脳トレ用イラスト類の著作権について
大阪弁護士会所属
弁護士 五 右 衛 門
1 脳トレに関連するイラスト類は、インターネット上ないし書店における脳トレに関する書籍類に、多数掲載され、また、その内容が類似のものは数え切れないほど多数氾濫している。
2 脳トレに関連するイラスト類は、その「制作者の個性、創意、工夫等が保護される」という著作権法上の「著作物」には該当せず、そのイラスト類には著作権は認められないものと考えている。
@ 裁判例上、イラストについては、簡単に著作物性が認められていることは公知の事実ではあるが、それは芸術性ないし美術性が認められる範疇に属するイラスト類に関するものである。
A 脳トレ用のイラストは、その芸術性ないし美術性に価値が求められるものではなく、認知能力等の減退が認められるような高齢者の思考能力ないし計算能力等の確認ないし回復等に寄与するものとして使用されているものであり、その芸術性ないし美術性は無関係であって、その「問い」についての「理解」や「回答探索」の可否が上記のような確認ないし回復の諸能力に関連するとして制作されているものであり、芸術性ないし美術性の表現力のない人により制作されたものの方が、脳トレに適したものとなる可能性もあるというような類のものである。
B 脳トレ類のイラストのようなものは、脳トレというような概念が社会に生まれる以前から、知育教材として利用されてきているものであり、今日、インターネット上ないし書店における脳トレに関する書籍類には、類似のものは数え切れないほど氾濫している。
D 以上のとおりの状況であり、多くの脳トレのイラスト類は、以前から多用、氾濫している知育教材、脳トレ用のイラスト類の「ものまね」の類であり、著作権法上の著作物性は認められない。
3 本論考が、著作権法の立法趣旨を考えず、なんでも、かんでも著作物という、悪しき発想を否定する契機となることを期待している。