人の生命、身体侵害についての不法行為の時効期間を3年から5年とした。
 
(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
改正724条の2  人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。
 
 少し、難儀なお話・・・新しい趣味???
 
 まあ、、、睡眠時間や入院期間を心配する不便さはなくなるようだけど、、、、
しかし
 飲み屋のつけを支払った場合でも、、、5年間も、領収書を保管しなければならなくなるのぉ〜〜??
 「領収書の保管を趣味」にでもしなくてはならないよね???
 
 弁済は受領書と引き換えよね!!
  受領書を交付しない悪質な人らもいるよね。
 前民法は、受取書の交付を求めることができるに過ぎなかったけれど、改正民法は、受取書の交付との引き換え弁済を認めることにしているね!
 当然といえば、当然の改正よね!!
(受取証書の交付請求)
改正第486条  弁済をする者は、弁済と引換えに弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。
 
賃金関連請求権の時効期間について
 なお,令和元年10月18日開催の第155回労働政策審議会労働条件分科会において,賃金請求権の時効期間をどうするのか,検討が継続されている。
@ 検討の前提
【検討会報告で提示された論点】
民法とその特別法である労働基準法の関係について、下記を踏まえてどのように考えるか。
・ 労基法の消滅時効規定が労使関係における早期の法的安定性の役割を果たしていることや、大量かつ長期に発生するといった賃金請求権の特殊性に鑑みて合理性があれば、民法よりも短い消滅時効期間を定める(※)ことも可能との考え方がある一方、(※)現行でも、退職手当や災害補償の請求権等については、労働基準法において民法よりも短い消滅時効期間を定めている。
・ 労働者保護を旨とする労働基準法で、民法よりも短い消滅時効期間を定めるのは問題であるとの考え方もある。
A 賃金等請求権の消滅時効の起算点について
【検討会報告で提示された論点】
・ 労働基準法第 15 条等において、使用者による労働者への賃金支払日の明示が義務付けられていることを踏まえ、現行の客観的起算点であることを明確化することについてどのように考えるか。
・ 主観的起算点については、それを設定する必要性(名ばかり管理職や固定残業制の問題など)と、仮に設定した場合にどの時点が主観的起算点に該当するかといった新たな労使間の紛争が生じるリスクをどのように考えるか。
B 賃金請求権の消滅時効期間について
【検討会報告で提示された論点】
・ 現行の消滅時効期間である2年間について、将来にわたって維持する合理性が乏しいとした場合、具体的な消滅時効期間はどの程度とすることが考えるか。
・ 退職手当の請求権の消滅時効期間については、昭和 62 年の労働基準法改正の経緯も踏まえつつ、見直しの必要性についてどのように考えるか。
C 賃金請求権以外の消滅時効について
【検討会報告で提示された論点】
・ 年次有給休暇の請求権について、仮に消滅時効期間を延ばす場合、制度趣旨や取得率の向上という政策の方向性に逆行するおそれがあるが、どのように考えるか。
・ 災害補償請求権について、現行でも民法の消滅時効期間(10 年)より短い2年間の消滅時効期間としているが、改正民法では契約に基づく債権の消滅時効期間は原則5年とされたこととの関係をどのように考えるか。その際、災害補償請求権(使用者の無過失責任)と調整規定が設けられている民法の損倍賠償請求権(使用者の故意過失が要件。不法行為によるものであれば消滅時効期間は3年)との関係もどのように考えるか。
 
3年に延長する検討
 厚生労働省は働き手が企業に未払い賃金を請求できる期間について、現行の2年を3年に延長する検討に入った。2020年4月の改正民法施行で賃金に関する債権の消滅時効が原則5年となるのに対応する。
 労働者の権利を守るため将来は5年への延長を視野に入れつつ、企業経営の負担が過大にならないよう、まずは3年への延長で制度改正の実現をめざす。
 
 
 
NO3・(2)事業用貸金等融資における第三者保証の制限
・ 主たる債務者の、事業用資金に対する、貸金等融資についての、第三者による保証
   このような、場合によっては、保証人の責任金額が莫大となって、保証人の家族、生活、人生を破壊してしまうような保証についても、改正前民法は、さほど制限などしていなかったんです。
 
(保証人の責任等)
第446条 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
 
 強いて言えば、保証は口頭契約ではダメですよ。「書面でしなければダメですよ」といった程度だったんです。
 このため、実際、多くの悲惨な結果が生じていたんです。
 会社の従業員が社長に依頼され、生活がかかっていることから断れなくて保証人となったところ、一生かかっても返済できない債務を背負ってしまうというようなことが、、、。
 
 改正された新設条文は下記のとおりなんですが、読むのも嫌になるような文言なので、一口説明しますね。
 
 「事業用融資の保証人になるため」には、「書面による保証契約を締結するだけ」ではダメで、「保証契約を締結する一ヶ月前以内に」、「公正証書で保証人になります」という「公証人による保証意思の確認」が必要となったんです。
 この公証人による保証意思の確認手続きがなければ、保証契約は無効となるんです。
 
(公正証書の作成と保証の効力)
改正第465条の6  事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない
2  前項の公正証書を作成するには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一  保証人になろうとする者が、次のイ又はロに掲げる契約の区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事項を公証人に口授すること。
イ  保証契約(ロに掲げるものを除く。) 主たる債務の債権者及び債務者、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの定めの有無及びその内容並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、その債務の全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。
ロ  根保証契約主たる債務の債権者及び債務者、主たる債務の範囲、根保証契約における極度額、元本確定期日の定めの有無及びその内容並びに主たる債務者がその債務を履行しないときには、極度額の限度において元本確定期日又は第四百六十五条の四第一項各号若しくは第二項各号に掲げる事由その他の元本を確定すべき事由が生ずる時までに生ずべき主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものの全額について履行する意思(保証人になろうとする者が主たる債務者と連帯して債務を負担しようとするものである場合には、債権者が主たる債務者に対して催告をしたかどうか、主たる債務者がその債務を履行することができるかどうか、又は他に保証人があるかどうかにかかわらず、その全額について履行する意思)を有していること。
二  公証人が、保証人になろうとする者の口述を筆記し、これを保証人になろうとする者に読み聞かせ、又は閲覧させること。
三  保証人になろうとする者が、筆記の正確なことを承認した後、署名し、印を押すこと。ただし、保証人になろうとする者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
四  公証人が、その証書は前三号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
3  前二項の規定は、保証人になろうとする者が法人である場合には、適用しない。
 
 大体、保証なんて、保証人になる人は本心は嫌なんですが、いろんなしがらみから、断り切れずに嫌々保証契約に応じる場合が殆どなんですよね。
 主債務者が弁済しない場合には、自分が主債務者に変わって弁済するというような覚悟を持っている人って、殆どいないんです。
 (保証債務の金額が、その人の資産額からすれば、微々たる金額のような場合は別ですよ)。
 上記のような、改正第465条の6の2項に記載されているような「弁済の覚悟の有無」を確認されたら、皆、「覚悟はない」なんていいますよね。
 結局、改正法に従った、保証意思の確認ができるという場合は希ということになるんじゃないでしょうか、、、
 
 なお、上記の規制は、事業用資金に対する貸金等債務が主たる債務に含まれている、「根保証契約」にも適用されます。当然ですよね。